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聖女は世界を救わない  作者: 大木戸 いずみ


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 王子の言葉にミミは何も言えなくなる。

 王子も意地悪で言っているわけじゃない。覚醒前のスネークマンは、本当に足手まといになる可能性も充分にある。

「……馬車は何人まで乗れますか?」


 私は口を挟んだ。王子へと視線を移す。


「四人だ」

「なら、ミミを乗せていきましょう」

「いいのか?」

「彼女に社会見学させてあげたいので」

「……分かった」


 少し間を置いて、王子は承諾した。

 ミミは私と王子に向かって深く頭を下げた。彼女は「ありがとうございます!」と威勢のいい声を発する。


「クリフは貴方はお留守番してて」

「ワンワンワンワン (久しぶりにゆっくり寝れるぜ~~)」


 クリフは喜びの声を上げた。

 クリフはエワット特別自治区なんて興味ないもんね。自分勝手な魔族だもんね。

 そりゃ、人間の都合で振り回されるよりも、自分の時間をのんびり過ごす方が良いに決まってる。「仲間外れ」なんて人間に対して思わないだろうし……。 


「少しだけお待ちいただいてもいいでしょうか。準備してまいります」

「ああ」


 王子が許可を与えた瞬間、ジェフリーは軽くお辞儀をして、急いで家へと戻った。きっと、剣などを取りに戻ったのだろう。

 ミミも「私も少し準備してきてもよろしいでしょうか」と口を開き、王子が「どうぞ」と返答する。

 こうして、私たちはいつの間にか二人っきりになっていた。

 クリフは留守番することが決まった瞬間に再び熟睡し始めたから、いないも同然である。

 …………何を話そう。

 

「王家秘蔵書庫はどうだ?」


 私が何も話題を提供できずにいると、王子が先に沈黙を破ってくれた。私は王子の言葉に素直に答える。


「最高です! もう、あの書庫に住みたいぐらい素晴らしい空間です! 全てがキラキラして見えて、夢の中みたいでした!」


 私の弾んだ声を聞いて、王子はきょとんとした表情を浮かべる。そして、次の瞬間、柔らかく口角を上げた。


「なら、もう王宮に住むか?」


 …………王宮に住む? ……私が?


「え? いや、えぇ!?」

「いつでも大歓迎だ」


 頬を染めて戸惑う私に王子は余裕の笑みを浮かべた。

 も~~~~、なんでいつも王子に振り回されてるの! 私! もっとしっかりして!

 私は心の中にいるリトルケイトをぽかぽかと殴る。

 完全に王子のペースに飲み込まれちゃう。恋愛的なスキルは一切持ち合わせていないから、このままだと私の惨敗になるよ……。

 負けるのは嫌だ、と私の闘争心に火が付く。

 何か言い返さないと、と頭をフル回転にする。

 このまま、王子にやられっぱなしなのも悔しいもん。これ以上、私の心を乱さないでほしい。……というか、私も王子の心を乱したいよ!!

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