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「謝罪はもういらないよ」
レイはゆっくりと頭を上げて、私を真っ直ぐに見つめる。レイの目の下には濃い隈が浮かんでいた。
私は口の端を少し上げて、声を低く落として言葉を発する。
「私に償うことすら許さないから」
「あ……」
レイの表情が罪悪感に覆われる。
……レイの申し訳なさそうな表情も見れたことだし、意地悪するのはこれだけにしておこっか。
「そんな暇があるのなら、王子の負担を少しでも減らしてあげて」
私は顔を綻ばせて、軽い口調に戻した。
レイが疲労困憊するほど忙しいのなら、王子はその倍仕事をこなしているはず。私に罪滅ぼしをしている場合じゃない。
「じゃ、また」
それだけ言って、足を進めた。じっとしたままのレイから少し離れたところで「俺」とレイの声が響いた。私は彼の覇気のある声に反応して思わず振り向く。
レイは真っすぐ私の方を見ていた。強い意志と覚悟を宿した瞳が私を見据えていた。
「お前の役に立つから。殿下の駒となり、聖女の盾になる。それまで、どうか待っていてくれ」
「待たないよ。私も先に進み続けるもの。……だから、追い付いてね」
「……ああ、必ず追い付く」
「楽しみにしてる」
確かなレイの言葉に私は満面の笑みで応えた。レイは目を大きく見開いて私を見ていた。
私は再びスキップでクリフの元へと向かった。
出会った当初、あれほど私に敵意と憎悪を向けていた人とは思えない。レイの心の変化が嬉しかった。
あ~~~! なんだか心地良い気分ッ!
♢
ああ、居心地が悪い。
クリフをかなり待たせてしまったみたい。不機嫌な彼の上に乗って、荒い走り方をされる。
……ねぇ、ちょっと、私じゃなかったら転落死してるよ?
体幹に自身のあるこの私が、ぐわんぐわんと大きく上下に揺さぶられている。
「もう少しゆっくり、安全に走って」と訴えたかったが、あまりの速さに舌を噛まないようにしていだけで精いっぱいだった。
あと少し。家までの我慢。
全く、魔族ってば短気なんだから。




