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「犬の件はひとまずこちらで対処する。……それで、どうしたんだ?」
あ、初めて会った時の感じ。
私に対しての敵意はなし。威厳ある風貌と気品ある佇まい。……この美しい顔は少し見慣れてきた。
前回の王子は一体何だったんだろう。
「王家秘蔵書庫の閲覧許可とエワット特別自治区に入る許可を頂けたらと……」
「ああ、そうだった。君が今回持ち帰ってきたお土産のインパクトが強すぎてすっかり忘れていた。すまない」
王子はハッと思い出したように目を開く。
そりゃ、遠征でスネークマンと魔族をゲットして持ち帰って来る者なんていないもんね。異例だもんね。
忙しい王子にアポなし訪問をして、報酬をねだっている場合じゃないよね。
ごめんよ、王子。………………………………だけど、やっぱり王家秘蔵書庫は諦めきれなくて。
王子はお茶を注ぎに来た侍女に「セスを呼んできてくれ。『聖女に贈る、例のものを』と言えば伝わる」と伝える。王子の言葉と同時にお茶を注ぎ終えた侍女は「承知いたしました」と丁寧に頭を下げて、この場を離れた。
ティーカップに注ぎ込まれた華やかな香りを堪能しながら、私は紅茶を一口頂いた。
あ~~~美味しい~~~。高貴な味だ~~~。幸せ~~~~。
脳みそがお花畑になる。何も考えられない。この紅茶、人をダメにする成分が入っているでしょ……。
思わず私は紅茶の美味しさに顔を緩めてしまう。
王子はそんな私をどこか愛おしそうに見ていた。それに気づき、私は慌てて表情を元に戻す。
やばい、めっちゃ間抜け顔見られちゃったよ。てか、なんでそんな目で私を見てるの。
急に体が熱くなってくる。
美形男性への耐性っていつになったらつくものなの?
「てっきり、前回聞かせてしまった議会での提案を気にしているのかと……」
前回の議会、提案……?
心臓の鼓動を落ち着けながら、脳みそを気合いで回転させる。
…………聖女責任追及決議案? だったけ。
「あ~~、そんなこともありましたね」
すっかり記憶から消してしまっていた。なんとも私に都合よくできている脳みそだ。
「あれはどうなったのですか?」
「もちろん、あんな愚劣な決議案、審議する価値すらない。却下だよ」
私の質問に笑顔で即答する王子に私はふと思った。
…………まって、今までだって絶対にそんな議案は議会で何度も出ているはず。むしろ、出ないわけがない。
……誰かがずっと消してくれていたとしたら?
私は目の前に座っている麗しい王子を瞬きも忘れ、ただ真っすぐ見つめた。
………………じゃあ、ずっと王子は私を陰から守ってくれていたの?
「今回は結構まずかったでしょう。可決目前で食い止めれたから良かったものの……」
突如、セスの声が聞こえてきて私はそちらの方へと視線を移した。
いつの間に!?
気づけば、王子の近くにセスが立っていた。王子に気を取られていたせいで、セスが近づいて来る気配に全く気付けなかった。




