異世界生活新しい「リュカくん」
暗闇の奥から声が聞こえる、誰かが私を呼んでる。家主さんの声じゃないけど、誰かがぶっきらぼうに私を呼んでる。
「ーーー!」
何かの衝動で目を覚ました。
「...ん?あ、起きた」
声がして隣を向くと私と同じぐらいの男の子がいた。床に座って何か難しそうな本を読んでる、ソファに寝転がる私はゆっくり体を起こした。
ここはどこだろう、家主さんの家じゃないのは一瞬で分かった。そして、煉瓦造りの家っていうのも何となく分かった、暖炉で燃やされてる薪から来る暖かさが心地いい。
「おい、寝ぼけてんのか?おーい」
「...へ?あっ、そんなことないです」
いきなり目の前で手を振られてびっくりした。
「ふーん、ならいいや。おーいばあちゃん!起きたー」
ばあちゃん?私が首をかしげると男の子は立ち上がり、ばあちゃんと呼ばれる人を呼びに行ってしまった。
「あらあら、起きたのね。おはよう、体は平気かしら」
「あ、はい...あのここどこですか」
ばあちゃんと呼ばれる人が男の子に手を引っ張られてこちらへ近づいて来た、そしてしわくちゃの手で頭を撫でられる。
「ここは私とこの子の家よ、私はこの子のおばあちゃんなの。リュカ、ご挨拶なさい」
顔がしわしわのおばあちゃんはふわりと微笑むと、リュカと呼ばれる男の子の背中をぽんぽんと叩く。
「面倒くせぇ。ーーー俺リュカ、お前名前は?」
「名前?えっと、ない...です」
「はぁ?お前もないのかよ、アイツと同じか」
軽く舌打ちを打つリュカ君に、おばあさんがこらっと軽く頭を叩いた。
「ごめんなさいね、気分が悪くないなら何か食べる?朝の9時だけどお腹空いてないかしら」
「あ、えっと...あのお腹空いてます...」
「ふふっそう。じゃあスープをご馳走するわ、準備するからちょっと待っててね」
恥ずかしくなって空腹のお腹を抑えて俯いたら、おばあさんは杖をついてキッチンらしき方へ向かって行った。
「あ、あの、私なんでここに?」
「今更かよ、お前置いていかれたんだよ。あの家主とかいうマヌケに」
「置いていかれた?家主さんに?」
私が聞き返すとリュカ君はこくっと頷く、そして気だるそうに私の隣に腰掛けた。
「アイツが魔法失敗してお前は置いてかれたから、お前はここにいんだよ」
「?」
私は言われてることがよく分からなくて首を傾げた。
「...チッ、だからだなぁーーー」
リュカ君はぶっきらぼうにあった事を話してくれた。
「...で、つまりお前は魔法に失敗したアイツに置いていかれた、でかくかくしかじかでばあちゃんの家に居んだよ。分かったか?」
「ーーーすごい分かりやすかったです。ありがとうございました」
「あっそ。ならいい。じゃあ俺は本読むからもう話しかけんじゃねぇぞ」
リュカ君はそれだけ言うと、机に何冊か積まれた分厚い本のうち一冊を手に取り、真剣な眼差しで読みはじめてしまった。
(もう家主さんってば、どうして起こしてくれなかったんだろう。私がやれば絶対間違いなんかしないし、失敗もしないのに...)
家主さんに怒りの感情が込み上げてくる、家主さんは魔力があってもなくてもポンコツという事を再認識した。どうして失敗したのかは知らないけど、というか私パジャマのままだし。
そういえばパジャマのまま家を連れ出されたのを思い出した、それで確か病院の中で寝ちゃったんだ。あ、あの子猫のどうだったのかな、大事だったかな...。
「はい出来たわよ。リュカ、運んで頂戴」
「っ面倒くせぇ...」
私がもんもんと考えていると、キッチンらしき所から杖をついたおばあさんが出てきた。リュカ君はぶつぶつ言いながらコップやスプーンなどを居間のテーブルへ運ぶ。
「あ、あの、私も...」
「お前は座ってろ、一応客だろ」
手伝おうとしたけどリュカ君に止められてしまう。
「あらリュカ、その子には優しいのねぇ。ふふっ」
「っ、いいからばあちゃんも座ってろ!」
おばあさんはからかう様にスープを運ぶリュカ君の頭を撫でた。
「ほら、食えよ」
大きなダイニングテーブルには、トマトと野菜とコル鳥のスープ、バゲットなどの豪華な料理が並べられた。
「...えっと、リュカ君は食べないんですか?」
よく見たらスープが一皿足りない。
「俺は部屋で食う、宿題あるから」
「またなの?リュカ、この前もその前もそうだったじゃない。たまには...」
「いい、っつてんだろっ。飯食ったら学校行くから」
そう言うとリュカ君は自分の分のスープをトレーに乗せて階段を上っていってしまった。
「ごめんなさいね、あの子ったら最近宿題を朝にやるようになっちゃって...あぁそれじゃあ戴きましょうか、さぁどうぞ。たんとお食べになって」
おばあさんは微笑み、手を合わせた。私も手を合わせてスプーンでスープをなみなみとすくって、一口口に運んだ。
「...あ、美味しいです」
「ふふっ、そう?ありがとう」
おばあさんからリュカ君の話を聞いて、楽しい朝食の時間はすぐに過ぎていった、





