異世界生活始まりの「試練」
「ごちそうさまでした」
パチンと手と手を合わせる。
「お粗末様でした、ふふっ。気に入ってもらえて良かったわ」
おばあさんも満足そうに口を拭った、すると階段から大きな足音がしてバタバタと慌ててリュカ君が降りてきた。リュカくんはさっきとは違う格好で、白いローブを羽織ってリュックを背負っていた。
「あら、リュカどうしたの?」
「どうしたのじゃねぇよっ、遅刻する...っ」
リュカ君は慌てて玄関へ向かっていった、おばあさんは時計に目を向けて目を見開きハッとした。
「あら、嘘もう10時?!急ぎなさい、リュカ!」
「っ、分かってるよ!」
「えっとあの、リュカ君学校ですか?」
「えぇそうなの、今日の授業は昼前かららしいのだけど、ここからじゃ魔術学園は遠いからいつも片道二時間かけて行ってるのよ」
おばあさんの後を追って、私も玄関まで見送りに行く。
「魔術学園...片道二時間...?」
私は、慌てて靴紐を結んでるリュカ君の後ろ姿を見て閃いた。
「えっと、学園って魔術じゃ行けないんですか?」
瞬間移動魔術で行ってはダメなのだろうかと、リュカ君を早く早くと急かすおばあさんに問いかけた。
「テメェ、馬鹿にしてんのか」
リュカ君がふと靴紐を結ぶのをやめて、こちらを振り向いた。
「えっと、馬鹿にしたつもりはなくて魔術じゃ行けないのかな...って。だって魔術使った方が早いから...」
「魔術学園の4年生が使えるわけねぇだろ、そんな高等魔術」
「えっと、でもっ」
「ていうか、お前もどうせ使えねぇクセに偉そうに言うな」
リュカ君はぶっきらぼうに言い放ち、ドアノブに手をかけた。
「あら...でも家主さんって方は失敗していたけど魔術を使えていたから、この子も魔術を終わってるんじゃないかしら」
おばあさんがふわりと微笑んで私を見た、私はこくっと頷く、リュカ君はゆっくりこちらを振り向いた。
「あっそ。でも魔術師でもどうせ使えねぇもんは使えねぇだろうが」
「あらリュカ、決めつけるのは良くないわ」
おばあさんがすかさず口を挟み、リュカ君はからかい笑いながら私に問いかけた。
「...ははっ出来んのかよお前、瞬間移動魔術」
「えっとーーー出来ます」
「...は?」
リュカ君はしばらく呆然として言葉を失った。
「ーーー待て、お前何歳だ」
「私はえっと、10歳...」
リュカ君の怒ったような雰囲気に圧されてしまい小さな声でそう答えた。
「あら、リュカより一つ年下じゃない」
「10歳?俺より一つ下?」
リュカ君は私の目をじぃっと見つめる、何とも言えない表情で。
「ーーーなら、送って行け」
「え?」
「出来るんなら、俺を魔術学園まで送って見せろよ。ほらこれ貸してやるから」
ぽいっと投げ捨てられたそれは、本のしおりらしき物だった、そして手に取って魔力がここに溜まっているのが分かった。
「えっと、あのこれ...」
「ほらさっさとやれよ、出来るなら」
「わっ、ちょっ!?」
リュカ君は玄関の扉を開き、外へ私の腕を引っ張っていく。
「リュカやめなさいっ!」
おばあさんは杖をつき慌ててリュカ君の腕を掴む。
「うるせぇ、やれるもんならやってみろよ!」
リュカ君はおばあさんに向かって、空まで届くような声で怒鳴り声で怒鳴った。
(っ、このままじゃダメだ。どうにかしないと...)
「あ、あの私大丈夫です。お世話になったのでこれぐらいお返しします」
「...ありがとう。でも、リュカのワガママに付き合わせる訳にはいかないわ」
「...本当に大丈夫です!おばあさんは中へ入っててください。外はちょっと冷えますから」
「ほら本人がこう言ってんだから、いいだろ」
リュカ君が鼻を鳴らしてそう言った、おばあさんは躊躇いながらも深く溜息をつく。
「っ、はぁ。リュカあまり無理を言ってはいけませんよ」
「チッ、分かってるよ。ほら来い」
ぐいっと力強く腕を引っ張られて肌寒い外へ連れ出される。玄関でおばあさんが悲しそうにこちらを見たのを最後に、玄関の扉は閉まった。





