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「持ってきてくれたか?」
王子はセスの言葉を無視して、セスの方へと振り向く。セスはすぐさま「はい、こちらに」と王子の手元に精緻な装飾の施された箱が手渡される。煌びやかというよりかは重厚感がある。
うわぁ、高そうな箱……。私なら絶対に持ちたくないよ……。
私は王子に箱が手渡ったところで、さっきから疑問に思っていたことを口にした。
「どうしてそこまでしてくれるのですか?」
「どうして?」
私の質問に王子は不思議そうな表情を浮かべる。
なんだか私がおかしな質問をしたみたいになってしまった。
一呼吸置いて、私はもう一度同じ質問をした。
「私のためにどうしてそこまでしてくれるのですか?」
「当たり前のことをしているだけだ。君を非難するこの世界が間違っている。……本来、聖女は崇拝される立場だ。その基盤を築けなかったのは国を治める王族側の落ち度だ。その穴埋めを今必死にしているところだ」
「殿下は随分と私情も入っていそうですが……」
「うるさい」
王子の言葉にセスがボソッと呟くと、すかさず王子は低い声で短く返した。
……王族側の落ち度。
聖女誕生は異例なことで、確かにこの国は聖女を受け入れる準備ができていなかったと思う。どう扱うべきかも正確に分からないまま、一刻も早く魔族によっての侵攻を防ぐために私は戦場に立たされた。
けれど、まさか王族側から自分たちの落ち度だと言われる日が来るなんて……。
王族と言うよりも王子が凄いのかもしれない。だって、国王は私に「世界を救え」としか言わないもんね。
「父上は頭が切れる方ではない」
わ~~お、辛辣ッ。
まぁ、でも息子という特権で国王への悪口や暴言も無罪放免になるのか。
「だが、馬鹿でもない」
あ、フォローされた。良かったね、国王。
「前の宰相はそれなりに物事を鳥瞰的に見ることができる優秀な者だったんだが、今の宰相はアンチ聖女の思想を持つ浅はかな男だから、父上も聖女に対してどう対処すればいいのかずっと悩んでいたのだと思う。神託を受けた聖女が民からの怒りを買っているんだ。いつ暴動が起きるから分からない。だが、魔族は常に攻め込んでくる」
「……国王陛下、板挟みですね」
「ああ。まぁ、そんなのは聖女を守らない言い訳にならないが……。俺は、ずっと世界を救うことを拒み続けているのに、戦場に立ち続ける女の子が気になって仕方なかったんだ。そして、ようやく聖女に関する全ての決定権を手に入れ、君に会うことができた」
私にとっては突然現れた男性だった。
だけど、私が彼を知るよりずっと前から、彼の心の中には、すでに私がいたんだ。




