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僕は5歳になった。3歳になるフレイヤはまるで雛鳥のように僕の後をついてくる。その様はとても可愛らしい。
可愛いく愛しい僕の宝物。お母様の変わりは出来なくても、寂しい思いをさせないように。
「おにいさま」
「どうした?フレイヤ。」
「あの、ほんをよんでほしいです。」
「いいよ。すぐ終らせるから、待っていてくれるかい?」
「はい!すぐですよ。」
「うん。」
フレイヤは小さな手足でテトテトと歩いている。
「可愛い。僕の弟世界一。」
「親バカか。心の声漏れてますよ。」
パシリと頭を叩いて来たのはムト。ブラウンの髪と瞳の同年代にしてはなかなか大きい体格。
本名をムトリエル・ライ・リーデンと言い、リーデン子爵家の三男で僕の護衛兼執事をしている。リーデン家は有数の騎士でその中でも特にレベルが高いのがムトだ。
僕達は5歳になり、ある程度の量の勉強が始まっている。いつも、フレイヤといる時間が少しでも長くするために、勉強を早く終らせているが、呼ばれているからには今すぐ終らせなければ。そして、フレイヤと至福の時間を過ごすのだ。
「あなたは相変わらずフレイヤ様中心ですね。」
「当たり前だろう?フレイヤは天使だからな。可愛いだろう?あの小さな足で一生懸命ついてくる様子がもう抱きつきたくなる。ああ、家の子可愛い。」
「アホなこと言ってないでさっさと行きますよ。フレイヤ様が待ってるんでしょう?」
「うん。」
ムトは僕がフレイヤ溺愛していることに文句を言うが、ムトも結構フレイヤと一緒にいるところを見る。でも、何故か2人で内緒話をするため、ちょっぴり寂しい。
図書室に行くと窓際にある机に座るフレイヤがいた。綺麗な金髪にキラキラと輝く光が見える。
今日は『風』かな。
「フレイヤ。」
名前を呼ぶと嬉しそうな瞳がこちらを向いた。
「おにいさま」
「待たせてしまったね。今日は何が読みたいの?」
「はい。おにいさまの言っていたせいれいについて知りたいです。」
「精霊か。分かったよ。ちょっと待ってて」
僕は精霊について書かれた本棚を探す。
この世界は5つの層に分かれている。第一層には精霊、聖獣と呼ばれる存在。この層を聖界と呼ばれている。
第二層は天界、第三層は魔界、第四層混合界がある。僕達がいるのは混合界で人は人間界と読んでいる。天界は聖魔法を使う者の住む界層、魔界は魔力の多い者達の住む界層。
そして、第五層は死海と呼ばれている。そこには番人と大罪をおかした者しかいない。死ぬことが許されず、生きたまま痛め付けられる所。ちなみに結構な割合で人が落ちる。
まあ、人は狂いやすいから仕方ない。数年したら死ぬことが出来るからちょっとした罰程度だ。
本当に大罪をおかしたものがどうなるかは、正確には分かっていない。
そして、界層を行き来することを界渡りや召喚と呼ばれている。界層は下に降りることは出来ても、下の界層の者が上に行くことは滅多に出来ない。例外もあるため絶対ではない。
そのため、人は上に行くことは出来ない。けれど、聖獣を召喚し、聖獣と共に聖界を行き来することが出来るため、皆ある程度の年になると召喚の儀式をする。聖獣と契約出来るのは数百年に一度と言われているが。
そのため、召喚した獣が魔獣でも、契約した者同士なら互いの力を使うことが出来るため、パートナーを探す為の儀式と認識されている。
この世界は地球と違って生きるのが難しい。それは狂魔獣や低魔獣と呼ばれる自我を持たない魔獣が動物や人を襲うためだ。その他にも貴族はステータスとして高位魔獣の召喚を試みる。
閑話休題
それとは別に精霊魔法というのが存在する。精霊は気に入った者としか契約せず、気まぐれな為精霊魔法師の存在は限りなく低い。そのため、過去に記録された精霊魔法師の物語が人気なのだ。
精霊という存在は特殊な存在で普通の人間は見ることさえ出来ない。けれど、まれに精霊が見える者がいる。そういった人達が、運が良ければ精霊魔法師になることが出来るのだ。王国は大抵精霊魔法師の数を競う。それほどに精霊魔法師という存在は重宝されている。
けれど、僕は精霊魔法師が嫌いだ。全てではないが自分よりも弱い下級精霊を服従させている魔法師が嫌いだ。
僕は生まれた頃から精霊が見える。それはとても珍しいらしく、お父様には口止めされているが、誰もいない所では色々な話を聞く。彼らは自由で気ままな存在だ。
けれど、あまり力のない精霊魔法師は大抵下級精霊を魔法で縛るように服従させている。そして身を削られた精霊は徐々に消耗していき、最後には消滅する。
何故見えているのにそんな酷いことが出来るのか僕には分からない。精霊達も嘆いていた。
精霊を服従する以外の契約方法があるにも関わらず、服従させるのは、精霊に好かれないから。そうまでして精霊魔法師になりたいのかと。
過去、名を馳せた精霊魔法師は互いを尊重させた、対等な関係だったはず。にも関わらず何故こんなにも精霊をないがしろにすることが出来るのか。そんなことがこれからも続けば人は精霊に消されてしまうというのに。
高位層からの大きな干渉は下位層を破壊することなど他愛もないのに。人は勘違いしている。自分達がとてもちっぽけな存在だと。
僕はフレイヤに精霊や聖獣の物語を読み聞かせた。昼下がり、膝で眠ったフレイヤの髪を撫でながら、髪につく聖獣の毛をはらう。
フレイヤ。僕は精霊に好かれやすい。そして、君はお父様に似て聖獣に好かれやすい。だからこそ僕達は、いろんなものに狙われる。
相手を良くみて。聖獣に心を開き過ぎないで。
でないと、意識を乗っ取られてしまうから。
強い意思を持って。フレイヤ。




