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「どうしてって、俺のことが憎くてしょうがないだろう? 俺のせいでお前が」
「私、そんなに非道だと思われてるの?」
戸惑うレイに私は思わずフッと笑ってしまう。
私が他人を憎むタイプだったら、今頃民衆たちを絞め殺しているよ。
良かったねぇ、民たち。私が悪逆非道の聖女様じゃなくて。
「あのさ、私は大丈夫だから。レイはレイの人生をしっかりと歩んでね」
自分が聖女を悪く言ったせいで、私が非難の対象になってしまった、なんて思ってほしくない。レイがいなくても、私はきっと皆から非難されていただろうし。
レイに変な重荷を背負わせたくない。
それは「優しさ」からくるものなんかじゃない。ただ、私が私の人生にこれ以上誰かを巻き込みたくないだけ。
私が抱えているものも、これから巡る運命も、全て私一人のもの。誰かに背負わせるつもりなんてない。
「騎士団の奴らは皆、|俺〈・〉じゃなくて、兄を見ていた。……別に俺はそれで良かった。兄のことを心の底から尊敬していたし、好きだった。だけど、だんだん居心地が悪くなってきた。いくら努力しても『流石キールさんの弟だ』なんて言われるんだ。良いことも悪いことも全て兄の存在と結びつけられた。……少しずつ感情が歪んでいき、ストレス発散に聖女の悪口を口にし始めた。聖女を罵るたび、曖昧だった憎悪は次第に形を持ち、ついには殺したいと願うほど確かなものになった。暴言を吐いても、俺は戦力として必要だから、見逃された。……俺は規律を破り、上の者にすら噛みつくようになった」
「…………馬鹿だねぇ、どんどんエスカレートしちゃったんだ」
なぜ騎士団でレイが問題児だったのかを私は初めて知った。まさか本人の口から聞けることになるとは思わなかったけれど。
感情を声に出し、誰かに聞いてもらうことで思想が輪郭を得てしまう。
「馬鹿だった……。ある日、もっと馬鹿なことをしてしまう。口論になった上官を殴り飛ばした。気づいた時には、上官は床に伏し、俺の拳は血で濡れていた……」
あ~あ。もうそれは騎士団解雇決定だ。今まで色々と見逃してくれていたとしても、上官にパンチはアウト。
短気な私ですらしたことないもん。……上官に対してはね。
「限界だったんだ。『キールさんはそんなことをしない』『キールさんはもっと騎士団のことを考えていた』って言われてさ……」
「……それで上官に手を出し、騎士団を抜け出すことになった?」
「ああ」
「こうなったのも全部聖女のせいだって思うことにしたんでしょ。他責した方が楽だもんね」
「……クソで最低なのは聖女ではなくて、俺の方だった。本当にすまなかった」
レイはそう言って、深く頭を下げた。
寝不足のせいなのか、レイの言葉にいつものような棘が一切ない。ただ真摯に私に向き合ってくれているのが分かる。
いつもこれだけ素直だったらいいのに~~。




