異世界生活新しい「世界の未来」
「さぁ貴様は生贄に選ばれた身 感謝してその身を捧げよ」
突然、喉にひんやりと冷たい鉄の感触がした。
「ふん 先程から黙ってどうかしたのか あぁソイツの墓の心配か」
「......墓?」
「安心しろ ソイツは役立たずではあったが 今から貴様を生贄とする事が出来る まぁ結果良ければ全て良しとな ソイツには似合う墓を作ってやろう ハハハハッ!」
キュプロクスは大きな声で嘲笑い、落ち着くと私の首からソレを下げた。
「...私がこの手で刺すとでも思ったか?おい 貴様 どうせまだ生きてるんだろう」
「ーーーえ」
大柄のキュプロクスは倒れたキュプロクスに目を向けた。すると止まっていたはずの指が再びピクピクと動き、閉じていた目が少しほんの少しだけ開いた。
「ふん よく生きたな まぁわざと急所を外したのは私だが」
「ア アァ ア...ソン チョ ウ」
「まだ手は動くのだろう 私の槍を貸してやる 今ここでこの生贄を殺せ 自分の立場を全うしたら楽になる権利をやる それまで死ぬな」
その言葉に私はあんぐりと口を開けたまま、言葉をひねり出した。
「......どう、してそんなに」
「どうして?決まってるだろう 村長様はキュプロクス族の村の長 あのお方の変わりになる者などいるはずがない 一刻も早く蘇らせねばならん」
「じゃあ、その為の生贄が必要なら貴方が自分の手で人を狩ればいいじゃないですか!そんなに自分の手を汚したくないんですか?!」
「何を申すかと思えば。私は村の中で上から数えて4番目の権力者だ。強き者である為に 何一つとして手放す事など出来ぬ 名誉も富も財力も人望もだ それに儀式の為であろうと人を殺すとなれば人側に罪に問われる そうなれば私は全てを失いキュプロクス族の恥になるだろう」
「だから、こんな子供にやらせたんですか...?」
「そう怒るな 何も私だけの考えではない 弱肉強食の世界で強くありたいと願う者にとっては 当たり前の事よ 弱者を利用して何が悪い」
「な、何言って...」
「だから当たり前の事 子供であろうと大人であろうと弱肉強食 弱ければ利用されて死ぬ 今回は村長様の事も大切だが 人望も名誉も捨てたくはない その為に弱者を使ってやった 有り難く思って欲しいほどだ 強き者の為に死ねるのだからな」
手を当てなくても心臓の音が分かるほど、私はただ唖然とした。
(強い人が上に立つ、それはきっと間違ってはいない。弱い人を利用する強い人だっているし強い者と弱い者がいればそういう世界が作られちゃう。でも...)
「...私はそれが、本来の世界の在り方だとは思えません」
震える声を自覚しながら、そう言った。
「ーーーそうか それも人間側だけの話だがな さぁもう時間切れだ」
大柄なキュプロクスはパチンと指を鳴らした。
「さぁ早く生贄を刺せ どうせ彼方ももう持たないだろう 貴様と一緒に彼方も殺しておこうか...」
「ーーー!」
ハッとして後ろを振り向いた。結界はボロボロになり次々と武器を放たれながら、キュプロクス達を誘導しつつ攻撃に耐えるリュカ君が見える。
「..っ、ごめんなさいリュカ君。あともうちょっとだけ、もうちょっとだけ...」
「はっ、平気なフリをしてるようだが その腹の傷が痛んで魔力が上手く体を回らないのだろう?魔術がなかなか使えんのではないか?」
「ーーー」
「無理をするな 今楽にしてやろう さぁ役立たず早くやれ」
「ア イヤ ダ サシタク ナイ イヤダ アァァ」
掠れた声で子供のキュプロクスはそう訴えるが、大柄のキュプロクスは自分の槍を無理に握らせた。
「煩わしい情など持つな役立たずめ、さっさと殺して...む?」
すると、大柄のキュプロクスの目がギロリと私の後ろを睨んだ。
「っ、リュカ君大丈夫ですか!?」
服が所々破け肌にかすり傷がつき血を流して、ふらふらと歩いてくるリュカ君はあまりに痛々しい姿だった。





