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異世界で記憶のない毒舌幼女とポンコツ魔術師。  作者: くるすみ。
終わりの僕と始まりの君。
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異世界生活新しい「時間」



「なーんだ、金が足りないから帰れないんじゃねぇのかよ」


リュカはすっかり寛ぎベンチに大きく足開いて座っている。

「ははっ、残念ながら足りないのはお金じゃなくて魔力でね」


苦笑いする家主に、リュカは何を思いついたのか背負っていたリュックを漁り一つのペンを取り出した。


「ほらこれやる」


リュカはごく普通の万年筆を家主に手渡した。

「なんだい?これ」

「万年筆だよ、見りゃ分かんだろ。普通の万年筆じゃねぇけどな、魔力入ってるからそれで足りるならそれ使って帰れよ」



「あ、本当だ」

少し傾けると魔力が万年筆の中に溜まってるのが感じ取れる。魔力は目に見えるわけでは無いものの、万年筆の中にインクが溜まっているか確認する様なそんな感覚で感じ取る事ができる。慣れさえすれば簡単。


「だから言ってんだろ、それ使ってさっさと帰れ」


「でもいいのかい?これ結構高価そうな万年筆だし、君の物だろう」

「お前らが困ってるからくれてやるってんだろ、俺は万年筆なんて使わねぇかな。有り難く使え」


そう言って目をそらすリュカの態度に、家主は少し違和感を感じたが、特に気にせず有り難く受け取った。


「なら使わせて貰おうかな。どうもありがとう、これだけ魔力があれば帰れるよ」



「あっそ、じゃあさっさと帰れよ」



「はいはい、じゃあ帰ろうかな。おばあさん今日はありがとうございました、もっとお話ししたかったんですが...」



「あら、いいんですよ。私こそ久し振りに誰かとお話しできて楽しかったわ、ふふっ。またお話聞かせてほしいわ」


「ええ、またお礼をしに伺います」


「あら、いいのよ。私はよくここに来るからまたいつか会えますでしょう」

「...そうですね、ではまた。君もありがとう、リュカ君」


家主が笑みを向けると少年はそっぽを向いた。おばあさんが家主の目を見るように促すが、そっぽを向き続ける。


「もう、リュカってば。ほらちゃんとご挨拶なさい」

「別にいい、だからさっさと行け」

リュカはベンチから立つと、一瞬家主の方を見た。


「じゃあ失礼します。あ、ええとここで魔術をかけても?」

「ええ勿論どうぞ。では、さようなら。お話しできて本当に楽しかったわ」


家主は自分の肩に幼女の頭を乗せて子猫を抱いたまま、呪文を唱える準備を進める。おばあさんは少し所からこちらを見守り、リュカは興味無さげにそっぽを向いているかと思いきや、今度はじーっと家主を見つめていた。


(なぜかリュカ君にこっちを見られてるな、ここでしくじったら情けないぞ...)


家主に謎の緊張感とプレッシャーがはしる。ベンチに座ったまま万年筆を地面に置き、呪文を唱え始めた。


「ーーOur house」

同じ呪文なのに、人に見られてるせいか家主はやけに緊張していた。万年筆はカタカタと誰も触っていないのに震えだす、そうこれでいい。



目を瞑ると、辺りは瞬時に白い光に包まれた。呪文を唱え終わる頃には体が宙に浮く感覚、そして隣には暖かい彼女の体温。膝にも子猫の暖かい体温が感じられる。



「ーーーよし、上手く行った」

光が消えて目を開ければ目の前は木が並び、暖かい朝の木漏れ日が差し込む。そして後ろを振り向けば僕らの家があった。そして膝の上には子猫、僕はなぜか尻もちついてるけどまぁいいや。


そして隣をみる。

「マイヴィーナス!上手くいっ.....」




僕は絶句した、心臓が一瞬止まった。そう、あの子(幼女)子がいない事に気付いた。

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