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長生の奏曲  作者: 闕恆遠


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第1章:2.5 上官婉の秘密の祭祀

大邑商の午後は、版築はんちくの土壁さえも干からびさせてひび割れさせかねないほど、強烈な陽光が照りつけていた。


だが、上官婉の寝居の内部は、胸がざわめくほどのひんやりとした陰に包まれていた。


室内には濃厚で、どこか苦味を帯びた神秘的な香気が漂っている。それは南方の荊楚けいその地から献上された奇草であり、動物の油脂と共に青銅の香炉の中でゆっくりとくすぶっていた。


上半身を裸にし、腰に獣皮をまとっただけの屈強な奴隷たちが数人、うつむきながら大きな素焼きの壺に冷たい井戸水を懸命に注ぎ込んでいる。


上官婉はすべての男性奴隷を下がらせ、側近である二人の口のきけない女中だけをそばに残した。


彼女は腰に巻いていた、小さな貝殻が埋め込まれた革の帯をゆっくりと解いた。粗い麻の長衣がその曲線に沿って泥の床へと滑り落ち、トラの毛皮が敷かれた床の上に重なり合って、微かな衣擦れの音を立てる。


薄暗い灯火に照らし出された彼女の肉体は、健康的な小麦色を帯びていた。悦清禾のように白くか弱いわけではなく、野性味に満ちあふれ、生気あふれる張りをたたえている。


背中には、一族の長老たちとの権力闘争の最中、祭祀用の長鞭に誤ってかすめられたごく細い赤い痕がうっすらと残っていた。


彼女にとって、こうした傷跡は恥辱などではなく、名誉の勲章にほかならない。


夫が羌方きょうほうとの国境で戦死して以来、


この封地の母屋は、彼女にとって唯一の砦であり、同時に彼女の野生の渇望を閉じ込める檻とも化していた。


彼女は、分厚い麻の垂れ幕で幾重にも覆われたその浴室の中に、一人でたたずんでいた。


そこには窓がなく、土壁の窪みに嵌め込まれたいくつかの油灯が、豆粒ほどの頼りない明かりを揺らめかせているだけであった。


その光が、商代の貴族階級にあっても抜きん出て端正な彼女の顔立ちを浮かび上がらせる。


上官婉は裸足を冷やりとした石畳に浸しながら、部屋の中央に置かれた巨大な素焼きの浴槽へと歩み寄った。


冷たい陶のかめに足を踏み入れると、井戸水が彼女の胸元までを優しく包み込んだ。


浴槽には深い井戸から汲み上げられたばかりの清らかな水が満たされ、水面には真紅の、名前も知らない野の花びらがいくつか浮かんでいる。


それは、孤独な自身の肉体を清めるために、彼女が自ら念入りに用意した儀式のためのものだった。


彼女は指先を伸ばし、水面をそっと撫でた。その冷たい感触に、思わず身震いがひとつこみ上げる。


権力闘争の中で凍りつき、こわばっていったこの肉体は、こうした誰もいない時間だけが、温度に対する渇望を正直にさらけ出すことを許してくれる。


彼女は浴槽にまたがり、泉水が腰のあたりまで満ちるのに身を任せた。その瞬間の息が詰まるような冷たさに、


上官婉は微かなため息を漏らした。


目を閉じると、脳裏にはあの男の顔がどうしてもちらついて離れない――闕恆遠の姿が。


その冷徹で、どこか傲慢さすら漂わせる眼差しは、彼女が日頃から目にする、下品で汗と血の臭いにまみれた商代の将領たちとは全く異なっていた。


それ以上に強烈だったのは、彼が手にしていた、光を放つあの「神鏡」だ。


「神使様……」


彼女は小さく呟き、水中で濡れた自分の肌を指先で無意識になぞった。


両手で一掬いの清水をすくい上げ、白く引き締まった肩へと浴びせかける。水滴が鎖骨を伝い落ち、薄暗い水面へと消えていった。


その肌ざわりは、午後、闕恆遠が悦清禾を支えていたときに見せた、その手のひらから伝わるような重厚な力強さを彼女に思い出させた。


下腹部に、これまでにない見知らぬ熱照りが込み上げてくる。


夫を亡くして三年になる未亡人の領主として、彼女は深夜にひとり、肉体の虚しさと向き合うことには慣れていた。


だが今回は、その空虚さに神の力に対する渇望が混ざり合っていた。


もしあの男を自分の寝所に引き止めることができたなら。もし彼のもつ不老不死の血を分かち合うことができたなら。上官家族は一体どれほどの高みにまで上り詰められるだろうか。


口のきけない女中が歩み寄り、細かくすり潰された貝殻の粉に花の汁を混ぜたものを、上官婉の肩や胸元へと優しく塗りつけていく。


それは極めて私的な「祭祀」だった。


彼女は自身の野心を祭るのと同時に、長年干からびたままだった情欲をもその祭壇に捧げていた。


大邑商において、権力は常に肉体と結びついている。


大邑商において、女は財産であり、生贄であり、そして取引の駒にすぎない。


だが、上官婉はそのような運命に甘んじる気など毛頭なかった。彼女が欲しいのは、もっと先のものだ。


生と死を超越した、あの天火の光のような奇跡が欲しかった。


彼女の指先は無意識に自らの太ももの内側をまさぐる。それは権力への狂おしい執着であり、未知なる「神蹟」に対する肉体的な応答でもあった。


外から突然、重く響く太鼓の音が聞こえてきた。祭壇のほうだ。大祭司がまた新たな生贄を求めているのだ。上官婉はカッと目を見開き、その瞳に鋭く凶暴な光を走らせた。


彼女には分かっていた。


あの五人の異邦人たちを完全に手中に収めるためには、物資の貸し借りや表面上の取り引きだけでは到底足りないということが。


もし彼女が彼らを自らの統制下に置けなければ。


次に祭壇へと突き出されるのは、他でもない上官一族の最後の血脈かもしれないのだ。


彼女は立ち上がり、肌を伝う水滴をそのままに揺らめく灯火の中へと身をさらした。


壁に映し出された彼女の影は、大きく歪みながら引き延ばされ、まるでまさに獲物を狩らんとする一羽の孤高の鳳凰のようだった。


彼女は自分自身が、この荒涼とした時代において彼らにとって唯一の精神的支えにならなければならないと心に誓っていた。


さらには……欲望の終着点そのものに。


上官婉は水の中から立ち上がり、引き締まった身体のラインに沿って水滴が滑り落ちていく。


彼女は極めて粗く磨き上げられた青銅の鏡に映る自分を見つめ、その瞳の色を次第に冷徹で揺るぎないものへと変えていった。


彼女はあの娘たちの「作法」を学び、そして自身の「掟」をもってあの男を飼い慣らすつもりだった。


「使者様……」


彼女は小さく呟いた。その声はだだっ広い浴室の中に反響し、どこか聴く者の心を惑わせるような、熱を帯びたねっとりとした響きを纏っていた。


「私があなた方に捧げましょう、この世で最も極致の忠誠を」


「ただ私を、」


「あの永遠の白い光の中へと連れていってくださるならば」


井戸水の冷たさが、肌の表面に細かな戦慄を呼び起こしていた。


上官婉は重厚な素焼きの浴槽の縁に寄りかかり、二人の口のきけない女中が柔らかい上質な亜麻布で自分の鎖骨に残る水滴をそっと拭い去るのに身を任せていた。


この寝居は、生前に夫が自ら監督して造らせたものだった。


壁は藁と粘土を混ぜて固めた版築であり、真夏の最も容赦のない熱気を遮ることはできても、彼女の胸の奥底で燃え盛る業火のような焦燥感を遮ることはできない。


彼女は伏し目がちに水面に映る自分を見つめた。それは盛年を迎えながらも、権力と未亡人に課せられた戒律によって重く縛り上げられた肉体だった。


大邑商の女は、身分がどれほど高貴であろうとも、本質的には子孫を繁衍はんえんさせるための道具か、あるいは祭壇に供える生贄にすぎない。


だが、闕恆遠を目にして以来、そして雲の上から墜ちてきたかのような四人の娘たちを見て以来、


彼女はこの肉体に新たな使い道があることを悟っていた。


口のきけない女中の指先が、特製の獣脂香膏を含み、上官婉の豊かな胸元で円を描くように滑らせる。


その滑らかで体温を帯びた感触に、上官婉の息づかいがわずかに荒くなった。


彼女は目を閉じた。


その快感を、頭の片隅に焼きついた灰色の長衣をまとった男の姿に重ね合わせようとする。


もし、いま自分の肌を押しているのが卑しい奴隷ではなく、


異界の息吹をまとい、


人々の心を看破するような鋭い瞳を持つ男であったなら。神威と雄としての侵略性が入り交じったその圧迫感は、いったいどれほどのものだろうか。


彼女の下腹部がかすかに引き締まった。


水面の下で、湿った熱を帯びた渇望が密かに広がりゆく。


それは女領主として三年の歳月を過ごした彼女にとって、最も偽りのない身体の反応だった。


彼女は突然女中の手を押し退け、貝殻の粉と花蜜が満たされた玉の瓶を奪い取り、自らの手で太腿の内側へと塗りたくった。


その手つきは粗暴だったが、そこにはどこか自暴自棄な快感が伴っている。


彼女はこの野蛮な時代を憎み、青銅の戈を振り回すことしか頭にない男たちを心の底から疎ましく思っていた。


だが、その憎しみの裏側には、あの「白い光」に対する狂おしいまでの執着が渦巻いていた。


この肉体を差し出すことで、あの「永遠の世界」へと通じる扉を開くことができるなら。


彼女は、自分がこの五人にとっての最も卑しい玩具に成り下がることも、


あるいはあの灰色の男の愛妾あいしょうになることも、いとわなかった。


やがて朽ち果て、黄土に還るだけの運命から逃れられるのならば、彼女はすべての誇りを投げ捨てる覚悟があった。


「大祭司め……」


彼女は歯を食いしばり、その言葉を歯の隙間から絞り出した。


あの老いた狐どもは、すでに神蹟の匂いを嗅ぎつけ、この小さな封地を血眼になって狙っているに違いなかった。どうすればあの「魂を奪う神鏡」を奪い取れるのか、企てている最中なのだろう。


そんなことを、彼女が許すはずがなかった。


上官世家は、神使がこの大地に下り立った唯一の代理人でなければならない。彼女は再び素焼きの浴槽から跨ぎ出た。


今度は、


粗末な麻布の衣ではなく、一歩も引かぬ決意を胸に、傍らに掛けられていた至宝の絹布で作られた私服へと身を包んだ。その滑らかな布地が、まだ乾ききっていない肌を擦り、言い知れぬ快感の波を次々と引き起こしていく。


青銅の鏡に映る自分を見据える彼女の切れ長の瞳には、ただの権力欲だけではなく、まさに獲物を狩りとらんとする猛々しい興奮の炎が煌々と燃え盛っていた。


彼女は身を翻し、震え上がる二人の口のきけない女中に向かって、口を閉ざすよう命じるしぐさを見せた。


大邑商において、秘密を守ることは生き残るための唯一の法則である。


そして彼女がこれから守り抜くのは、この世界で最も高価な秘密であり、同時に最も人を狂わせる甘美な毒薬だった。


「使者様……」


彼女はその言葉を心の中でそっと反芻はんすうする。


ねっとりと響くその音節が舌の上で転がり、まるでその男の肉体が持つ、この世のものとは思えない芳醇な香りをすでに味わい尽くしているかのような錯覚にとらわれていた。

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