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そして、気付けば明日がエワット特別自治区に入れる予定の日。
ここにきて、時の流れがいつもより早くなった気がする。
この一週間でエワットに関することは一気に頭に詰め込んだ。
どの記録も全て興味深かった。読めば読むほど、エワット特別自治区に対しての解像度が高くなった。
コホンッ、それでは、小国ルメアがどのようにして滅んだのか、ご説明いたしましょう。
当時、ルメア国では無能な王の治世によって政情が急速に乱れていた。
王は国政にほとんど関心を示さず、日々の政務を側近たちに任せきりにしていた。しかし、その側近も無能。国を思う者などいない。王の機嫌を取り、耳障りの良い言葉を並べる者ばかり。
逆に王は自分の意見に反対する者を全て処刑した。なんとも恐ろしい独裁者である。こんなの誰も逆らえるわけないよね。……逆らえたとしても、明日の命はないし。
王の側近たちは自分の地位と財産を守ることしか考えなかった。彼らは徴収した税のほとんどを私服に収めていた。
もちろん王自身も豪華な宮殿や連日の宴、賭博、贅沢な装飾品に国庫の金を惜しみなく費やした。
その結果、僅か数年で国の蓄えは底を突いた。
財政難に陥った王家は、すでに重税に苦しんでいた民へ、さらに新たな税を課した。
本当に最悪の展開だよね。もちろん、これから先の結末も救いのないものとなる。
凶作によって食料が不足しているにもかかわらず、農民からは穀物や家畜を容赦なく取り立てられた。
食料の値段は瞬く間に跳ね上がった。
昨日まで買えた一袋の小麦が、翌日には倍の値となる。貧しい者から順に食卓から食べ物が消え、やがて町では飢えた子どもや、路上に倒れた老人の姿が当たり前のように見られるようになった。
それでも王は、民の窮状を顧みなかった。
その結果、飢饉は一層深刻になり、食べるものを失って餓死する民が後を絶たなくなった。
王は、国が民の支えによって成り立っていることを微塵も理解していなかったみたい。「もう、本当におバカさんなんだからッ」という言葉では片づけられないほどの愚鈍さ。
こうして、民衆の怒りと絶望は、ついに限界へ達した。各地で暴動を起こした。
貴族の屋敷が襲われ始め、王は軍を差し向けて力ずくで鎮圧しようとした。……が、兵士たちの大半は民衆側に寝返った。命令に従う者は兵の中で僅か一部だった。
この革命に乗らなければ!! と奮い立つ兵士たちの強い意志は証言記録に詳細に書かれていた。
王は側近にさえ見限られ、大きな城の中で一人残された。
そして、民衆が城に攻め入り、彼はあっけなく殺されてしまった。
ここまでは歴史として理解できる。
問題は、この国がどう滅んだか。
国王が殺されて、万々歳! 国民は自由! とはならなかった。
国全体が凄惨な戦場と化した結果、衛生状態の悪化によって疫病が広がった。
医師も薬も足りない。もちろん、食料も。
幼い子どもや体力の衰えた老人から次々と命を落としていった。
病死か、病死か…………。最悪の二択すぎ。
人々は国を捨てて逃げる以外の道が残されていなかった。
持ち出せるものを背負い、まだ動くことのできる民たちだけが逃げ延びた。そして、彼らは比較的情勢の安定していた私たちの国へと押し寄せた。
その難民たちがエワットである。




