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「騎士団は肌に合わなかったんだね」
「どちらかと言うと、あそこは兄の居場所だ」
私の言葉にすぐさまレイは反論する。
あの時の囮部隊の人たちは英雄として称えられているもんね。素晴らしい人材が揃っていたんだもの。……私が猛烈な批判を受けるのもしょうがない。
私は当時のことを思い出し、心がキュッと締め付けられる。
そんな私を察したのか、レイは私を見ながら「俺のことより」と口にした。
「俺はお前にムカついてるんだよ」
私はレイの言葉に「私に?」と眉をひそめる。
「なぜ反論しない? クソみたいな悪評を放っておいていいのか? あんな好き勝手に」
「反論したら、また怒りを買うんだよ」
私はレイの言葉に被せるようにはっきりとそう言った。
それに、今の私が反論したところで誰も聞く耳など持たないだろう。
レイはどこか悔しそうな表情を浮かべ、荒々しい口調で話し始めた。
「遠征から戻ってから、お前の噂を聞くと腹が立つ。少しもあいつのことを知らねえくせにって…………。少し前まで俺もお前の悪口を言っていた側だ。そんな俺に対しても腹が立ってしょうがない。自己嫌悪にまで陥って、過去の大馬鹿な自分を心底恨むほどだ。だから、俺はお前に対してのくだらねえ非難を全て潰したい。聖女はこれほど最強ですげえんだって知ってほしい。お前が反論できないのなら、俺がする」
わぁ、レイの口からそんな言葉が聞けるなんて……。
私は素直に感動した。人はそう簡単に変わらないって言うけれど、変わる人間もいるみたい。
レイの場合は、聖女を忌み嫌っていた過去の自分を全否定しなければならないから相当しんどいだろうけど……。
それでも自分は間違っていたと自覚して、私のために動こうとしてくれているのが嬉しかった。
「レイは変われたけど、皆の考えを変えるのは難しいんじゃないかなぁ。貴方はこれまでずっと私の悪口を言ってきたんでしょ? それなのに、急に私を賛美し始めたら『きっと聖女に洗脳されたんだ』って噂が広まるもん。そう思わない?」
「それは……」
レイは言葉に詰まる。私は更に話を続けた。
「一度口にした言葉は、なかったことにはできない。悪い噂が流れてしまうと、人の目を曇らせちゃうの。一度『悪い人間だ』という印象がしみ込んじゃえば、その後どんな噂が流れようと、人は都合よく悪い意味に受け取るようになる。……レイは騎士団で良くも悪くも目立っていたんでしょ? みんな、貴方の言葉を聞いているもんね」
変わろうとしたくても、周囲がそう簡単に自分を変えさせてくれないことがある。
私の言葉にレイがゆっくりと口を開く。彼の瞳には深い後悔が滲んでいた。
「俺のことが許せねえだろ?」
「どうして?」
レイの重く低い声に私は軽い口調で答え、首を傾げた。




