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聖女は世界を救わない  作者: 大木戸 いずみ


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 ジェフリーに伝えなかったのには、ちゃんと訳がある。

 言い訳をさせて、心の中で。

 だって、ジェフリーに王子に口説かれているかも……なんて言ったら、絶対に痛い姉だと思われるじゃん!? 

 姉さん、頭をどこかでぶつけたんじゃない? とか、なんかやばいものでも食べた? とか、言われるに決まってるもん。

 レイの冷たく細い目が簡単に想像できたから、言わなかっただけ……!!

 

「お前は俺の感情に気付いていただろ?」


 心の中で饒舌になっている間に、王子が口を開いた。


「確信は持てませんでしたが……、存じ上げないわけではなかったです。……姉と共にでかけるほど関係が進展しているとは」

「なんかちょっとだいぶ誤解してるよ、ジェフリー」


 私は戸惑いながら答えるジェフリーに割り込んだ。

 勝手に王子との関係を作らないでほしい。私たちはなんの関係もない。王子と聖女、それ以下でもそれ以上でもない。


「姉さんのために殿下は三日間も予定を空けたんだ。その意味が分かるかい?」

「……セスが発狂」


 気迫に満ちたジェフリーに対して私はボソッとそう返した。ジェフリーは「それはそう」と一呼吸置いて、頷く。


「じゃなくて!」


 ジェフリーの突然の大きな声に私は「まぁ、落ち着いて」と最後の一口のサンドイッチを彼の口に押し込んだ。

 今日の話題は、私と王子じゃなくて、エワット特別自治区!

 ジェフリーはもぐもぐとサンドイッチを食べながら、片手で自分の頭を抱えた。


「どうして殿下はこんな何も分からない鈍感で呑気な姉さんを……」


 めちゃくちゃ失礼すぎない?

 姉さん、聖女だからね。強いからね。弟だからって容赦しないよ? 

 

「あの……発言の許可を頂いてもよろしいでしょうか、殿下」


 突然ミミが口を開いた。

 私たちは一斉に彼女の方へと視線を向ける。ミミはビクッと身体を震わすが、すぐに姿勢を正して、王子の方を真剣に見る。


「なんだ? 言ってみろ」

「私もお供させてください」


 ミミのはっきりとした口調がこの場に響く。彼女は王子の圧倒的な権威を前に怖気づくことなく話を続けた。


「エワット特別自治区に関して、あまりいい噂は聞きません。ケイト様が強い方と言うことは重々承知です。ですが、私はケイト様をお守りしたいんです」


 ミミィ…………、そんなに私のこと…………!!

 感極まりそうな私を見て、クリフが「ワンワンワンワン (忠誠を誓わせないくせに)」と吠える。

 うるさい、クリフ。それとこれとは話が違うの。

 王子は柔らかな笑みを浮かべた。その笑みは、ミミの真っすぐな想いに肯定的なものだった。


「それは頼もしい。だが、君は覚醒前だろう?」

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