信じられないでしょうけど、元通りと不幸の呪いです!
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「ふむ。厳戒体制っと言ったところでござるかなっと」
《ボクが言うのもなんだけど、こんな有様じゃねぇ》
テープやら、鎧で全身武装した騎士さんたちやらがそこらをウロウロして災害にあった現場のようになってしまった国の一部を封鎖していた。
しかし結構広いあたりから封鎖しているために、被害にあった場所からは少し遠い。
これならば大丈夫な気がしないでもない。
いや無理か。普通に気がつかれるだろうな。
(おっと、騎士さんお疲れーっス)
《マスター。マスター。相手気づいてないからって肩ぽんぽんしてこれ見よがしにテープ潜るのやめよう? いたたまれなくなっちゃう》
(いやあ、まぁ)
取り敢えず騎士さんの鎧の隙間にお茶を滑り込ませておく。
いやー、マジでお疲れでーす。あ、お疲れでーす。お茶どうぞー。
騎士さんたちの横を通り過ぎるたびに鎧の隙間、たまに腕に直接握らせ、しまいにはヘルムの頂点にお茶を置いて行く。
《遊んでるのかな?》
(正直ちょっと楽しい)
いやー、隠密系アビリティ全力解放だとこうも気づかれないもんかね。
これで後ろから話しかけようものなら大絶叫間違いなしだ。
一瞬本気でやってみたくなったが、我慢我慢。
ウチの子の目が怖いからだ。
うし。ここら辺なら騎士さんたちもいないし、ちゃっちゃと始めちゃいますかね。
『うわあ! な、なんだ! いつのまに俺はお茶を!』
『ぶふぅ! なんでお前そんなところにお茶引っ付けてんだよ!』
『お前、自分の頭見てみろ!』
あははは。まだまだ深夜に近い早朝だというのに賑やかなことで。
おっとミドリさんや。非難がましい目を向けないでくだせえ。
ニヤニヤしてやった。反省もしてないし、後悔もしていない。
《マスター……元気になったね》
(うん? そうか?)
《うん。ミルクちゃんが起きるまで、おちゃらけた態度取らなかったでしょ。ようやくいつものマスターに戻ってくれたって思える。良かったよ》
…………そか。
な、なんか恥ずかしいぞ。
え? そうだったかな。いや、意識してなかったんだけど……
無意識か? 無意識と言いたいのか君は。
うぬぬ……えーい。細かいこと気にしてないでちゃっちゃと行こう!
「んじゃミドリ、いっちょやるぞ」
《どんと来いさ!》
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「ユベル殿! ユベル殿!」
「なんじゃらほい」
何やら慌てた様子で俺達に与えられた部屋の扉を開けはなつ見覚えのないメイド服を着た少女。
どうでもいいけどノックとかしないのかね。
俺もついさっき全速力で戻ってきたばっかで、体拭いてたところだから上半身裸なのだが。
「し、しししししし失礼致しましたぁーー!」
「イヤーンエッチー」
「も、もももも申し訳ございませーーーーーーーーん!!」
はっはっは。どうかね私の上半身のこの引き締まったナイスボディは。
布を持ったまま色々とマッスルポーズをとる。
あ、はいセクハラですねごめんなさい。
謝るから! 謝るから痛い痛い痛い!
アオさん噛みつかないでー。
急いで服とパーカーを羽織るものの、アオちゃんが離れようとしないので腹にくっついたままである。
ミドリも滑り込んできて、これで俺の準備は万端だ。
そしてまたなんとなくマッスルポーズを取ってみる。
とはいえ今の俺の体は『6歳』の体、つまりは子供の体型に早変わりしちゃってるので筋肉なんてどこにもないんだけどね。
とはいえ、このシックスパックどころか、子供っぱらみたいにぽっこりツルツルの腹筋が、そこらへんの剣やら槍を折り曲げるほどの硬度を持っていますがね!
くだらないことを考えながら、ときたまベッドで眠るミルクルさんに視線を向けて様子を確認したりして待機していると、しばらくしてからノック音が部屋に響いた。
「どうぞ」
入ってます。とかおふざけしそうになったけどさっきあれほど自慢していたお腹が今まさにねじ切れそう(物理)になっているので自重しますともはい。
アオちゃーん。痛いよー。
いやマジで。HP減ってるからマジ勘弁ー!
《あ、ごめん。つい》
ついかー。そっかー。
俺のDEF貫通してるんだけどなー。
「失礼しますぞユベル殿」
「おはようございますサイドさん。あ、さっきの女の子に直接謝りたいからお名前と住所とできれば連絡先を…………ナンデモナイデス」
イテーーーー!!!
オナカガ! オナカガーーーー!
これもついか! ついなのか!
「…………ユベル殿?」
「ハイ」
「…………質問です。貴方はユベル殿で間違いありませんね?」
「勿論です」
「……馬鹿な」
血を吐きそう。
なんとかお腹をぽんぽんして痛みを和らげてもらいながらサイドさんの反応を見る。
まぁ、昨日まで青年だった男がいきなり少年の姿にまで縮んでるんだもんな。
そりゃそうなるわ。
「体は子供。精神は、まぁ、それなりには大人、かな」
《子供でしょ》
《マスターの精神のどこが大人なのか詳しく》
僕はすごく悲しい!
ウチのスライムちゃんが冷たい!
「まぁ安心してくださいよサイドさん。どちらかが真の姿とかないので」
強いていうなら両方真の姿である。
この子供の姿がまさしくこの世界での俺の姿ではあるが。
大人の姿だって幻覚を使ってはいるが、あの姿は紛れもなく俺は前EGOで使っていたキャラアバターで間違いない。
両方俺だとも。
みんな違ってみんな良い。
「貴殿は人間ですかな?」
「人間ですけど」
失礼な。
「いやはや、いえ、今はそんなことはいいのです。いやよくはないのですが、取り敢えず、一つ質問よろしいですかユベル殿」
「どうぞ」
サイドさんがキリッと表情を引き締め、ピシッとした姿勢をとり鋭い眼光を俺に向けた。
「今朝方、破壊された国の一部が、3分の2ほど完璧に修復されました。その場から少し離れた騎士からの報告によると、『瓦礫が勝手に浮きあがりそう思ったらものすごい勢いで瓦礫が次々と一つにまとまり家や道が元通りになっていった』とのことです。……説明いただけますね?」
イクメンダンディな執事さんの眼光は鋭いねー。
そこらの乙女だったら一発でコロリだこりゃ。
その眼力、ちっと俺に伝授してはもらえませんかね。
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「……けほっ」
何やら今日は、賑やかな日ですね。
「……けほっ、けほっ」
部屋の外でドタバタと音が聞こえてきます。
最近みんな元気がありませんでした。よかったです。
……でも羨ましいです。私も外に出て遊びたいです。
いつになったら、私の体は治りますかね。
お友達が欲しいです。小鳥さんといつも私の様子を見に来てくれる彼しか私の友達はいませんし。
「大丈夫か?」
「けほ、はい。少しだるいですけど、昨日程じゃ、ない、けほっ、ぁですね」
「無理するな」
「そういえば、今日は新しい治癒師の方が、来るそうですね。……どんな人でしょう」
「…………どう、だろうな」
ひたいにひんやりとした布が当てられて気持ちがいいです。
少し目を開けて彼を見ると、彼の目の下にはクマが出来ていました。
「寝て、無いんですか?」
「寝たさ」
「どれ、ぐらい?」
「…………3600秒くらい」
「ものすごく、寝てますね。けほっ、安心しました」
3600という数字がものすごく大きいですし、いっぱい寝てるんでしょう。
あれ? でもなんでクマが出来てるんでしょうか?
不思議です。
「ほら、あんまり喋らないで、安静にしてろ。なんなら寝ろ。今すぐ」
「さっき起きたばっかりです。眠く、けほっ、ありません」
「なら目を閉じとけ。俺は水変えてくるから」
「いつも、いつも、ごめんなさ、けほっけほっ」
「あああもう! 気にすんなって言ってんだろ。大人しくしててくれ……頼むから」
センター? どうしてあなたはそんなに泣きそうな顔をするのです?
どこか痛いんですか? 痛いの痛いの飛んでけしてあげます。
「なんで手を伸ばしてるかわからんが、取り敢えず結構だとだけ言っておく」
断られてしまいました。
布団の外に出していた手を布団の中へとしまわせたセンターが桶を持って扉へと歩いていきます。
いつも、いつも、私に構ってくれるセンターが、私は大好きです。
「センター」
「おん?」
「ありがとう」
「俺の仕事だから気にすんな」
「大好きです」
「ブフォオ! …………み、身に余る光栄、だな」
センターはそう言って部屋を出てしまいました。
それにしてもセンターは、どうしていつも好きだと言うと顔を隠して何処かへ行ってしまうのでしょう。
お父様やサイドに言うと、いつも笑顔になってくださるのですが。
そういえば最近、センターはあまり笑わなくなりました。
私のせいでしょうか。
私に構うから、お外でお友達ができないのでしょうか。
それか、私とのおしゃべりが楽しくなかったのでしょうか。
もしそうだとしたら、さみしいです。
「私が元気になったら……センターは笑ってくれるでしょうか……」
つい独り言が出てしまいました。
「けほっ」
また、いつものようにお外の景色を眺めます。
今日来てくださる治癒師様は、センターを笑顔にしてくれる方でしょうか?
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少女の身を蝕む呪い。
その呪いは、この世界の多くの治癒師を名乗るものたちが匙を投げた重く恐ろしい呪い。
その呪いは、特定的に何かをもたらすものでは無い。
その呪いは、投げやりなまでに曖昧で、どう手を施せば良いのか検討すら付かぬものは多く、何か手を施そうともなんの意味もなさず、辺りからすればむしろ手を施すたびに悪化しているようにすら見える。
故に彼は、誰よりも少女を思い胸を痛める。
誰よりも、少女に寄り添おうとしてきたが故に。
誰よりも、少女の変化に敏感だった。
少女の命のろうそくの火が、消えそうになっていることに、気がついてしまうほどに……
特別アビリティ『不幸少女』
このアビリティを保持する少女は、多くの苦難・困難の坩堝に落ちるだろう。
しかして、決して乗り越えられないものではない。乗り越えられる苦難が、苦痛が、永遠にその身に降りかかるのみ。
それは理解の及ばぬ暗闇の中を、ただひたすらに救いを求めて歩き続けるに等しい。
その暗闇の先に、一筋の光が見える、その時まで。




