かわいいは強さ
「さ、配信をするよ」
ウィが突然言った。
「山下も出て」
「え?」
「ウィが知的生物を連れて帰還したことを知らせなきゃ」
「ちょっと待って」
山下は自分の服を見た。
タイタンからここまでの移動で、ウィの手荒な運転によって服は汚れている。
「この状態で五百万人に『やあ、初めまして!』なんて言ったら、気持ち悪がられてしまうよ」
「大丈夫」
ウィは即答した。
「あなたはとても奇妙で、絶妙に気持ち悪い形だわ」
「褒めてないよね?」
「褒めてるわ」
「絶対違う」
「ほら、始まるよ」
「待って――」
「みんなー!」
ウィが今までに見たことないほどパックリと口を開けた。
「暇してるー?」
画面の右から左へ、大量のコメントが流れ始める。
――ウィウィが帰還した!!
――宴だ!
――ウィウィやっぱかわいすぎる
――あぁ眼福
――生きててよかった
山下は画面を見つめた。
こういうのは、どの星も変わらないらしい。
「なんと!」
ウィが叫ぶ。
「地球人との接触に成功したわ!」
コメントがさらに増える。
「山下なら、この星を救ってくれるかもしれない!」
「ちょっと待って」
「というか、もう救ってくれたも同然よ!」
「待ってくれ」
「山下は神様だと言っていたわ!」
「言ってない!」
「もう暗黒時代は終わり!」
「終わってない!」
「みんな、もう反省は十分したわ!」
「本当に十分なのか?」
「俯く必要は無い!」
ウィはさらに口を大きく開いた。
「これからは笑って!」
配信が終了した。
山下はウィを見る。
「ちょっと言い過ぎたんじゃない?」
「これくらいしないと」
「僕は神様なんて自分で言ってないよ」
「知ってるわ」
「しかも随分と明るくなったな」
「ウィにはファンがいっぱいいるからね」
ウィは言った。
「ウィが悲しめば、みんな悲しむし」
「うん」
「ウィが死ねば、みんな死ぬわ」
「なんで?」
「ウィが希望だから」
山下は黙った。
「これは自惚れとかじゃなくて事実よ」
「なんでそんな君が、リスクを背負って惑星探査に出たんだ?」
山下は尋ねた。
「死んだら駄目なんだろう?」
「私たちにとって、かわいいとは強さのことなの」
「なるほど」
「そして当たり前だけど、かわいいは手段でしかない」
「地上の人たちはみんな家族のように大切よ」
そして少し間を置く。
「でも、ウィだって生きてるんだから」
ウィは山下を見た。
「ウィにはウィなりの暇つぶしの仕方があるわ」




