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胸の奥から何か熱いものが込み上げてくる。
誰かの言葉でこれほど心を揺さぶられたのは初めてだった。
「それと、君にこれを渡しておく」
王子は続けて、私の前に先ほどセスから受け取っていた高価そうな箱を私の前に置いた。
「これは?」
私は首を傾げながら、目の前に置かれた箱を見つめる。近くで見れば見るほど、細部まで美しい見事な箱だった。
…………こんなものどこに保管しておけばいいの。うちの家には合わなさすぎるよ。
「中を開けてみろ」
王子の言葉に私は素直に従った。
ゆっくりと両手を箱に伸ばして、丁寧に開ける。
――王家秘蔵書庫への立ち入りへの許可証だ。
私は一目見てそれがどういうものか分かった。王家秘蔵書庫に関しては知識だけはある。ほんの限られた僅かな者しか入れない。
この国の頭脳と言われている学者貴族か、王族のみ。
王族以外の者は特別な許可証を持っている。
六角形の掌に収まるほどの大きさ、少し厚みのある金属製、表面には王家の紋章が精巧に刻み込まれていた。
六角形にはちゃんと意味がある。
英知・探究・発想・洞察・決断・責任。
この六つの資質を持つ者が王家秘蔵書庫への立ち入りを許される。
知を蓄えるだけでは意味がない。未知を求め、それを疑い、己の頭で考え、新たな答えを生み出す。
そして最後には、得た知識がもたらす結果に責任を負わなければならない。
本当にこの許可証、存在したんだ……。
私はそっとその許可証を手に持つ。権威を与えられたような重厚な一枚だ。
胸が高鳴った。興奮を隠しきれない。
…………夢じゃないよね? 本当にこの許可証、私のだよね?
心の中で何度も自問自答しながら、許可証を見つめた。
これほど嬉しい報酬をもらったのは生まれて初めてだった。
「あ、ありがとうございます!」
私はさっと顔を上げて、王子の双眸をしっかりと見る。
ただの一般兵だった私の世界がこれでようやく広がる。本だけでは得られない世界もあるけれど、本から得られる世界もたくさんある。
私は心の底から王子に感謝した。




