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異世界で記憶のない毒舌幼女とポンコツ魔術師。  作者: くるすみ。
一つの憧れ。
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異世界生活新しい「世界の理」


強い人、弱い人、強い者、弱い者。


弱ければ負け、強ければ何処へでも行ける。強ければ強いほど価値がある、知恵などいらない。


戦えなくては役立たず。



それが当たり前。他の世界を疑うことも知らず、教えてもらう事もなく、その世界で生きていく。


それが幸せと言えるのか。...分からない。



「なぁ これからどうやってやっていくんだよ」

「村長もいないこの村で誰が民をまとめるんだ」


「いきなりすぎるわ 余りにも」


「ねぇ 村長様はどこにいったの?ぼくらを置いていっちゃったの?」

「違うわよ 村長様はね...」


彼方此方から、嘆く声が聞こえる。悲しみに暮れて泣く者もいれば、これからの事を話し合う者もいる。


「っ...くそ、どうしてこんな目に...村長様がいったい何をしたって言うんだ!どうして!なぜ!人間の理不尽で殺されなくてはいけないのだ!」


「そうだ!そうだ!」


村で、村長の次に偉い貴族の男が声をあげた。その男は強いが故に名があった、名をイーサンと言う。



「村長を!偉大なる村長様を取り戻すために!我々は、狼煙をあげよう!人間を生贄とするのだ!!!」



「そうだ!そうだ!」


村の民達は、次々にイーサンについていった。そこから話が私の所まで来た。私には一人息子がおり、私は村では4番目に強かった。



「おい ローガンちょっと来い」


ある日、イーサンが私に声をかけて来た。私にも一応名前があったが呼ぶ者は少なかった。そして村の民達が集まる場まで連れて来られ、知らぬうちに私の息子も、そこにいた。


「イーサン...私の息子まで連れてきて何のつもりだ それにこの民達は...」


「お前とお前の息子が人間を連れて来い 殺さずに生贄にできる立派な人間をだ ほら民達には全て話した 武器も揃えた 村の男共も好きなだけ連れていけ」


イーサンは大勢の村の民の前でそう言い放ち、私と息子の肩を掴んだ。


「イ イーサン!いきなり何を言いだすんだ...私の息子は...」


私は確かに強い。そして私の息子も強い...訳ではなかった、村の民からは私の息子は軽蔑された。


(今思えば 私も弱かったのだ)


今ここで自分の心臓に槍を突き立て、死ぬ寸前じゃないか。



「お前の息子は弱い だから使い切るいい機会だろう?お前の妻も死んだのだから 弱い者は断ち切らねばいけないだろう?生贄の人間も手に入り 弱い奴が強い者に利用されて一人死ぬ 一石二鳥だ」


イーサンは目をキョロキョロと動かしニヤニヤと笑いながら、私の耳の側で民や息子に聞こえないよう静かに囁いた。私も正直、


「......」


私は何も言えなかった。逆らえば殺されるのだろう、息子も私も。私も村長様のことはとても敬愛していた、今もそれは変わらない。


故に、イーサンが生贄と引き換えに村長様を取り戻そうと考えた事には賛成していた、人間にはこれまでにないほど怒りがこみ上げ、私は村長様を殺した人間が憎かった。



掠れて無くなる意識の中で、自分の頬に暖かい涙が伝わっていくのを感じながら、ゆっくりと目を閉じていく。



(殺せなかった...私は自分の、息子を)


この様な気持ちは初めてだった。子供だろうが赤子だろうが弱い者は生きていけない、それを可哀想など思った事もなかった。摂理、理、当たり前のこと。



なのに、なぜ私は自分の息子をこんなにも可哀想だと思ってしまうのか。皆に息子が認めてもらえない事が当たり前だと、分かっているのにどうして。



暴走した自分を使って、一思いに息子も誰も彼も殺してしまえばそれで良かったというのに。



どうして、息子(弱い者)を、殺せないのか。

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