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「ここで何してんだ?」
私が言葉に詰まっていると、レイが先に口を開いた。
はぁあぁあ、助かった~~~。もうちょっと殺気を抑えてくれないかな?
私は「エワット特別自治区についての本を読んでたの」と答える。レイは「あ~~、明日か」と眉を潜めながらボソッと呟く。
「そのせいでこっちは大変なんだよ……」
続けて発せられたレイの独り言に私は頭を傾げる。
「え、レイも行くの?」
脊髄反射で質問してしまう。
身をすり減らして仕事しているレイに対して、そんなこと聞いちゃダメだったかも……。
レイはため息をついて、私を再度強く睨む。
「はぁぁ、ちげえよ。明日のエワット特別自治区に殿下も同行するって言ってなかったか?」
「あ~~、そういえば言っていた気がする…………ってまさかそれ!?」
私は記憶を辿り王子の発言を思い出す。その直後、ハッとなり大きな声を出してしまう。広々とした廊下に私の声が響いた。
「バケモンだよ、あの殿下。次から次へと舞い込む仕事を片っ端から処理している。あんな超人に俺らが追い付くわけがねえ……」
「どうし」
「どうしてそんなことになってるの? なんて質問するなよ」
「あ、はい」
言おうとしてました、その質問。
レイの圧に押されて、私の言葉はなかったことになった。
「殿下の野郎、お前と一緒にエワット特別自治区に行くために来週の仕事も終わらせてるんだよ。しかも、この忙しい時期の仕事量をな」
私は頭が真っ白になった。
レイが王子に対して「野郎」と発言したことにじゃない。王子がとんでもないスピードでとんでもない量の仕事をこなしていることに……。
……………………え? やばくない?
「えええと、う~~んと、……私、なんて言うのが正解?」
「そんなこと俺に聞くなよ」
混乱する私は思ったことをそのまま口にしてしまう。
「王子、一体何者なの? いや、王子は王子なんだけどさ……。流石に平民の私にそこまでのことする? いや、私のこと惚れてるとかなんだか言ってたけど……、身分が違いすぎるし……」
「ごにょごにょうるせえな。あの人、お前に本気なんだよ。……俺が聖女嫌いだった時の視線とかまじで怖かったし」
今は聖女嫌いじゃないんだぁ。ふ~~ん。
「まぁ、騎士団で居場所がなくなった俺を拾ってくれた殿下には恩がある。俺はそれに報いるために殿下の命令には従う」
こんな感じでも忠誠心はあるんだ。
私はレイの言葉に心の中で返答しながら、「殿下」は偉大な方だなと思っていた。レイがこれだけ動くのも、王子に人望があるからだろうし……。
第一王子なんて少し前まで雲の上の存在だったのになぁ……。




