第8話 試験1
思い出せ、自分。思い出せなければ、ここでタイムスリップ先で亡くなることになるぞ…………!!
舞馬…………?
絶対に違う。
一舞…………?
これも絶対に違う。
じゃあ、2人の名前から取ってないのか…………?
俺は思わず目を瞑っていた。
「(初めての子だから、どうつけたら良いのかしらね…………)」
初めての子…………。
初めて…………。
…………あっ!?
思い出したぞ!!
——一子
これだ!!
たしか、一馬帝天の「一」と舞子の「子」から一文字取った名前って、博物館に書いていたはず。
良かった…………。
博物館に行っていなかったら、ヤバかった…………。
後は書くだけやけど…………、縦書きで合ってるよな…………?
そもそも、現代でいう縦書きと同じなんか…………?
どこかに文字の書かれていた紙は…………。
俺は部屋中を見渡したが、どこにもそんなものは無かった。
全員が、俺の方を見ていた。
表情まではよく見えなかったけど、決して良いものではなさそうだった。
自信はないけど、現代の縦書きで書こう。
あとは、理由を漢文でどう書くかよな…………。
安良子さんに教えてもらった知識を総動員するしかない。
主語はここにして——
…………焦って、漢字が思いつかない。
せめて、代替出来る文に変えよう。
無意識に目線は安良子さんの方へ行っていた。
目を瞑ることさえ、出来ていなかった。
安良子さんは、不安そうな顔のまま、俺から視線を動かさない。
扇子を持っている手も震えている。
俺が落ちれば、安良子さんにも何かあるのだろうか?
俺は意を決して、紙の方に向き直した。
墨やから、失敗は出来ない。
こう思うと、消しゴムで消せることがいかに、幸せなことかが分かる。
一文字一文字、丁寧に書いていった。
正直、文法やら漢字が合っている自信はない。
けど、待たせて即失格にされるより、マシだ。
額から汗が流れていることが、よくわかる。
必死に、紙にだけは落ちないようにしていた。
落ちてしまっては、大惨事や。
「あっ…………」
紙に落ちないように、頭を右の方に傾けていた。
しかし、それが仇となった。
大量の拭いきれない汗が、墨の入った硯に落ちてしまった。
明らかに、シャバシャバだ。
混ぜていなくても、分かる。
「清見女房」
「承知致しました」
それ以上、何も言わずに清見女房は、汗の入った硯を新しい硯に変えた。
「申し訳ありません!!」
俺は全力で土下座をした。
嫌な予感がしたからだ。
「それぐらい、いいから。続けなさい」
舞子は、最初から何も変わらない表情や声色のまま、言ってきた。
正直、それはそれで怖い。
◇ ◇ ◇ ◇
書き切るまでに、5分ぐらい掛かった。
「…………出来ました」
墨は乾いていない。
俺はゆっくり筆を置きながら、乾くのを待った。
その和紙を見て、清見女房の目が見開いたのが、横目で見えた。
それはどっちなんや…………?
清見女房は、舞子の前に和紙を持っていった。
舞子はその紙と俺を交互に見ていた。
その様子は真剣そのもの。
本当にどっちなん…………。




