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王子は、いつもより落ち着いた、華美ではない服装をしていた。
けれど、当の本人があまりにも眩しいせいで、変装としてはほとんど意味をなしていない。
整った容姿と自然に滲み出る気品のせいで、誰が見ても彼がただ者ではないことは一目で分かっっちゃう。
圧倒的なオーラを消す方法とかないもんね……。
私は王子をまじまじと見ながら、質問した。
「お一人ですか? 護衛は?」
「そこにいる」
王子がジェフリーへと視線を向けた。ジェフリーは咄嗟にお辞儀をする。
あ、そうだ、ジェフリー、今日私たちと同行するんだった。ジェフリーと一緒に仕事するって、もしかしたら初めてかもしれない。
……私はこれを仕事と呼んでいいのか分からないけど。
「それに、もう一人護衛を呼んでいる」
王子の言葉に私は小さく首を傾げた。
「誰ですか?」
「エワット特別自治区に行けば分かる」
レイかな……?
ん~~、でもあの疲労困憊の状態で護衛が務まるとは思わないし……。というか、どうして王子はこんなにも爽やかなの?
お肌はツルツルだし、目の下に隈もない。疲れの色など、顔には少しも浮かんでいなかった。
「あの、そういえばお仕事の方は?」
みんな曰く、『クソ忙しい時期』らしい。王子が私に構っている暇など本来ないはず。
「もちろん終わらせた。明後日ぐらいまでは何もしなくてもいい。どこか出かけるか?」
……………………あぁ、どうしよう。情報量が多くて、一瞬思考停止状態になっていた。
やっぱり終わらせてきたんだ、という納得の気持ちと、本当に同じ人間なの? という驚異の気持ちが混合している。
それに、最後なんて言ってた? どこかに出かけるか? 誰と誰が!? 私と王子!?
平民と王族が? 一緒に? お出かけ?
平民の女の子が王子を街に連れ出して、お忍びデートを楽しむ……なんて物語は現実では存在しないよ。
平民なのに、私はお出かけなんてまともにしたことないし……。王子を新しい世界に導くなんて無理だよ……。
「いつ見ても、素晴らしい百面相だな」
「見世物じゃないんです」
感心するように私を見る王子に私は強い口調で言い返す。王子はどこか楽しそうに軽く笑う。
ジェフリーが私たちの様子を見て、目を丸くする。
「え、殿下が、今、姉さんをデートに誘った?」
……忘れてた。ジェフリーには王子とのことなんにも伝えてなかったんだ。




