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は~~~~! さっっいこう!! ここは死後の世界?
そう思えるほど、私は幸せに包まれていた。思わずスキップで静寂の書庫の中を見回る。
スーパーご機嫌モードだから、今なら何を言われても怒らないよ。
広大なスペースに高い天井。古い紙の匂いが微かに漂う。果てが見えないほど無数の書物が並んでいる。
革張りの古びた書物、金の装飾が施された分厚い魔導書、見たこともない文字で題名が記された古文書。
本棚を眺めながら私は鼻歌を奏でる。
しばらくすると、鎖が巻かれている書架が視界に入ってきた。私は軽やかな足取りのスピードを落として、立ち止まった。
……なにあれ。
ゆっくりと鎖が巻かれている書架の方へと足を進めた。近づくにつれて、その書架に結界が張られていることに気付いた。
「この厳重な王家秘蔵書庫の中で、さらにこれほど厳重にされるほどの書物ってなに……?」
眉を潜めながら、書架をじっと見つめる。結界のせいで書物がぼやけて何も分からない。
しかもこの結界、各属性の上級魔法を重ね合わせた、多重結界じゃん。
そう簡単に壊されないように研究したんだろうなぁ……。
あ~~~~、気になるよ~~~。
「それは王族だけが読むことを許された書物たちじゃ」
私の独り言に対する返答がどこからか突如聞こえてきた。
…………どこから!?
辺りをきょろきょろと見渡すが、人の姿など、どこにも見当たらない。もう一度視線を巡らせた時、上の方で微かに音が聞こえた。
私は反射的に顔を上げた。
「……あ」
いた。
随分と遠くに梯子が見えた。
天井近くまで伸びた書架に掛けられた梯子の上にちょこんと一人の小さな老人が立っていた。
いや、あれは立っているというより、梯子にしがみついていると言った方がいいかも。
遠近法とかじゃなくて、あの老人はかなり小さい。
背中が丸まっているとかじゃなくて、本当に小さい。
老人と目が合う。
彼はぱちぱちと二度瞬きした後、「ほぅ」と小さく呟いた。そして、梯子は突然凄まじい勢いで書架に沿って横へと滑り始めた。風を切る音を立てながら、こちらに近づいて来る。
「まじか」
私は呆気に取られ、ただその光景を見つめることしかできなかった。
猛スピードで老人が迫って来る。喉元まで伸びた白い髭と癖のある白髪を風になびかせながら、片手で梯子を掴み、もう片方の手では分厚い本を平然と抱えている。
私の前まで来たところで、ガコンッと梯子はぴたりと止まった。
うわっ、ちゃんと止まるんだ!
てか、どうやってこの梯子を操ってるんだろう。
老人は長い髭を軽く片手で整えてから、梯子を降りる。私はその様子を黙って見ていた。老人は最後の一段から軽く飛び降り、私の前に立つ。
やっぱり、小さい。
私に思われるってことは、一般男性にとっては小人サイズなんじゃないかな。
私の胸元ほどまでの背丈。紺色のローブを身に纏い、腰には鍵やら眼鏡やら、用途の分からない小さな道具がじゃらじゃらとぶら下がっている。
頬には深い皺が何本も刻まれており、鼻は高く大きく、顔の輪郭は丸みを帯びていた。
優しげな灰色の瞳は好奇心に輝き、その奥には長い歳月で培われた深い知性が宿っていた。
老人のその佇まいに気圧され、身体がわずかに強張る。
「……王家秘蔵書庫に、こんな若い娘が来るとはのう」




