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聖女は世界を救わない  作者: 大木戸 いずみ


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 ああ、そうそう、普通ならこの反応だよね。

 最近、聖女だって言っても、皆の反応が割と肯定的だったせいで、すっかり忘れていたよ。私ってば、民からものすごく嫌われているんだった。


「ジェフリー、聖女はお前の姉じゃなかったのか?」

「はい、だから姉です」

「あ、ね……?」


 オースティンはジェフリーの言葉に困惑しながら、私のことを上から下まで疑い深くじろじろと見る。

 ……あ、そっち!? 

 今のは、嫌悪の目じゃなくて、こいつ本当にジェフリーの「姉」なのか? の目!?


「妹じゃなくて?」


 眉をひそめたままオースティンは再びジェフリーにそう聞く。ジェフリーは「はい、姉です」と頷く。

 私を目の前にして失礼だな。……けど、実年齢に見えないことは自覚しているし、もう慣れちゃったよ。 

 

「なるほど。天使と言われている意味がようやく分かったよ」


 オースティンがどこか納得した顔をする。私は「残虐な天使、でしたっけ?」と自嘲気味に口を開く。そんな私に少し間を置いて、オースティンは小さく微笑んだ。


「あんな噂、我々はあてにしていませんよ」

「我々?」

「ここの監査員や騎士団長を務めるものは皆賢く、優秀だ。この世界が誰に守られて、どのように安全が維持されているのかを理解している者たちだ。聖女を非難する無知で下劣な奴はいないと思ってくれたらいい」


 王子が私に分かりやすいように説明してくれる。

 ……じゃあ、レイは例外だったってことか。……だからこそ、私のところに連れてこられたのかも。

 確かに、第二騎士団の団長シャーロットとはよく衝突はするけど、彼女は別に私を蔑んでいるわけじゃないもんね。


「大衆の声が正義とは限りません。英雄の価値が理解されるのはいつだって未来です」


 オースティンは敬意を込めた瞳で私を見る。

 この世界、もっと敵ばかりだと思っていた。……けど、意外と私の立場を理解してくれている者もいるみたい。


「時代が私に追いつくのは随分と先になりそうね」


 私はそう言って、朗らかに笑みを浮かべた。

 大きな声がよく聞こえてくるだけで、それに振り回されてはいけない。真実はまた別に存在することもある。

 

「それに良い噂よりも不穏な噂の方がすぐに広まります。殿下だってそうですよ」


 私は「殿下の噂?」と首を傾げる。

 王子の噂なんて全く知らない。ゴシップとかにめちゃくちゃ疎いんだよね、私。

 この見た目だし、女性問題の噂とか? 

 女性の嫉妬とかでろくでもない噂が流れそうだもん。爽やかな笑みひとつで令嬢を虜にする王子、女たらしにもほどがある、……とか?

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