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聖女は世界を救わない  作者: 大木戸 いずみ


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 …………な、なんて殺し文句なの。

 頬が真っ赤になっているのが自分で分かるほど、体全体熱くなっていた。 

 公務を踏み台って言っちゃいけないでしょ、というツッコミが脳内で消し去られてしまうほど、私の脳内はかき乱されていた。

 王子は更に言葉を続けた。


「この窮屈で息苦しい世界で、君が俺の光だったんだ」


 その嘘偽りのない瞳から目を逸らしたいのに、逸らせない。

 そんな目で私を見ないで……。どう受け止めればいいのか分からない。

 民からずっと嫌われ続け、憎まれ続けた私が向けられたことのない視線だった。

 何か言わなければと思うのに、喉の奥で言葉が止まってしまう。


「もっとゆっくり距離を詰めてもいいと思っていたが、俺は君に死んでほしくない」


 私が何も言えずにいると、王子が先に口を開いた。


「やっぱり、レイから聞いたのですね……」

「ああ」

「私が一度死んだことも?」

「ああ。全て聞いた」


 王子は真面目な口調で短く答える。

 知られたからと言って、別にどうってことない。「誰にも言わないで」ともレイに伝えなかったし。

 ただ、そのうちジェフリーの耳に入るかもしれないと思うとねぇ…………。まぁ、その時が来たら、その時に考えればいっか!


「たとえ世界を敵に回しても、君は生きていてほしい」

「殿下、あまりにも私情に偏ったご発言はお控えください」


 セスは流石に今の王子の発言をまずいと思ったのか、やや強い口調で割り込んでくる。


「じゃあ、お前は彼女に自ら命を落として来いと言うのか?」

「それは……」

「逆に私一人の命で世界を救えるのなら、むしろ安いものですよ」


 言葉に詰まるセスの代わりに私が答える。

 セスはきっと私の命を世界を守る代償にしていいと思っている。私を前にして「はい」とは言えないだけで。


「殿下の光は消えてしまうかもしれませんが、また新たな光がきっと現れます。次はその人のために」

「どうしてまだ分からない」


 王子は少し語気を強めて、私の言葉を遮った。

 王子の表情を見て、私はハッと固まる。彼は、悲しみを押し殺すように、どこか傷ついた切ない表情を浮かべていた。

 言ってはいけないことを言ってしまった……。


「…………俺はお前に心底惚れているんだ」


 わずかな沈黙のあとに続いたその言葉に、私の瞳は目を見張った。

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