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信じられないでしょうけど、神々の盤上です!

普段は、薄暗く、明かりのない不思議な空間がそこにある。


しかしこの空間は今、何処からか現れ、ふよふよと浮遊する多数のシャンデリアのようなもので煌びやかに輝いていた。


存在が何処に在るとは定義できない、不明瞭かつ不確定。


真っ白な『面』が在るだけで地面はなく、薄暗くともわかる白き空間に天を遮るものはない。


そしてその空間を仕切る壁もなければ、行き止まりもない。


そんな場所に一つ、縦に伸びたテーブルがある。


テーブルは長く、長く、ただ長い。


どこまで続くのか想像することすら許されないと言わんばかりの空間にどこまでも伸びている。


そのテーブルには、数えきれない量の料理が並んでいる。


一定間隔で並ぶ椅子は大半が使用されており、集った神達の宴が始まろうとしていた。


「ぐわははははっ! お前のガキは生まれ落ちた場所から動いていないと聞く。お前に似て腰抜けだな。雑魚め!」

「ふはっ。優秀な子だからこそ、考えて行動しているんだよ。お前の子の方こそ、生まれた場所から走って国を渡るとか、お前に似て脳筋で単細胞だな。それで僕の子を侮辱できるとは、呆れてものも言えん」

「もう一度言ってみろチキン野郎!」

「何度でも言ってやるさ。お前が神を代表するレベルのバカだから、子供の選択も必然的にバカなんだろこのバカが!」


各々、個性的な神達の集まりであるから、まぁ、このような言い合いも起きてくる。

しかしこの喧嘩は、少々見慣れたものであった。


「あぁー、また始まった」

「ほっとけ」

「本当に、あいつらはよう飽きなんだのう」

「その口調疲れませんか?」

「や、やややかましいわ!」

「ほっとけじゃねんだよ。どーすんだよ、もう最高神さん来る時間なんだぞ。俺が責任問われたらどうしよう。泣くなー、きっと泣いちゃうなー、こんなところで泣いたらみっともないなー、誰か止めてくれよ頼むからさあ」


神々はそんな言い合いが始まろうとも、神気がじわじわと解放されていようとも意に介さず、自分の席からはテコでも動かずに近くの神達と談笑したり、食事をとっている。

中には、席に座ったまま一言を発さず微動だにしない奴とかいるが、そいつも当然ガン無視である。

そんな空気は御構い無しといった風に、口調の荒い筋骨隆々とした大男と、静かに毒を吐く黒いローブを羽織った大男の腰ぐらいまでしかない小柄な青年はヒートアップしていく。


「あぁ? 逃げるしか能のない腰抜けがなにナマ言ってんだあ!?」

「そちらこそ。戦うしか能のない脳無しにだけは言われたくない。このバァーーカ」

「殺す」

「そういうセリフは僕に一掠りでもしてから言ってくれるかな? だから脳無しと言われるんだ」


大男が『闘神』と呼ばれる神であり、小柄な青年が『逃神』と呼ばれる神である。

ウマが合わず、顔を合わせればそれが喧嘩の合図と言われるほどに仲が悪い。


逃神は『能無し』ではなく闘神のことをあえて、『脳無し』と呼ぶ。

これは、短絡的で考え無しで単純であるというシャレを含めた嫌味なのだが。

闘神は神の中で一番強くなるという果てしない目標に向け日々肉体を鍛えに鍛えみがきあげているのだが、もはや数字で語ることすら億劫になるほどの長きにわたる年月を飽きずに鍛錬に費やす彼は、もはや脳みそまで筋肉になってしまったと割と本気で考えていたりする。

彼自身、闘神の力はある程度認めている。

長年の付き合いは伊達ではない。その付き合いが仲よきものかどうかはさておき。

彼以上に、闘神のことを知る神はこの場においていないだろう。


「そういうセリフはよぉ……」


闘神が拳を振り上げ、予備動作もなく瞬間移動にも等しい速度で逃神の背後に回り込み、勢いよく拳を振り下ろした。

それによって生まれた旋風と衝撃波はその場を著しく破壊し、気づかなかった、どうでもよかった、遅かった、等々の理由で準備が間に合わなかった神々は四方に吹き飛ばされることとなる。


「ぬお!」

「ちょおっとぉ!」

「きゃー!」

「……」

「あんの、バカヤロウが!」


テーブルの上に並んだ豪華絢爛な料理が皿ごと軒並みひっくり返り、吹き飛ばされた神々からの文句、罵詈雑言が飛び交う。

しかし、等の闘神はそんなことは知らぬとばかりに聞き流し、自分の拳になんの手応えもないことに顔をしかめた。


闘神の後ろから突如ぬるりとした黒い塊のようなものが伸びたり縮んだり、グネグネと変形し、逃神の上半身を形作る。

逃神は腕を組み、冷めた視線で闘神を上から見下ろす。

下半身は未だ黒いウネウネとした物体を象っていた。


「はい、ハズレ」

「この俺に一撃でも入れてから言えやあ! このクソチビがあ!」

「……ぶち殺す。闇に飲まれろ」


逃神が一気に闇を広げた。それはもう、闘神の巨体全てを飲み込んでもいまだあまりあると言えるほどに。

その闇に飲み込まれれば神であってもただでは済まない。

一切の攻撃手段を持たない逃げる神、『逃神』。

しかし、逃げることしか能のない、という言葉は間違ってないように見えて、とんでもない、大きな間違いである。

彼の『万物から逃げる闇』は、他人を巻き込むことができる能力を備えている。

森羅万象からも、逃げることができる闇を問答無用で他人に使用する、それは、生殺与奪を握られることに等しい。

しかし闘神は獰猛に笑みを浮かべ、グッと拳を握った。


真っ向からぶち破ると宣言する姿、実際に今までの喧嘩で逃神が闘神に傷をつけることが出来たことは一度もない。

良くも悪くも、同格の神同士。

ほっておけばそれこそいつまでも続くであろうその戦いとは口が裂けても呼べない神同士の殺し合いは


「ご飯、粗末にしたら、ダメ。ご飯、作ってくれた人、可哀想。材料、作ってくれた人に、失礼。感謝しないやつ、ワタシ、許せない」


右手で闘神の後頭部を鷲掴みにし顔面を真っ白の地面とは呼べない何かに叩き込み、左手のデコピンで逃神の闇を余さず吹き飛ばした小柄な少女によって終止符が打たれた。

鍛えに鍛え、体重は数tでは足りず、例え数百体のマンモスにのしかかられようと微動だにしないどころか、片足立ちでスクワットを始めるであろう闘神を。

何十倍も差のある身長の少女は、片手でなんの抵抗も許さずに沈めた。

さらに、デコピン一つで『逃げなければ死ぬ』と逃神に数万の死の可能性を見せつけ抵抗する暇もなく吹き飛ばした。


あたりがしんと静まりかえる中、再び闇から自らの肉体を形作った逃神が言葉を発する。


「これはこれは。食神様。まさか『三欲神』の一人である貴方が出て来るとは思いませんでしたよ」

「食事は、みんなで、楽しむもの。二人とも、ごめんなさい、する」

「怒りで我を忘れていました、申し訳ございません。皆様もお見苦しいところをお見せしました。謝罪いたします。しかしまぁ、食神様、闘神は気絶してますので謝罪はできないかと」


そう言葉を発する逃神は、謝罪しているとは思えないほど満面の笑みであった。

食神は、自分の右手の下にいる闘神を眺めた。

闘神は顔面がまるまる真っ白な地面とは呼べない何かにしっかりと埋まっており、未だ全身は宙に浮いたままだ。時たまピクピクと痙攣している。

そんな情けない闘神の姿を見て、食神は困惑気に首を傾げた。


「軽く、撫でた、だけ」


そして、首を傾げたまま、まるで確認するかのように取り用によっては煽り文句となる言葉が飛び出した。

まるでおかしな現場を見たかのような、その純粋な疑問の目が眩しい。

げに恐ろしきは、この言葉がなんの悪意もない、本気100%の真実だということだ。


「食神様が力を込めて軽く撫でたらそうなります。むしろ、食神様に軽く以上撫でられたら死を通り越して再生不可能なまでに消滅しますね」


逃神にそう言われ食神が手を離すと、闘神の体がくたーっと下の面へ帰還した。

ここまでくると、自分がやり過ぎたことに気がついたのだろう。

純粋な少女である食神はさーっと顔を青くさせ、目尻に涙を浮かべた。


悪いのは明らかにとうじんコンビではあるのだが、やり過ぎたことに責任を感じているのだろう。

食神様は今にも泣きそうだ!


その場にいたほとんどの神が戦慄した。


食神が大声で鳴き声をあげたら、この場がどうなるか想像できない神はこの場にはいない。


「だ、大丈夫っすよぉ〜食神さん。あいつらが全部悪いんすから。食神さんは気にしなくていいんすよ」

「そうでごわす。あ、これ、我輩の一押しのデザートでごわす。美味しいでごわすよ」

「食神様、あっちで私たちとお話ししましょ。楽しいわよ」


行動力のある神たちは焦って食神をあやしにかかる。

しかし、どうしようか困ったところでみんなに優しくされ、訳が分からなくなった食神は余計涙が出てきた。


(あ……終わった)


大抵の神がこう悟った瞬間、救いの手は差し伸べられる。

いよいよ泣き出す、と思われた時に足音が響いた。

足音がその場に響くということは、その場にまた一人の神が現れた証だ。


「やぁやぁやぁやぁやぁやぁ諸君お出迎えどーもどーもぉ。俺様ちゃんのご登場だよぉ〜。んんー、どしたの、みーんな湿気たツラしちゃってまぁ〜。あ、食神ちゃんアロハワユー。おやおやおやぁ、俺様ちゃんとしばらく会えなくて久々の再開で感涙しちゃった? 元気だった? 泣くなよ〜、ね? ごめんね、謝るからさ。俺様ちゃんちょーっちいそがしくってさーぁー」

「ヘル!」

「ちょいちょいちょいちょーい食神ちゃーん? ヘルじゃなくて、地獄神ねー。流れ名とはいえ、ここで名前はダメだって」

「う、うっかりした、ごめん」


食神がご機嫌になったところを見てホットなる一同。


気にせんでちょーだいよー、とひらひらと手を振るこの場を収めた神もまた、少年の姿であった。

赤黒く、歪みに歪んだ王冠のような物を雑に被り、本来は綺麗であろう銀髪はボサボサに伸びっぱなしでだらしがない。

赤と黒の色合いでバッチリと決めた服装と相まって、普段のだらしなさが垣間見えていた。

そんな少年、地獄神はいつも持ち歩いている辞書のような本でペシペシと食神の頭を叩いては頰を歪ませて快活に笑った。


「みんなみんなみんな〜、祝いの席よぉ〜、飲んで笑って歌っちゃって〜。楽しくやろうよた〜の〜し〜く〜さ〜ぁ〜」


地獄人が来たことで緊張がほぐれたのか、最初は少しぎこちなかったが、直ぐに楽しそうな声が上がり始めた。


「うんうんうんうーん。これよこれこれこれぇ。辛気臭い顔してたらさぁ、酒がまずくなっちゃうからねぇ。明日からはお互いに敵同士なんだから、どうせなら楽しくやろうよ〜」

「ヘル、じゃない、地獄神、向こうの、美味しい」

「お、食神ちゃんのエスコートォ? 嬉しいねぇ。最高神ちゃんが来るまではせいぜい楽しもうじゃないのぉ。久しぶりに会う奴も多いしなぁ。ま、天の字には会わなくても構わないんだけどさぁ」


地獄神の先ほどとは違いトーンを落として不機嫌をあわらにする言葉を聞いて、食神が疑問を発した。


「天空神のこと?」

「イエスイエス〜。俺様ちゃんと並んでるって勘違いしちゃってる可哀想な奴だからさ〜、その顔を見るたびに哀れんじゃうんだぁ俺様ちゃん。ま、ただの下半神の話なんてくだらないことは放っておいて遊ぼうよ食神ちゃーん」

「うん、これ、美味しい」

「おほっ、ホントじゃん。いいねいいねー。食神ちゃんのチョイスは相変わらず完っ璧だなー」


よかった、と満面の笑顔を作る食神。


そこで、重く重厚感があり、それでいて神々しいまでの扉が開く音が何処までも響いた。

その場に集まった神達の実に全員が、各々反応は違うにせよ、初めてなんらかの反応を見せた瞬間であった。


扉の音は何処までもこだまし、最後の最後の扉が閉まる音の余韻をゆっくりと楽しんでから、ブゥウゥウンという機械音とともに空間の空中に大きなビデオ映像のようなものが流れ出す。


そのビデオ映像には、キッチリと白と黄色の礼服を着こなし、キラキラと光る金髪をなびかせた青年が写っていた。

その姿を見て、ほとんどの神が困惑する。


「おろ? なんで、天の字がいやがるんだ?」


その言葉は神々の思いを代弁したもの。

その映像に本来映るべきは、初代時空神、現最高神である。

しかしそこに映っているのは、最高神ではなく、『天空神』だった。


『あーあー、ゴホン、久しぶりだ同胞諸君。まずは多忙の中集まってくれたことに礼を言おう。さて本題に入るのだが、最高神様は現在書置きを置いて逃亡なさった。頭の痛いことだ。現時空神が時空の彼方にて捜索を続けているのだがいかんせん結果は振るわず、未だ見つかってはいない。最高神様が残していった書置きの中に、自分の代わりに読めという紙が置いてあったので、私が代弁することとなった。宜しく頼む』


そう言って頭を下げる天空神。

少なくない女神が黄色い声をあげた。


『さて、では読むこととしよう。えー、『みんなー、元気? あれれ? まだ全員集まってないみたいだけど、じゃああと10秒待つね』う、ん? ま、まあいい。10秒だな。よし」


天空神に似つかわしくない言葉遣いに女神の黄色い声が増殖した。

こんな言葉すら真面目に朗読する天空神の真面目さが見えるのだが、地獄神は口を押さえ「うっぷ」と言っている。


「大丈夫? 地獄神」

「平気平気ー。あいつきもいわー」


かっちかっちと時計の音がなり、ちょうど10秒後、新しい神の足音が響いた。


「あら、もう始まってますね。遅れて申し訳ありません」

「だから僕はダメだって言ったのに。姉さんのせいだ」


神全員の視線を受けぺこりの丁寧にお辞儀をした女性と、その隣で悪態を吐く少年。

その姿を見て、まっさきに地獄神が反応した。


「死神さん! ひっさしぶりだねぇ〜。元気してた。会いたかったよぉ〜俺様ちゃーん」


現れた『死神』の二人に目を輝かせ挨拶をして、二人に歩み寄っていく地獄神。


「お久しぶりですね、地獄神。私たちのことは前のように、デス。プロウズ。と呼んでいただいて構いませんよ?」

「んじゃあ遠慮なくぅ、久しぶりプロウズさん」


地獄神は満面の笑顔で死神の女性と握手を交わした。

そんな地獄神をみて、ずっとそばに付き添っていた食神がぷくりと面白くなさそうに頰を膨らました。


『さて、続きだ『全員揃ったみたいだね。じゃあ、そろそろ挨拶をしよっか。ようやく、今日で子供達は候補が取れ、正真正銘の『神の子』となる時が来た。全員が選ばれた神の後継者。最後まで生き残った者は晴れて次代の『神』へと昇華し、その子の親である神は次代の『最高神』となる。今日は彼らがいた世界、地球にある島国日本の暦でいうと、6月6日にあたるんだ。ま、なんで日本かっていうと、僕がゲームとして広めた最初の国だからなんだけどね。まぁそんなことはどうでもいいね。さて、みんな各自、自分の子に神託(メッセージ)を送る準備は整っているかな? じゃあ、宣言と行こうか』」


そこで最高神は一度言葉を切り、大きく息を吸ってから、最後の言葉を紡いだ。


「『戦え、奪え、欺け、出し抜け、活かせ、目指せ、求め、進め、神々の宣告(ルール)に背かなければ何をしても構わない。最高神へとのし上がれ。今日これより『神々の盤上(ハルマゲドン)』を開始する』」



おや、神々の様子が……


おやおや、地獄神の名前……

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