122
「聖女擁護派の殿下は、かなり議会からの反感を買っているんですよ」
「オースティン」
オースティンがそれ以上話すのを止めるように、王子は彼の名を呼んだ。
……私を擁護しているせいで反感を買ってる?
そう言えば、前回の議会で通りそうになった私の責任を追及する案……、きっと王子が潰してくれたんだ。じゃないと、私は今ここにいれないもん。
私が追放されずにいられるのも王子が議会で戦ってくれているおかげ。……貴族はともかく、民からの印象は悪くなるに決まっている。
「申し訳ございません。ですが、我々も殿下に関しての悪評を聞くのは気分が悪いのです」
本心だろう。私もオースティンの意見には同意する。
まだ聞いたことはないけれど、王子の悪い噂は聞きたくない。気分のいいものではない。……てか、皆不敬罪で首飛ばされるよ?
聖女の悪口はまだしも、相手は王族だよ? この国のトップだからね?
それに私を庇って、王子が批判を浴びていると思うと、心がキュッと痛む。
「悪い噂は人から人へと渡るたびに尾ひれをつけ、やがて真実であるように語られてしまう。この世は悪意に満ちているからな。どうだ? この世界を救いたくなくなったか?」
「最初から救いたくないですよ」
私は王子の言葉に、口の端を上げて答えた。
「聖女が世界を救いたくないと言っているのは本当だったのか」
「私のことはもういいので、中を案内してください」
オースティンが私のことをチェックするのはもう終わりでいい。
本日の主役はエワット特別自治区! 視線を集めるのはこの収容施設みたいなところなの!
……ちょっと悪口みたいになっちゃったかも。まぁ、いっか。区域相手だし。
「では、まず片手を前に出してください」
オースティンの言葉に私たちは全員、手を前に出す。
『彼らに許可を』
オースティンがそう呟いた瞬間、私たちの手の甲の上に何やら青い幾何学模様の紋章が浮かび上がってくる。
この紋章があるってことは、結構高度な結界を張っているはず……。
流石副監査長、なかなかの魔法技術じゃない。
「この門をくぐってすぐに結界が張られております。手の紋章は、その結界を抜けるために必要な許可証です。では、私から離れずについてきてください」
オースティンを筆頭に私たちはエワット特別自治区の中へと足を踏み入れた。
…………なんか嫌な空気感。
薄暗い空気に覆われており、活気が一切感じられない。華やかさもない。けれど、通路は整えられ、建物が無機質に並んでいる。
そこは、私がこれまでの人生で見たことのない不気味な街並みだった。




