異世界生活新しい「父さん」
最新が遅れてすみません、遅れを取り戻せるようにまたどんどん最新していきますので、宜しくお願い致します!
ブックマークありがとうございます。
リュカのそこで言葉は遮られた、正確には口が止まった。
バキッと音をたてて、氷のかけらはまるで星の如く煌めき夜の宙に舞った。嵐を告げるような猛烈な突風と、大きな怒号はきっと近くの住宅にまで響き渡った事だろう。
「ーーーあぁぁぁ、あぁああああ!!!」
キュプロクスは大槍をぶんぶんと両手で振り回し始め裏庭の畑や花壇は荒れ、辺りは砂埃が舞う。まるで狂ったように、プライドもないただの獣のように。ただがむしゃらに大柄なキュプロクスは暴れ出した。
「下がれ!」
自分の魔術を物理で破られる事は想定外だったクロードは、慌ててリュカと幼女を自分の後ろに隠れさせる。
青ざめるリュカの隣で幼女はぎゅっと拳を握りしめた。
「アイスフッド!」
「あぁぁぁ!!!」
クロードの氷の魔術は槍の一振りで早々に砕け散った。槍の勢いは一向に止まらない。
「アイツ、自分の仲間をーーー」
リュカの顔は更に青ざめていく。
大柄のキュプロクスは、仲間であるはずの周りに倒れているキュプロクスにまで心臓に槍を突き立てていく、一人一人グサリと確実心臓を刺していく。
「...狂ってる、もう物事の判断がつかなくなってるんだろう」
クロードはその光景を見ながら、冷静にそう言った。
「そんなことって、あるんですか?」
「あぁ、そもそも知性を持つ怪物はそう多くない。知性を持たない怪物は人や動物、自然環境を無闇に荒らすただの魔物だ」
「でも、さっきまで普通に喋ってたのに...」
「あれはまだ理性が効いていたからだろう、もうあのキュプロクスには先ほどまでの理性も知性もない」
「そうだな。もしかしたら、村長を、村にとって大事な人をいきなり失って、取り戻す為に子供に命令を下して、弱肉強食の世界と言えど元々正気じゃ無かったか、或いはあのキュプロクスより更に上のキュプロクスに命令された可能性もある」
気づけば、大柄のキュプロクスが発していた人の言葉は失われ、まるで動物のように雄叫びをあげて叫び続けていた。
「命令の命令...ですか?」
幼女は唖然とぽつりと呟いた。
「あぁ。とにかくもうあの状態になったら元には戻れない、大人しく捕まってもらえるかも分からないからな、やはりここで始末した方が早い。君には悪いが、後の始末は勿論俺が全て片付ける。安心してくれ」
そしてクロードは手を掲げた、すると光の小さな粒が何処からともなく集まってくる。
「ーーーあっ、ま、待ってください」
「おい、お前いい加減にしろよ!」
それを止めようとクロードの服を引っ張る幼女を、リュカは苛立った様子で引き止める。
「...どうかしたか?言っておくがもう二度と元には戻らない。もうどんな言葉もあのキュプロクスには届かないんだ」
クロードは光を集めながら、幼女を横目見た。
「そっ、そうじゃなくて。ちょっと待っててください」
「おい、お前まさか...!」
リュカの怒鳴り声を無視した幼女は、仲間をひたすらに夢中で殺しているキュプロクスの方へ近寄っていく。
「...あの、聞こえなくてもいいいいので聞いてください」
そう言ってるうちにも、一人一人幼女の目の前でキュプロクス達は殺されていく。大柄のキュプロクスは殺す事に夢中なのか、こちらを一度も見ない。
「ーーーァァ」
「大切な人失ってビックリしましたよね、悲しかった、ですよね。でも子供に命令して殺させたりとかは良くないと思います、勿論誰かが誰かを殺す事自体良くないです」
「ーーーァ」
「でも、どうにかして取り戻そうと必死だったんですよね。だって罪も無かった村長さんがいきなり殺されて、しかも人間に。貴方は、弱肉強食の世界だからあの子供のキュプロクスを使ってやった、って言ってましたよね、あれは本心ですか?」
「ァーーア」
キュプロクスの返り血が幼女の顔や服に飛ぶ。
「その、それと貴方達がやろうとしてる儀式は私本で読んだ事あるんです、生贄の儀式。ただ生贄を用意するだけの簡単な儀式ですよね、でもそれは本当に伝説というか、御伽噺というか。成功例はないです、だからーーー」
「ソンナコト ハ ナイ」
「ーーー!?」
唐突に前から言葉を発して現れたのはあの時の血まみれの子供のキュプロクスだった。そしてそのままヨロヨロとよろめきながらも、大柄なキュプロクスの方へ近づいていく。
「嘘。まだ、生きて...」
ただ槍を刺す大柄のキュプロクスに寄り添うように、子供のキュプロクスはしがみつきながらその場に立っていた。
「チガウ ムダ チガウ ボク ヤッタコト チガウ」
「...っ、違うんです!あれは本当に御伽噺のようなもので生贄を祀ったとしても、きっと蘇りません...」
「チガウ ヨミガエル ダッテ ソウイッテ トウサン」
「...父さん?」
幼女はぽつりと言葉を漏らし、大柄なキュプロクスはその言葉に反応したかと思うと、槍を持ち替え幼女へ向けた。





