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依頼の報酬を忘れていたこと。王宮に行かなければならないから、クリフの上に乗せてもらおうとしていること。
それらを説明し終えると、ミミはクリフの方へと冷たい視線を向ける。
「使えない犬」
ボソッと低く言い放ったその言葉に場の空気が一瞬で凍りついた。
今、背筋ゾワッとしたよ? え、ミミってそんな怖い感じだっけ?
数秒後、ミミの一言のおかげで私は無事にクリフの上に乗ることができた。
クリフはミミに何も言い返さず、黙って言うことを聞いた。私もあの視線を向けられたら、言うことを聞くと思う。それぐらい迫力があったもん。
「では、お気をつけて」
「家のこと頼んだよ」
今日はジェフリーが仕事だから、ミミはひとりでお留守番になってしまう。
私の言葉にミミは「はい。お任せください」と嬉しそうに笑みを浮かべた。私に信頼してもらえているということが嬉しいみたい。
私に向ける顔は一生その笑顔だけでお願い!
「あ、後、家のものは何でも好きに食べていいから~!」
クリフが走り出したのと同時に私はミミに向かってそう叫んだ。
ミミは私たちの姿が見えなくなるまで、ずっと手を振ってくれていた。
♢
どうやらクリフは王族の匂いを覚えていたようで、迷子になることなく王宮まで来れてしまった。
……魔族が人間の王族の匂いを覚えてるってよろしくいよね?
いや、そんなことよりも街の皆に私たちの姿を見られた方がまずい?
私は色々な懸念点を抱きながら、王宮の前に立っていた。衛兵が、私が来たことを駆け足で伝えに行ってくれた。
どうやら「聖女」は特別枠みたい。門前払いにならなくて良かった~~。
「聖女様! ご案内します!」
先ほどの衛兵が額に汗を滲ませ、息を切らしながらダッシュでこちらに向かってくる。
急いでいるわけじゃないから、そんなに走らなくてもいいのに……。
それに聖女を様呼びだなんて、なんだか初々しい衛兵ね。私に対する嫌悪も感じない。
こんな人もいるんだぁ……。珍しい。
私は新鮮な気持ちを抱きながら、衛兵に連れられ、王宮へと入った。
♢
「随分と派手にここまで来たようだな」
王子は開口一番にそう言った。
……ぐぅ。
もはや、ぐぅの音だけは出る。
私は今、庭園のガゼボで王子と対面になっている。
今回はセスは不在で、王子と二人っきり。クリフは王宮の外に待機。ブツブツと文句を言っていたが、無視してきた。ここでクリフの不満に付き合っている暇はない。
「……ここまで来る一番早い方法だったので」
私はどうにか言葉を絞り出した。
かなり目立ってしまったけど、クリフに乗ってきた理由としては理にかなっている。
呑気にトコトコ歩いていたら日が暮れてしまうし、王宮からわざわざ馬車を出してもらうのにはまず一報を入れるところから。……どっちも時間の無駄。
私は一刻も早く王家秘蔵書庫に入りたいんだから!!
……という私欲により、私は周りにどう見られるかなどを一切考えずに王宮に来てしまった。それについては少しだけ反省している。
嫌われ者の私が悪目立ちするなんて最悪の展開すぎるのは理解できる。




