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流石の私も王子からの好意に抱かないほど馬鹿じゃない。
だけど、まさかここまで愛を向けられているとは思いもしなかった。これは、ただの好奇心からくる好意じゃない。
改めて、王子の言葉の意味を理解した瞬間、全身の血が一気に駆け巡ったような感覚に襲われた。
うそ……、うそうそうそうそ。
そんなのありえない。まだ出会って数回目だよ?
あ、でも王子からしたら、ずっと私のことは知っていたのか。
いや、惚れた女にあんなとんでもない仕事量を持ってくる? ……まだ私が死ぬとは思っていなかったからか。
ああ、もう、どうしよう。いっそのこと頭が真っ白になった方が良かったのかも。まだギリギリのところで思考が動き続けているせいで、大混乱だよ。
最初は王子が聖女のことをからかっているだけだろうって思っていたけれど、これは絶対に違う……。
「そろそろ仕事にもどらないと、セスに本気で怒られそうだ。すまない、王家秘蔵書庫は他の者に案内させる。じゃあ、また今度」
私が動揺して動けない間に、王子は満足げに去って行ってしまった。
ガゼボの中で一人ぽつんと残された私は暫く茫然としていた。ゆっくりと今の状況を飲み込んでいく。
少しして、私はテーブルに肘をつき、盛大に頭を抱えた。
「うっそ~~~~~」
♢
本当にこれ現実……?
ああ、もう! 今から念願の王家秘蔵書庫に行けるというのに、そっちに集中できないよ!
意識のほとんどを王子に取られてしまった。
さっきも「王家秘蔵書庫を案内させていただきます」と私を迎えに来た侍女の言葉を二回ぐらいスルーしてしまっていたもん。もう重症だよ。
相手は王子だよ? この国で最も位の高い王族だよ?
一応「聖女」っていう神託は受けたけど、私の身分は平民だよ?
私は王家秘蔵書庫に着くまでの道のりをずっと脳内で一人で喋っていた。
次王宮へ来た時に、ちゃんと書庫にたどり着けるかどうか不安になるほど周りを見ていなかった。
「こちらです」
侍女の柔らかな声に私はハッと前を見る。
そこには、廊下の突き当たりを塞ぐように巨大な扉がそびえていた。
長い年月を経ているはずなのに傷一つなく、磨き上げられた重厚な両開きの扉。王家を象徴する紋章が大きく刻まれている。
扉に対して、まるで王族と対峙しているような威厳を感じた。




