SOS
「そんなことより、山下」
ウィが二体の身体をこちらに向けなおした。
「山下の星に植物はいるかしら?」
「植物?」
「地球の色を見る限り、いなそうだけれど…」
「いるよ。たくさん」
「本当に?」
「うん」
「やっぱりそうなのね!」
ウィの声が少し大きくなる。
「その望みにかけて、私たちは地球に接近したの」
「どうして?」
「トラピスト1eの植物は、絶滅してしまったから」
山下は黙った。
「私たち自身が起こした戦争によって」
ウィは続けた。
「植物がなくなって、生態系が壊れた。呼吸に必要なルポルム濃度も低下した」
山下はウィを見る。
「今のトラピスト1eは、とてもじゃないけれど住める環境じゃないわ」
「人口は?」
「年々、出生率が低下している。今は二千万人ってところ」
ウィはまた口を開けた。
しかし今度は、あまりに小さかった。
「ねえ、山下」
「うん」
「はるか遠くの小さな星で生命がこのまま自滅したとしても、山下には何も関係がないでしょう?」
「……」
「宇宙の生態系のピラミッドが、ぐらりと揺れるわけでもない」
ウィは山下を見つめた。
「だからウィたち1e人にできることなら、なんでもするわ」
少し考えてから、
「もう一回フュージョンをやってあげてもいい」
「別にそんなのやらなくたって、僕にできることなら協力するよ」
山下は笑った。
「僕らにまったく関係がないわけじゃない」
「そう?」
「むしろ、地球人にとって君たちは初めて接触した地球外生命体だ」
山下の目が輝いた。
「人類の謎、生命の謎、宇宙の謎。全部の謎を解く大チャンスなんだ」
「なるほど」
「協力する代わりに、全部記録させてもらうよ」
「全部?」
「できる限り」
山下は二体を見た。
「それにウィ、僕らは同じ銀河系の生命なんだ」
山下は言った。
「この無限に広がる宇宙単位で見てみれば、きっと家族だよ」
ウィはしばらく黙った。
「山下」
「何?」
「あなたは神様なの?」
「違うよ」
山下は答えた。
「僕は人間だ、そして君の家族だ」
「お兄ちゃん!」
「やめだ」
山下は即答した。
「それはあまり良くない感じがする」
「分かったわ」
ウィは大きな口を、またぱかっと開けて笑った
「一回、トラピスト1eに来てくれないかしら?」
「何か見せたいものでもあるの?」
「そう」
ウィは宇宙船を指差した。
「見せたいものがあるの」




