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異世界で記憶のない毒舌幼女とポンコツ魔術師。  作者: くるすみ。
終わりの僕と始まりの君。
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異世界生活新しい「戦争」

リュカという名前は「光をもたらす人」という意味です。光は強すぎると眩しいですよね、目がくらみます。でも真っ暗よりはましなのかも、まぁどちらも大切です。


ブックマークありがとうございます。


私は家主さんとリュカ君が帰ってくるなり、慌てて一階へ降りていく。


「っ、家主さんっ!怪我は...ひゃっ!」

おばあさんに事情を話していた家主さんは私を見るなり、駆け寄って人目も憚らず苦しいほどぎゅうっと抱きしめてきた。


「良かった、目が覚めて」

「...家主さんこそ怪我ないみたいですね、ふふっ」


「おい、そこイチャイチャすんな」

家主さんにされるがままに抱きしめられていると、横からリュカ君が割って入ってきた。


「それはそれとして家主さんもリュカも無事で良かったわ。大きい声がしたから何かと思ったけど、まさか槍が飛んでくるなんて...」


「あの、その槍ってどんなのでしたか?」


私が尋ねるとリュカ君は手で真似をしながら、説明してくれた。


「なんか普通に鉄と木で出来たやつ、また血が付いてたよな。まぁ俺は手に取った訳じゃねぇからよくわかんねぇけど」


「たぶんさっきまで使われてたんだと思うよ、それがどうかしたかい?」



「...その槍、私が刺された槍かもしれません」

刺されたお腹に手を当てると触るだけであの時の事が蘇ってくる。痛さも辛さも絶望も、悲しみを一つ残す事なく。あの言葉が繰り返される。



「槍?君、槍に刺されたのかい?」

混乱してる家主さんの隣で、おばあさんの顔が悲しげに曇る。


「はい。キュプロクスに刺されたんです、まだたぶん子供の。私と変わらない身長でした、それで私を指してる間ずっとシネって言ってて」


「それなのに、一度刺したら更に深く刺す事も抜く事もなくて、本当に殺そうとしてるのか、ちょっと不思議に感じました」


「...そんな事があったのか、ごめん。痛い思いさせて辛かったね」

家主さんに再びぎゅっと抱きしめられる。


「い、いえ、結果的には死ぬ前に抜いてもらえましたから大丈夫です!」

「それは、大丈夫じゃないと思うんだけど...」

笑う私のお腹の方をじっと見つめて、何とも言えない悔しそうな憂な顔色を浮かべた。


「ていうか、キュプロクスってあのデカイ一つ目の怪物だよな。確か武器作りが得意とか」


「よく知ってるわね、リュカ」

「前に本で読んだんだよ、母さんと父さんが遺してくれた本で。ていうか寒い、ばあちゃんちょっと紅茶いれてくれよ」

おばあさんは相槌を打ち、家主さんに会釈するとキッチンへ向かった。


「...キュプロクスは有名だからね、きっと知らない人は少ないだろう。でも乱暴で人を殺すようなキュプロクスはもうほとんどいないはずだ。この数年で魔物と人間の世界は変わったからね、良い方向へ進んでる」


「でも、やっぱりあの戦争が関係してんだろ。まだ根強く恨みを持ってるやつだっている。人間もあっちも」


リュカ君は素早く反論する。


「確かにそうだね、でもこの子だけを狙った理由がわからない。ここから少し歩いて大きな街に出れば人間なんて幾らでもいる、そうでなくても家なら沢山並んでる。魔術師だって少なくはないだろうし」



(確かに、私がリュカ君を送る為に魔術を使った場所も、私が刺された場所とさほど距離は変わらなかった、でもあの時は襲われなかった。魔術師が狙いなら、私とリュカ君が二人いる時が絶好のチャンスだったはず...)



ガタッ!


「チッ、またかよ」


「きっとすぐ聞こえなくなるよ、大丈夫」

家主は微笑んで安心させるように私とリュカ君の頭を撫でた。


ガタッ!ガタッ!ガタッ!


だけれど、数回で収まるかと思われた音は容赦なく鳴り続け、回数はどんどん増える。次第におばあさんもキッチンから出てきて、リュカ君を抱きしめ震え始めた。


ガタッ!ガタッ、ガタッ!


「家主さん、この音どんどん近づいてきてませんか?」

嫌な予感がする。



「あぁどうしてこんないきなり、どうなってしまうのかしら...リュカごめんなさいね、おばあちゃん何も出来ないわ...まるであの時と同じ...」


「っ、大丈夫だってばあちゃん!こんな音すぐに...それにあの時のことはもう...」

おばあさんはぽろぽろと涙を零し、リュカ君にごめんなさいごめんなさいと謝り続ける。リュカ君は戸惑いつつも、おばあさんをぎゅっと抱きしめていた。



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