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「うわ、めっちゃ男」
美形のクリフが現れたのと同時に私は思わずそう口にしてしまった。
しょうがない。さっきまでモフモフのふわふわな大きな犬だったんだもん。突然、ガタイのいい端正な顔を持つ魔族が現れたら誰だって戸惑っちゃうでしょ?
誰よりも早く「当たり前だろ」というレイのツッコミが聞こえてきた。
「あ~~~、これでようやく喋れるぜ」
クリフは解放された喜びの声を出しながら、身体を大きく伸ばす。
…………やっぱり、犬のクリフの方が何億倍もカワイイ。こんなクリフ、撫でたくなんかならないもん。
大きな態度を取るクリフに私はジトっと睨むと、クリフは「なんだよ」と私の方を見る。
「はじめまして」
王子は姿形が突然変わったクリフに戸惑う様子もなく、爽やかな笑みを浮かべる。
セスは後ろで目を丸くしながら、軽く身震いしているというのに……。
それもそのはず。セスは魔族を直接見るのは初めてだろう。しかもこの距離間。恐怖で失神してもおかしくない。魔族との戦場慣れをしていない人は、相当魔力が強いとかじゃないと魔族が放つ圧でその場に立っていられなくなる。
…………王子は魔力もかなりあるし、相応肝が据わっている。
「名はなんという?」
「そういうのは、先に名乗るのが礼儀じゃないですか? 王子様よ」
「殿下に対してなんという口のきき方!」
声を僅かに震わしながらも、セスはクリフに注意をする。
おお、頑張ってるね、セス……!
私が呑気に心の中でセスにエールを送る中、王子は「いい」とセスの怒りを制した。
……どう考えても、クリフの態度が悪すぎるんだけど、いちいち注意していたら話が進まないもんね。王子と平民の会話じゃなくて、王子と魔族との会話だもん。大目に見てあげないとね。
それにクリフの頭の中に「慎ましさ」とか「謙虚さ」って言葉があるとは到底思えない。
クリフの言動が度を越して酷かったら、すぐに犬に戻そう……!!
「俺の名はアヴィン・ドリュー、メグナドル国の第一王子だ」
「随分と偉い方じゃねえか。俺の名はクリフ、魔王の血縁関係の者だ」
まだその自己紹介の仕方するんだ。
魔王とは随分ととお~~~い親戚じゃなかったっけ? ……まぁ、いっか。クリフの名誉のためにも黙っておいてあげよう。
「魔王との?」
セスの眉がピクリと動く。だが、王子はいたって落ち着いていた。
この王子は何をすれば驚くの? 魔王の首を突然持ってきたら流石に驚いてくれる?
私は王子の魔族に対する冷静沈着さを不思議に思いながら、王子とクリフの会話を聞いていた。二人の間には何やら冷たく重い空気が流れていた。
あからさまな殺意があるわけではないのに、緊張感があり、互いへ向ける視線が鋭い。さっきまでの王子とは大違い。今日は色々な側面の王子を見る日だ。
王子はクリフの角へと視線を向けて、小さく呟いた。
「道理で白い角か……」
「お前、白い角の意味を知っているのか?」
「純白の角は魔族の中でも魔王の血を引く一族にのみ現れる特徴だ。お前が魔族の血族であることは本当のようだな」
「お~~~、物知りな王子様じゃねえか」
全く知らなかったよ、私。
そんな知識どこで得るの? 最前線で魔族と戦ってる私が知らないんだよ?
脳内メモに「魔王の血族は白い角」と刻んでおく。
ふと、セスへと視線を向けると、王子とクリフが放つ重圧にセスは額に汗を滲ませていた。平静を装っているけれど、かなりきついだろう。
よくもっている方だと思うよ。そこら辺の兵なら、すぐに失神しているよ。
こうして見ると、レイは相当強い男なのだと実感する。まだまだ耐えられそうだもん。
…………あ、そうだ。ミミは?
私はミミの方へとチラリと見た。




