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安良子の表と裏-一族の繁栄と政治闘争、その陰で交錯する人々-  作者: 綿ダッコ
第2章〜順応したい〜

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第7話 試験資格はあるの……?

 「(雅道さんが2026年の方とは、伝えておりません。なので、町中で見つけた人ということで、通してください)」


「(分かりました)」


 廊下には色々な人が行ったり来たりしていた。


 役割はよく分からなかったが、すれ違う人々は全員こっちを見てきた。


 その目線は、俺に向けられているのか、安良子さんの方に向けられているのかまでは、分からなかった。


「舞子様、連れて参りました」


「入りなさい」


 中から、少し大人びた声が聞こえてきた。


 でも、どこか同級生の声に近いような気がした。


「失礼いたします、こちら——」


 安良子さんと同じ動作をする。


 現代の博物館で、作法に関してはある程度体験した。


 けど、それが合っているのかよく分からない。


 だから、安良子さんの真似をするのが一番安パイだろう。


「雅道之助(まさのみちのすけ)という者でございます。漢詩に長けており、武術も出来るとのことです」


 俺は、黙って頭を下げる。


 正直、本物の歴史人物に会えたという、絶対にあり得ないことに胸は高揚していた。


 けど、しくじれば一瞬で、首が物理的に飛ぶだろう。


 だから、その高まる気持ちを抑えていた。


「そう。でも、なんで貴族の服を着ているの?名前を聞いた限りだと、貴族じゃなさそうだけれど」


 盲点だった。


 そりゃあ、平民と貴族では服装も分かれているだろう。


 どうしたらええんや…………。


「そ、それは、舞子様の御前に参上する以上、身だしなみは大事かと思いまして…………」


 俺が言葉を出す前に、安良子さんがフォローしてくれた。


「そう。そこまでしなくて良いのに」


 舞子は、俺のことを真剣に見ていた。


 正直、落とされてもおかしくない。


 目を合わせるのも気まずいと思って、改めて部屋を見渡してみた。


 部屋には沢山の女房と侍司っぽい男性が一人居た。


 女房の服装は、全員が豪華だった。


 豪華とは言っても、金一色みたいに派手派手しいわけじゃない。


 色が多いだけ。


 けど、どこか趣を感じる配色。


「雅道之助と言ったわね。確かに漢詩が出来るのであれば、貴族を偽って入ってくる不届き者を追い返すには、ちょうど良いわね」


 そんな人居るんか…………?


「清見女房(きよみのにょうぼ)、和紙を持ってきてちょうだい」


「承知致しました」


 清見女房…………。


 和歌に長けた、現代にも伝わる文学人だ。


 藤物語(ふじものがたり)を書いた作者として、知られている。


 後世にも残っていて、当時でも恋愛物語として絶賛されていた作品だ。


「雅道之助の前に置いてね」


 前に机とかを置かれた瞬間、コソコソ話がピタリと止んだ。


 正確に言えば、俺が部屋に入った時から、あまり話声は聞こえてこなかったけど、舞子の表情が穏やかであまり気にならなかった。


 けど、これから行われるのは漢詩の試験。


 手とか額から、汗がドバドバと出てくる。


 和紙に書けるのかすら怪しい。


「お題はそうね…………。この子の名前とその理由を考えてちょうだい。もちろん、一馬様に読んでもらうから漢文でね」


挿絵(By みてみん)


 へ…………?


 予想外だった。


 てっきり、「とある作品を読め」みたいな問題が来ると思っていた。


 そもそも、漢詩じゃないんかい…………。


 というか、現代に伝わっている名前でええんか…………?


 …………まぁ、その方が安牌か?


 それはともかくとして、舞子と一馬帝天の子って、名前なんやったっけ…………。


 即位後の名前は覚えてるんやけど…………。

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