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信じられないでしょうけど、不明の能力です!


「時間、かかりすぎ」

「手出されなくても、すぐ……終わってた」

「時間稼ぎ……割り込まなかったら、もっと、かかってた、よ」


ダンジョン一階層のボスフロアで待ち受けていた私たちの前に、奇妙な格好の二人が現れた。

二人とも全身を真っ黒のポンチョのようなもので覆っている。

そのうえフードを目深に被っていて顔も見えず、まさに正体不明の不審者だった。

しかし身長から見ると、今の私やユベルちゃんと同じかのように思える。

中身はともかく、体は子供並みだ。


そんな二人が、のろのろと独特な歩き方でこちらに向かってくる。


ダンジョンの侵入者で、何を目的にしているのかわからずどんな行動をすべきか悩み思考が止まった一瞬。


『殺らせやしねぇよぉ、なぁ』

「プレイヤーは、殲滅」


その間に、私の目の前に槍の矛先が突きつけられていた。


「ッ!」


ギリッギリでの反応できたかどうか怪しいタイミングで後方に飛ぶ。

ぶわりと吹き出した冷や汗が空中に舞った。


ポンチョ姿の一人が、突如飛び出し私に槍を突き出したのだ。

その槍の長い塚の部分を、ケルベロスちゃんが三つのうちの一つの首で噛み止めてくれた。


この二人は、敵!


「こっちは、任せる。……もう一人、ボクがやる」

「なっ!?」


気がつけば戦闘に参加して痛かったポンチョ姿のもう一人の侵入者は、下の階層に続く階段に足を踏み入れていた。

一人に気を取られていたとはいえ、警戒はしていた。

それなのに全く気づかなかったなんて。


『いかせっかよッ!』

「無理。……アンタ、調子、悪い。……ワタシを止めるので、限界!」

『ぐっ』

「ケルベロスちゃん! この、『平和主義者の領域』!」


闇を振り払うようにして、噛みついていたケルベロスちゃんを強引に引き剥がしたポンチョ姿ががくりと膝をついた。


「……?」


これで相手はケルベロスちゃんに追撃はできない。

そして、領域を貼ることでもう一人も下の階層に降りることは


「じゃあ」


しかし、領域内に囚われたはずのもう一人は、何故かそこに壁などないかのように、堂々と階段を降りて行ってしまった。


「はぁ……領域は書き換えられてないから、別の系統のアビリティかな。ユベルちゃんごめん。一人そっち行ったから対処よろしくね」

《ケルベロスさん? 大丈夫かな? はい薬》

『……おい、あんま俺に近づかねえ方がいいぞ』


ケルベロスちゃんにミドリちゃん特性回復薬を投げ渡す。

その際、ケルベロスちゃんの小声のつぶやきを拾った。

近づかない方がいいって、どういう……


『いや……あんがとな』


少し引っかかりを覚えたけれど、いつまでもそんな事をしてもいられない。

思考を切り替えなければ。


《本来はケルベロスちゃんと戦うつもりだったゴールドがあるから。ボクも戦える》

「オーケー。三対一だけど、卑怯とか言わないでね?」


嫌ならせめて、下の階層に降りた子を連れ戻す事だね。

できるならの話だけど。そしてできたならそれはそれで別にいいしね。


「あ、名前ぐらいは聞いとくかな。プレイヤーだよね? 私はミルクル。貴方は?」

「私…………私の、名前……は」


そして黒づくめの『彼女』は、フードを取った。

ばさりとふわふわのカールのかかった髪が解放され、光の灯らない目でこちらを見て。


「『Kaaru(カール)』」


彼女は静かにそう言った。


--- --- --- ---


「先手必勝、『反射』!」

「『スルー』」


はっ? 物理回避?


階段から降りてくる瞬間の不意打ちをかまそうと殴りかかったが。

その拳が何故か、相手の顔を『通り抜けた』。


「『すり抜ける拳』」

『マスター!』


拳を打ち出した状態で硬直していた俺の体に相手の拳が突き刺さり、嫌な音を響かせるとともに俺の全身がさらに上に飛ぶ。


「ごふっ」


があぁぁぁあ……い、いてぇ……

うっそだろ、防御貫通。

息が、できない


「『失礼しますマスター』」

「……?」

「『死ね』」

「完璧に、決まった……なんで、動ける?」


『限界破壊』に体の支配権を渡し、限界破壊が俺の懐から数本のナイフを取り出し相手の急所に投擲する。

しかし、俺の拳同様ナイフも相手を通り抜け地面に突き刺さった。

しかしそのナイフは牽制の意味もあったのだろう、限界破壊ちゃんがその場から跳びのき戦線から離脱する。


精神の状態だけになっている俺に生理的な現象は関与できない。

そして限界破壊は、ぶっちゃけ『息』をしなくても活動は停止しない。

まぁ、『俺の体』は息をしなけりゃぶっ壊れるので、いつまでもこの状態じゃいられないんだが。


《……許さない》

(ま、待て、アオ、まだ)

《『食卓の法律(テーブル・マナー)・無作法』、『超捕食』!》


不味い。

『食す』関連のアビリティ効果を極大強化する『食卓の法律(テーブル・マナー)』の無作法だが、そのデメリットもまたでかい。

そして相手は、なんの手品かは知らないが物理攻撃、あるいはなんらかの条件下にある攻撃の無効化が可能。

そんな相手に対しては放つにはあまりにリスクが大きすぎる。


完全に冷静さを欠いている。

まぁ俺のせいなんだけど。

本来なら、王道なら、テイムエネミーをけしかけるのがセオリー。

ここで自分が前に出て戦うタイプであることと、出来るだけ危険を無くしたいという俺の悪い癖が出た。


「『スルー』」


まただ。

言葉的に、『無視』をするアビリティ。

だが、そんなアビリティは聞いたことがないし、発動するだけで攻撃を無効化するなんてバランスブレイカーもいいとこだ。

なんらかの条件、あるいは制限がある。

俺の攻撃同様、アオの攻撃もすり抜けて……


『……そうはさせぬよ』

「ッ!」


音もなく相手の背後に回り込んだ死神が、ピタリと鎌を首に押し当てるモーションをする。

それの影響か、相手の動きが一瞬ではあるが完全に停止した。


『……ぬ』


しかしアオの攻撃が当たる直前に再起動、しゃがみこんで鎌を首から外すと両手両足を地面につけ獣のように横に飛んでアオの攻撃を回避した。


「……単純な、能力なら平気……」


しかし、ただ回避されただけではない。

移動へのタイムラグのためアオの攻撃を回避しきることは敵わず、左足と翻ったパーカーがアオが捉えた。

真っ黒なマントのようなもので全身を覆い隠し、フードをかぶり正体不明であった相手のフードが外れた。


真っ白な短髪に蒼い目。姿形は未だ幼さが残る。

しかし、その目に光は存在しなかった。


(てか、限界破壊ちゃん。そろそろ体返せ)


いつまでも観察してはいられない。

俺の体もそろそろ限界を迎えているはずだ。

限界破壊ちゃんが相手を警戒してくれるのはありがたいが、破壊できる限界にも限度がある。

相手も今は警戒態勢だし、大丈夫だろう。


「『言い草が引っかかりますが、了解しました。急激な変化に対するショックにお気をつけください。最悪死にます。では』ッハッ! …………カッ……」


喉の筋肉が痙攣し頭の血管が引きちぎれるかのような感覚に襲われる。

息ができないのに体は全力で酸素を求めている。


「……ッ〜〜〜、ゲッホッ! ゲホッゴホッ! ハ〜! ゴホッゴホッ」


なんとか呼吸ができるようになった。

咳き込みを気合いでねじ伏せ、すぐにミドリ特性回復薬を煽る。

苦しくて涙がにじむがそんなことをやっている暇はない。

すぐに臨戦態勢を整えなければ……


「ゲホッ、一旦、戻れ、アオ」

《うん! ますたー、大丈夫?》

「ああ、俺は平気だ。死神もありがとう」

『…………』

「死神?」


いつのまにか隣にいた死神に声をかけるが、返事が返ってこない。

訝しみそちらに視線を送り、鳥肌がたった。


『……気にするな』


何かを耐えるような深く響く声。

俺はこの時なによりも、この死神に対して恐怖を覚えた。


「ゲーム、プレイヤー……は、殲滅」

「怖いこと言いやがって。『逃亡』・『超逃亡』並列発動(マルチアクティベート)


四つん這いのままこちらに飛びかかってくるが、AGI全開の俺のトップギアなら白髪少年よりも早い。


「遅い!」

「『スルー』」

「使ったな? 『アビリティセンス』!」


殴りかかるふりをして、白髪少年が『スルー』を発動した瞬間即座にその場から撤退する。

その間、白髪少年から絶対に目を逸らさない。

俺の目に宿った光が情報を映し出す。


「ん?」


アビリティ名『スrrrrrr不明』。効果不明。神のT。


「ほあ!」


特別(スペシャル)の検索アビリティで、効果不明!?



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