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昼の光 13

  白い光の中で須佐くんが笑っている。

  音は聞こえないのに、表情で笑っているのが分かる。

 その須佐くんのもとにひとりの女の子が走っていく。白いワンピースに大きなひまわりの絵が描かれ、走るたびにすそがゆれて踊っているように見える。まるで水に浮かぶ金魚のようにふわふわと泳いでいるようにも見える走り方。

  須佐くんは屈んで両手を女の子の方に広げている。女の子は当たり前のように、少しの疑いもないように須佐くんの胸に飛び込んだ。

  須佐くんはくしゃりと頭を撫でて、飛び込んできた女の子を抱え上げている。


  女の子が振り返る。

  口がまるく開いて。


  あーあ…?



「…佳奈、起きろ」

「ん…」

「こんなとこで寝るな」

「ふぇ…」

 重たいまぶたをあけると呆れたような須佐くんの顔があった。

 ゆっくりとあたりを見渡す。見慣れたリビング。ああ、うとうととしていてソファーに横になっていたんだ。

「なんだか眠くて」

「寝るなら向こうで寝ろ」

 長い長い夢を見ていた。なんだろう。温かいもので心の中が満たされている。

「うん、そうだね。でもだいじょうぶ」

 ゆっくりと体を起こすとようやく頭がはっきりしてきた。

「しんどいなら、やめるか」

 須佐くんの心配そうな顔を見て、首を大きく横に振る。ゆっくりとおなかを触る。

「ううん。行こう。行きたい」

「けどな…」

「だってようやく仲良くできるんだよ」

「……」

 先日須佐くんの実家に電話をして、赤ちゃんがいることを報告した。そしたら「一度家に来なさい」と。

 須佐くんは嫌そうな顔をしたけど、ここで行くことは、須佐くんと須佐くんの家の仲がよくなると思っている。

「須佐くんもいつまでも反抗期じゃだめだよ」

「お前…」

 しっかり親孝行しないと。生きているうちに。


「ねえ須佐くん」

「あ?」

「ありがとう、ね」

 わけが分からない、といった顔をしている須佐くん。

 優しくしてくれてありがとう。

 選んでくれてありがとう。

 支えてくれてありがとう。

 こんなわたしを受け入れてくれてありがとう。

「さあ、行こう」


 これからどんな困難があるのだろう。

 けれどひとりじゃない。隣にはわたしの大すきなひとがいる。

 ふたりだったらきっと辛いことも半分だね。うれしいことは二倍だね。

 こうして手をぎゅっと握って、それでも不安なら。

 たくさん話をしていこう。

 いつか記憶がもどっても。もしいまのわたしがいなくなっても。

 須佐くんがすきなのはかわらないから。

 さあ。これからは三人でいろんな思い出を作っていこう。



 ノブに手をかけぐっと前に押し、昼の眩しい光に眼を細めた。


ここまで読んでくださってありがとうございました。

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