↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女は世界を救わない  作者: 大木戸 いずみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
104/127

104

 は~~~~! さっっいこう!! ここは死後の世界?

 そう思えるほど、私は幸せに包まれていた。思わずスキップで静寂の書庫の中を見回る。

 スーパーご機嫌モードだから、今なら何を言われても怒らないよ。

 広大なスペースに高い天井。古い紙の匂いが微かに漂う。果てが見えないほど無数の書物が並んでいる。

 革張りの古びた書物、金の装飾が施された分厚い魔導書、見たこともない文字で題名が記された古文書。

 本棚を眺めながら私は鼻歌を奏でる。

 しばらくすると、鎖が巻かれている書架が視界に入ってきた。私は軽やかな足取りのスピードを落として、立ち止まった。

 ……なにあれ。

 ゆっくりと鎖が巻かれている書架の方へと足を進めた。近づくにつれて、その書架に結界が張られていることに気付いた。


「この厳重な王家秘蔵書庫の中で、さらにこれほど厳重にされるほどの書物ってなに……?」


 眉を潜めながら、書架をじっと見つめる。結界のせいで書物がぼやけて何も分からない。

 しかもこの結界、各属性の上級魔法を重ね合わせた、多重結界じゃん。

 そう簡単に壊されないように研究したんだろうなぁ……。

 あ~~~~、気になるよ~~~。


「それは王族だけが読むことを許された書物たちじゃ」 


 私の独り言に対する返答がどこからか突如聞こえてきた。

 …………どこから!?

 辺りをきょろきょろと見渡すが、人の姿など、どこにも見当たらない。もう一度視線を巡らせた時、上の方で微かに音が聞こえた。

 私は反射的に顔を上げた。


「……あ」


 いた。

 随分と遠くに梯子が見えた。

 天井近くまで伸びた書架に掛けられた梯子の上にちょこんと一人の小さな老人が立っていた。

 いや、あれは立っているというより、梯子にしがみついていると言った方がいいかも。

 遠近法とかじゃなくて、あの老人はかなり小さい。

 背中が丸まっているとかじゃなくて、本当に小さい。

 老人と目が合う。

 彼はぱちぱちと二度瞬きした後、「ほぅ」と小さく呟いた。そして、梯子は突然凄まじい勢いで書架に沿って横へと滑り始めた。風を切る音を立てながら、こちらに近づいて来る。


「まじか」


 私は呆気に取られ、ただその光景を見つめることしかできなかった。

 猛スピードで老人が迫って来る。喉元まで伸びた白い髭と癖のある白髪を風になびかせながら、片手で梯子を掴み、もう片方の手では分厚い本を平然と抱えている。

 私の前まで来たところで、ガコンッと梯子はぴたりと止まった。

 うわっ、ちゃんと止まるんだ! 

 てか、どうやってこの梯子を操ってるんだろう。

 老人は長い髭を軽く片手で整えてから、梯子を降りる。私はその様子を黙って見ていた。老人は最後の一段から軽く飛び降り、私の前に立つ。

 やっぱり、小さい。

 私に思われるってことは、一般男性にとっては小人サイズなんじゃないかな。

 

 私の胸元ほどまでの背丈。紺色のローブを身に纏い、腰には鍵やら眼鏡やら、用途の分からない小さな道具がじゃらじゃらとぶら下がっている。

 頬には深い皺が何本も刻まれており、鼻は高く大きく、顔の輪郭は丸みを帯びていた。

 優しげな灰色の瞳は好奇心に輝き、その奥には長い歳月で培われた深い知性が宿っていた。

 老人のその佇まいに気圧され、身体がわずかに強張る。


「……王家秘蔵書庫に、こんな若い娘が来るとはのう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。