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「王宮はいいところだろう?」
続けてそう言葉を発した王子に私は一呼吸置いて、答える。
「……ですが、私はまだ殿下に落ちていませんよ?」
王子と話すといつもの私じゃなくなる。それは認める。心が爆発しそうなほどドキドキもしている。
けど、王子に身も心も捧げられるのか、と聞かれても、イエスとは言えない。彼がピンチになれば、私は助けるだろう。だけど、それが「王子」として見ているから助けるのか、「一人の男」として見ているから助けるのか、分からない。
恋だの愛だの、知らないんだもん。
聖女をなめないでほしい。恋愛なんてする暇なんてなかったんだから……!
「手ごわいな。俺が落そうと思った女も、俺に落ちなかった女も君が初めてだ」
そりゃそうだよね。
私は他人事のように、心の中で大きく頷いた。
ご令嬢の中で王子に落ちない女性なんて存在しないんじゃない?
みんな、目をハートにして王子を見つめているに決まってる。社交界とか全く知らないけど、そうなっている状況を簡単に想像できちゃうもん。
最高権力を持つ王族で、容姿端麗、頭脳明晰…………、非の打ち所がない。
「まず、私が貴族にならないといけませんね~~」
無理難題というよりも、不可能に近い。
私と王子は住む世界が違う、と言ったつもりだった。……が、王子はそんな私の言葉を一蹴する。
「そんなことはどうにでもなる。大した問題じゃない」
大した問題だよ……!
私は喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
もういい! 身分の差なんて気にしない。王子が何とかしてくれる!
「じゃあ、全力で落としにきてください」
私は楽しそうに微笑んだ。そんな私を王子は目を見開いて見つめていた。少しして、王子は軽く声を出して笑った。
「お前はいい女だ」
王子は笑いながら、どこか嬉しそうに声を発した。
どこが? とは自分で思ったが、この言葉もまた口に出さないでおくことにした。その言葉に心臓が飛び跳ねた自分がいたからだ。
鼓動がうるさい。
気づけば、私は王子から目を逸らせずにいた。




