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今まで依頼を終わらせてこんな風に感謝されたことってあったっけ……?
どれだけ魔族を倒し、戦いで勝利し続けてきても、誰一人として私に感謝の言葉などかけてくれなかった。労いの言葉すらもなく、国民は私を罵った。
感謝は「騎士団」へ向けられ、聖女である私には怒りが向けられる。
「ありがとう」
王子の低い声が私の耳にはっきりと響いた。
視界が滲むのが分かった。
たかが感謝の言葉一つで涙を流すほど、私は涙もろくない。それなのに…………。
王子がゆっくりと頭を上げて、私へと視線を移す。王子は私の顔を見て目を丸くしていた。王子だけじゃない。セスもレイも私の表情を見て驚いていた。
「……わ、たし……あの……」
どうしてこういう時に限って、何も言葉が出てこないの……。
私はまっすぐ王子を見つめたまま、何とか想いを口にした。
「お礼を言われたのは、初めてで……」
敬意のこもった一国の王子からの「ありがとう」は私の心を大きく揺さぶる。
きっと、私はこの言葉をずっと待ち望んでいた。
「人生を聖女という運命に捧げても、誰一人として私に感謝した人なんていなかったから……。だから私の方こそありがとうございます」
私は満面の笑みを王子に向けた。
その場の空気が再び驚きに包まれるのが分かった。私が心の底から嬉しく思っているのが伝わったのだと思う。
…………三人ともフレーズしてしまって、なんだかおもしろい。
「君は……」
暫く沈黙が続き、王子がようやく口を開いた。
「これから先も『聖女』を続ける気なのか?」
私は王子の質問内容に驚き、今度は私が一瞬固まってしまったが、すぐに「はい」と返答する。
聖女は死ぬまでやめられないし……。「聖女を解雇!」っていう神託を受けたりしたら話は別だけど、そんなことは天と地がひっくり返ってもあり得ない。
空気感を変えるために、私は両腕をグッと前に伸ばして、少し姿勢を崩した。セスが私に注意しようとしたが、王子が目で彼を制した。俺たちの会話に一切入って来るな、とその目は言っているように思えた。
……ヒョッ、これが王子の圧。
私ですら、王子の視線に寒気を覚えた。よっぽど私との会話を邪魔されたくなかったんだね。
「ちょっと前まで私に戦いを続けてほしいと思っていたんじゃないんですか?」
私は少し軽い口調で王子にそう聞いた。王子は困ったように笑みを作る。
「君より強い人を他に知らない。世界を守れるのは聖女の君しかいないと思っていた。だから、この国のためにも聖女は戦い続けるしかない。それが聖女の使命なのだと…………。でも、それは間違っていたのかもしれない」
間違っていた……?
それが聖女の使命だもん。王子の言っていることは、なにも間違っていない。




