異世界生活基本の「きらい」
「じゃあ、いただこうか」
そう言うと幼女と家主は食卓につく。所作の綺麗な家主は黙っていれば普通の美形な男性だろうにつくづく損をしている。
「いただきまーす」
「いただきます」
夜の冷たい風が少しずつ頬を撫でて部屋中に流れていく、カチャカチャと鉄製のナイフとフォークが擦れる。
窓から入り込むそよ風で、テーブルに一輪挿しにされた白いマーガレットが揺れる。
「いい夜だね」
「ですね」
6月、まだ過ごしやすい夏の夜。この森は基本人が立入れるような森ではなく広大な面積のため、今の所来訪者はいない。
そもそもこんな森に家がある事自体知る人は少ないだろう。
「魚食べないのかい?」
「......」
もぐもぐとサラダを口いっぱいに詰め込む幼女。
「はい、あーん」
「やめてください」
家主はなにを考えたのか魚のソテーを一口分、幼女の口に近づける、幼女はのけ反りかえった。
「ほら、お食べ?マイヴィーナス」
「い、いやです!むぐっ...」
家主はにこにこ笑いながら、無理矢理にでも食べさせようと魚を幼女の小さな口に押し込んでいく。
「美味しいかい?」
「うぇ......」
幼女はしぶしぶ魚を飲み込む、塩胡椒のシンプルな味つけとパセリソースが美味しいはずの料理だが、幼女の口にはあまり合わないよう。
「美味しくないかい?」
「...あん、まり」
「結構頑張ったんだけどなぁ」
もぐもぐと微妙な顔で魚を咀嚼する幼女。
「...にがい」
少し苦味のあるパセリソースが口の中を支配する、口直しに甘いトマトを口に運んだ。





