第7話 試験資格はあるの……?
「(雅道さんが2026年の方とは、伝えておりません。なので、町中で見つけた人ということで、通してください)」
「(分かりました)」
廊下には色々な人が行ったり来たりしていた。
役割はよく分からなかったが、すれ違う人々は全員こっちを見てきた。
その目線は、俺に向けられているのか、安良子さんの方に向けられているのかまでは、分からなかった。
「舞子様、連れて参りました」
「入りなさい」
中から、少し大人びた声が聞こえてきた。
でも、どこか同級生の声に近いような気がした。
「失礼いたします、こちら——」
安良子さんと同じ動作をする。
現代の博物館で、作法に関してはある程度体験した。
けど、それが合っているのかよく分からない。
だから、安良子さんの真似をするのが一番安パイだろう。
「雅道之助という者でございます。漢詩に長けており、武術も出来るとのことです」
俺は、黙って頭を下げる。
正直、本物の歴史人物に会えたという、絶対にあり得ないことに胸は高揚していた。
けど、しくじれば一瞬で、首が物理的に飛ぶだろう。
だから、その高まる気持ちを抑えていた。
「そう。でも、なんで貴族の服を着ているの?名前を聞いた限りだと、貴族じゃなさそうだけれど」
盲点だった。
そりゃあ、平民と貴族では服装も分かれているだろう。
どうしたらええんや…………。
「そ、それは、舞子様の御前に参上する以上、身だしなみは大事かと思いまして…………」
俺が言葉を出す前に、安良子さんがフォローしてくれた。
「そう。そこまでしなくて良いのに」
舞子は、俺のことを真剣に見ていた。
正直、落とされてもおかしくない。
目を合わせるのも気まずいと思って、改めて部屋を見渡してみた。
部屋には沢山の女房と侍司っぽい男性が一人居た。
女房の服装は、全員が豪華だった。
豪華とは言っても、金一色みたいに派手派手しいわけじゃない。
色が多いだけ。
けど、どこか趣を感じる配色。
「雅道之助と言ったわね。確かに漢詩が出来るのであれば、貴族を偽って入ってくる不届き者を追い返すには、ちょうど良いわね」
そんな人居るんか…………?
「清見女房、和紙を持ってきてちょうだい」
「承知致しました」
清見女房…………。
和歌に長けた、現代にも伝わる文学人だ。
藤物語を書いた作者として、知られている。
後世にも残っていて、当時でも恋愛物語として絶賛されていた作品だ。
「雅道之助の前に置いてね」
前に机とかを置かれた瞬間、コソコソ話がピタリと止んだ。
正確に言えば、俺が部屋に入った時から、あまり話声は聞こえてこなかったけど、舞子の表情が穏やかであまり気にならなかった。
けど、これから行われるのは漢詩の試験。
手とか額から、汗がドバドバと出てくる。
和紙に書けるのかすら怪しい。
「お題はそうね…………。この子の名前とその理由を考えてちょうだい。もちろん、一馬様に読んでもらうから漢文でね」
へ…………?
予想外だった。
てっきり、「とある作品を読め」みたいな問題が来ると思っていた。
そもそも、漢詩じゃないんかい…………。
というか、現代に伝わっている名前でええんか…………?
…………まぁ、その方が安牌か?
それはともかくとして、舞子と一馬帝天の子って、名前なんやったっけ…………。
即位後の名前は覚えてるんやけど…………。




