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信じられないでしょうけど、圧倒的です!

「決闘と言っても、形式は様々だ。さて、どうするよ」

「決闘を申し込んだのはこちらだ。そちらに内容の決定権がある」

「なら二対二のテイマー戦闘有り・エネミー一体制、ハーフタイムなし、時間無制限、降参参ったなどの戦闘の中断なし。アイテム、アビリティ等の縛りも一切なし。テイマーやエネミーがどうなろうと相手が戦闘不能になるまで終わらないなんでもアリのサドンデスルール。なんてどうだ?」

「滅茶苦茶だ」


そう言うだろうと思ったよ。

だけどな。


「おかしなことを言うもんだ。俺に決定権があるんだろう?」

「これは俺たちのために言ってるんじゃない。あんたらのために言ってるんだ。それだけはやめておいた方がいい。そのルールは、『あまりに俺たちに有利すぎる』」

「わかってるじゃないか」


センターが理解できないとばかりに顔を歪める。

本当は俺だって、できるならこんなルールにはしたくないさ。

ほんの少しでも、ミドリが危険であるかもしれない可能性があるのなら、俺はそれを避けたい。

でも仕方がないだろう。


ミドリがどうしてもって言うんだからさ。


《だって。美味しい素材に逃げられたら、勿体無いじゃないか》

「マッド…………あ、いや、なんでもないです。はい俺も同類ですはい」


今にもミドリは舌なめずりをしそうなほどの声を出す。

声だけでアリアリと映像が頭に浮かんだよ。

あー、こりゃ説明するじゃなかったな。

ダメっ娘モード入ったわ。まぁ、俺も美味しいとは言ったけどさ。

レアだし、嬉々として説明したけどさ。


でも、ここまで酷くはないぞ?


精々、頭が追いつかない間にボコボコにして降参できないようにしてからマウントを取り、必殺アビリティ《ずっと・おれの・たーん》を発動するぐらいだ。

ね? 可愛いもんでしょ?


「変態言語が高等過ぎるのか違いが全くわからないんですけど……」


ミルクルさん、シャラップ。お口ミッフィー。


「俺たちがそれでもいいって言ってるんだから、お前らが気にすることじゃないだろ?

「……あんたには、自分のエネミーに対する情がないのか」


黙れよ。


「うぐ……」

《ますたー。殺気が漏れてる。漏れてる》


大丈夫、3割ぐらいはわざとだから。

センターが苦しそうに喉を詰まらせる姿を見て、少し気分が落ち着いた。


「よりによって、お前がそれを言うなよ。ミドリを寄越せと言った、お前が」

「…………」


センターも失言だと思ったのか口を閉じた。

しかしまぁ、失言なら俺の方が多いから気にすんな。これでイーブン。

センターの今の言葉は、つい思ったことを言ってしまったって感じだろう。

俺はわかった上で言ってるから、おあいこだね。


(ユベルちゃん! ツッコミ待ちなのね。ツッコミ待ちなんでしょう!)

(アオー)

《んー?》


襟を引っ張りパーカーの中のお腹部分を覗き込み、青の目を合わせた後。

にこりとアオに笑顔。そしてちらりとミルクルさんをちょいちょいと指差し、首を掻っ切るポーズをした。


《えー》

(ちょっと!)

(おいおい勘違いするなよ。ただ俺は、うるさいから少し静かになってもらおうと思って、永続的に眠ってもらおうと思っただけじゃないか)

(オブラートに包んでるようで実はめちゃくちゃストレート!)


あー、クソ。ちょっとイラついてんな。

いかんいかん。頭に手をやり、邪念を捨てるように首を振る。

こんなんじゃ冷静な判断などできようはずもない。


「チッ……はぁ。まぁいいや。アオ、決闘が始まるからミルクルさんの方に移ってくれ」

《はーい》

「ミルクルさん。余波やらなんやらが飛ぶかもだが、アオのこと頼んだぞ」

「理不尽の称号にかけて、アオちゃんは守るから安心してなさい」


EGO随一の秘剣使いを信じろと、ない旨を叩いてはって、堂々と言い放った。


「うん。言ってて恥ずかしくない?」

「殺すわよ」

「ごめんなさい」


うん、茶化しちゃダメだったか。

でも、正直に信頼しているとは、少しこっぱずかしくてな。


頭をぽりぽりとかいてから、センターに目を向ける。


「と言うわけだ。こっちの準備は終わった。ルールに変更はなし。それでいいな? いいならさっさと準備しろ」

「……わかった。準備はもう万全だ」


だが、どうなっても知らないぞ……とセンターが呟いた後、2人で同時に口をそろえる。


「「スタート、battle the エネミー」」

「まずは捕獲からか……ミドリ」

《うん》

「まずは実験室(ラボラトリ)を貼ろう。支配者権限で縛るぞ」

《了解》


領域系アビリティでまずはマウントを取りに行く。

ミドリが実験室(ラボラトリ)を発動するまでにまず俺がすることは。


こちらに向かってくる炎の塊を、対処するところからだろうな。


「掛け金レイズ、ベット500万ゴールド【 アスタリアン・フレイム 】!」

「面倒くせぇんだよなぁ……『逃亡』・『鑑定』・『検索』並列発動(マルチアクティベート)

《あ、マスター。ボクのことを気にしてるなら大丈夫だよ? 全身に(どく)を何重にも重ねてコーティングしてるから。なにより、イッシキさんの方がもっと熱かったしね》


そうか、そういやミドリは一式と戦ったのか。

戦闘中だったから気にならなかったが、それでもかなり熱かったし、あの野郎『熱暴走(オーバーヒート)』使いやがったな。

今度会った時は頭部パーツもぎ取ってやるから覚悟しとけ。


「OK。そろそろ着弾するから衝撃には備えてくれな。『体力超増強』・『防御力還元』並列発動(マルチアクティベート)

《がってん。あ、それと衝撃が余すことなくマスターのものになるように、毒で足固定しとくね」

「おう、助かる」


パーカーの中からどろりとした液体が足裏と地面に伸び、地面がぐにゃりと変形したかと思うと、俺の足が超強力な接着剤で固められたかのように動かなくなる。

これは非常にナイスアシストだ。


防御力を強化し、ミドリをパーカーの中に入れたまま炎を正面から受け止める。

ミドリをかばうように両手でお腹を守る体制をとったため、炎に対し頭突きをするようになってしまった。

炎は俺たちに着弾すると、一度部割と拡散し、今度を俺の全身を焼き尽くさんと言わんばかりに纏わりついてくる。

着弾した衝撃で後ろに弾き飛ばされそうだったが、ミドリが足を固定してくれたおかげで助かった。


ダメージはない。だが、暑いもんは暑いんだよなぁ。

熱さはそこまでじゃないが、サウナにいるような感覚だ。

うだるような暑さが体を支配し、空気が鉛のように重く呼吸がしづらい。


「ミドリ!」

《うん! 『実験室(ラボラトリ)』!》


ミドリの体から緑色のソナーが辺りに放たれ、ミドリの領域が展開される。


《支配者権限行使、第一工程『実験体(モルモット)』》


この領域内にいる限り逆らえない強制力が発動し、空を舞っていた炎の鳥がピシリと硬直し地面に落ちてくる。


「フェ、フェニル!」

「素材はさっき説明した通りだ。切った直後に熱を失うから、適当に回収すればいいよ」

《了解。支配者権限行使、第二第三工程強制破棄、第四工程『解剖(ディスカッション)』》


フェニックスの体に素材ごと、余すことなくメスを入れたミドリが、ふぅ、と満足げにため息を吐いた。


《いいね。いいね。これからどんな薬が作れるのか、今から楽しみでならないよ》


相変わらず自分のスキルアップに余念がない子である。

全くもって健気でいい子だ。俺にはもったいないほどに。


「ほら、ちゃんと回収しないと燃えて消えちゃうぞ」

《おっと、それは困る。『不揃いな試験管』発動……『実験室(ラボラトリ)』内に存在するフェニックスの素材の数を把握……『清掃』》


『清掃』。実験室内での環境を一定に戻す能力。

その場にあったものは本来、アビリティの使用者であるミドリの元へ集まるのだが、設定を行えば別の決まった場所に持っていくこともできる。

今回の場合、アオの『底無第胃袋』の中に転移させているため、遠慮する必要もない。


まぁ転移させることができるのは無機物だけという制限はあるが、その程度はご愛嬌だろう。


そして、全身の素材という素材を剥ぎ取られたフェニックスは息も絶え絶えという状態で、身体のあちこちから、仄かな火がチラチラと覗き涙を誘う。


「フェニル! 『さい」

「そうはいかねえよっと」


呆然としていたセンターが何かを言い終わる前に、ナイフを投擲しフェニックスのHPを0にする。

HPが0になったのだろう、体から発せられた火が消え、ピクリともせずにその場に横たわっており

次の瞬間、全身から轟々と燃え盛る炎をその身に宿し、空高く舞い上がったフェニックスが猛々しく咆哮を上げた。


「残念だったな。勝ったと思ったところ悪いが、フェニルには」

「『回帰する焔』。パッシブの特別(スペシャル)アビリティ。生命活動を停止させた瞬間に効果が発動、全身を復活の焔で再構築し何度でも黄泉返る。いや、黄泉帰る、か」


俺がズバリ正解を言い当てたからか、センターの目が丸く見開かれる。

そんなことは神都の住人なら誰しもが知っていることだし、別に秘匿されているようなことでもないが、世間一般的に知られているようなことでもない。

だが、あくまでそれはこちらでの常識でしかない。


フェニックスの強味、弱点、何もかも、公式から明かされた設定なんぞとうに凌駕して隅から隅まで丸裸にしようとする変態が集まる場所に俺はいた。


情報の海から必要なネタを拾いに拾い、いざ戦闘に赴き、プレイヤーに刈りつくされ干からび萎びたフェニックスを見て絶望したのはいい思い出だ。


「その再生の秘密は、『完全残機制』。所持しているゴールド1000万ゴールドにつき、残機が1とカウントされ、死んだ際強制的にゴールドが支払われ残機を1減らして復活する」


まさか、テイムできるのはあのオンライン世界でたった一人のみ。

誰かにテイムされている間は、いくらテイムしようとしてもテイムはできないボスエネミー。

ポップされる場所は分かっているものの、その再生の仕方に秘密があり一回きりで死なれるとは思うまいよ。


ここまで来て、自分が崖の端の端まで追い詰められていることを理解したのからセンターの顔が真っ青になる。


「クソ! フェニル『顕現せよ」

「遅えよ」


センターがフェニックスに何らかの支持を出そうとした時には、既にフェニックスは翼をもがれ地面に向かって墜落していたところだった。


実験室(ラボラトリ)内にいるんだ……少しでも隙を晒したら、死ぬぞ?


「––––––ッ! ––––ッ!!」

「さて、どれぐらい溜め込んでるか分かったもんじゃないが、最低でも20回は蘇生してくれるんだよな? 簡単に決着が着いちまったら、興醒めだろ?」


まだ決闘は始まったばかり、なんだからさぁ。


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