異世界生活新しい「間違い」
「あぁ、そうだわ貴方!家主さんが、家主さんがね...」
おばあさんがハッとして、幼女の目を真っ直ぐに見つめた。
「や、家主さんがどうかしたんですか?!」
「それが、一人だけキュプロクスが家に残っていたみたいで、私を庇って家主さんが怪我をしてしまって、私を逃してくださったけれど...」
「おいばあちゃん。まさか、まだ家の中にアイツとキュプロクスの居るってのか?」
「っ、そうなの...」
「ーーーごめんなさい、リュカ君あの私...」
「分かってる、早く行ってこい。俺も後から行く」
幼女は強く頷き、一目散に裏口へと駆け出した。
「っ、はぁはぁ...っ」
裏口に着いた途端、勢いよく扉を開け靴を脱ぎ捨て廊下を走った。
「家主さ...っ!」
「ーーー良かった。君は無事だったんだね」
「っ...!」
居間の床でソファにもたれかかる家主に幼女は涙目になりながら駆け寄った。
「血が出てるじゃないですか...!」
ポタポタと微量ながら家主の右腕の一箇所からは血が流れていた。
「あ、そうだ、キュプロクスは?!」
「たった今君と入れ替わる形で外へ行ったよ、もうここにはいないはず」
家主は慌てて涙目の幼女を落ち着かせるように、頭を優しく撫でた。
「ーーーなら大丈夫ですね。きっとクロードさんがもう見つけて...って、騙されませんよ!」
頭を撫でる家主の手をパシッ、と振り払った。
「もう、どうしておばあさんを庇ったんですか?!対抗手段もないし魔術も使えないし闘えもしないのに...助けを呼んでくれれば私は行きました!」
幼女の怒号に家主は若干顔を背けた。
「...ご、ごめん。もしかしたら、ちょっとぐらいは魔術使えるかなって思ったんだよ、でも無理だったけど。ははっ」
「それに、ちょっとヒリヒリするけど怪我も大丈夫だよ」
家主は何事も無かったように、目を細め微笑む。
「っ...もういいです。まずは床が汚れるから止血しましょう、えっと薬箱は」
幼女は呆れて溜息をつきつつも、立ち上がる。
「そんな酷い怪我じゃないし、今すぐ手当てしなくても大丈夫だよ?」
「ダメです」
そんなやり取りを交わし家主から目を離し背を向けた瞬間、悪寒が幼女を襲った。
「ーーーーーー家主さん?」
恐る恐る後ろを振り向く。
「...ごめん、やっぱり大丈夫じゃ、ないかも...しれない」
その瞬間、家主は弱々しくその場にうずくまった。
「っ、どうしたんですか?!やっぱり痛むんですか?!何処か別の所に怪我を?...」
「違う、よ。違うんだけど...」
「凄い汗じゃないですか...っ、家主さんしっかりしてください!」
「っ、はぁ...う...っ」
家主は苦しそうに息を切らし、目は次第に移ろいでいく。まるで死にかけと言っても過言ではないほど、家主は唐突に痛みに苦しんでいた。
幼女は慌てて呪文を唱え上級の回復魔術をかけた、幼女の指先から紡がれる魔術は確かに家主の体に優しく溶け込んでいく。
「っ、どうしてっ、どうして...」
慌てふためきながらも延々と何度も何度も繰り返し回復魔術をかけ続ける。
弱っていく家主を幼女には止められなかった、いきなりすぎて頭も上手く回らず、幼女は悔しそうに拳を握りしめる。
(回復魔術は効いてる、腕の傷は確かに塞がってる。なのになんで...なんで痛みは...)





