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ミミは微動だにせず、ずっと静かに座っている。マントのフードのせいで、どんな顔をしているのかは分からない。
……石像?
ミミのことだから私の邪魔をしないように徹しているのかも。
「それで、さっきはなんて言っていたんだ? 犬語で」
ああ、王子……、これまたクリフの癇に障りそうな一言を……。
予想通りクリフは「ああ?」と顔を顰める。しっかりと王子の煽りに乗ってしまっている。
「質問に答えろ。ケイトに頼んで、また犬に戻してやってもいいのだ。隷属魔法のせいで、彼女には逆らえないのだろう?」
本当になんでも知ってるんだね、王子。
てか、魔族を従えているって噂が流れたら最悪かも……。聖女の悪評に更に火がついちゃう。本当に民衆が暴動しかねないもん。
私、魔族で手一杯だよ……。てか、聖女である私が国民に手を出すわけにはいかないし……。
次々と頭の中で懸念点が浮かび上がっている私の隣でギリッと奥歯を噛み占める音が聞こえた。クリフが凄まじい殺気を放ちながら王子を強く睨んでいた。
王子の言葉に相当腹を立てているみたい……。
元々クリフの得意とする魔法が隷属魔法だもんね。それなのに、他人にその魔法をかけられる側になるなんて、悔しくて仕方がないはず。……私の方が強かったのだから仕方ないよね。
「うっ、ぐ……」
クリフの殺気に耐えられず、セスが後ろで嘔吐し始めた。
「外の空気を吸ってこい」
「す、すみませ……ん」
王子の言葉にセスはフラフラとよろめきながらこの部屋を出て行った。
顔色が真っ青だったなぁ……。これも全てクリフの短気さのせいだ。私はクリフに向かって「本当に犬に戻すよ?」と脅す。
華やかな応接間で、こんな殺気に包まれたままなのは私だって嫌だもん。殺気を経験するのは戦場だけでいい。
『浄化』
レイの魔法で上等な絨毯に広がった吐瀉物が光に包まれ消える。
……この男はクリフの殺気にさえ平気に耐えられんだ。
私が感心しながらレイの方を見ていると、彼と目が合った。レイは私に向かって「お前は殿下との話に集中していろ」と目で語りかけてくる。
「お前はこの女のことが好きなのか? と聞いたんだ」
そして、しれっとクリフは落ち着きを取り戻して、話を始めていた。
集中して話を聞きたくないような内容……。私を巻き込まないでほしい……。というか、魔王の血族と人間の王子の会話がこんなのでいいの?
もっと意義深い会話の方が良くない?




