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安良子の表と裏-一族の繁栄と政治闘争、その陰で交錯する人々-  作者: 綿ダッコ
第5章〜帝天と八子〜

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第43話 何してるの!?

 「え?」


「一馬様に向いてほしい気持ちもある。でも、ほっとけないの」


 その表情は、いつもと違った。


 激昂したときでも、嬉しいときでもない。


 真剣な表情だった。


「…………承知致しました」


「今日は遅いし、明日の皆が寝静まってから探すわよ」


 見つかったとして、その後どうなるか分からない。


 けど、俺はどんなことがあっても舞子に仕えようと思えた。


◇ ◇ ◇ ◇


「(雅道、行くわよ)」


 全員が寝静まった後、警備している巳之助さんの隙を突いて、町へ出た。


 当たり前だが、周りを見渡しても、八子らしい人影はない。


「(雅道、とりあえず本殿の方に行きましょう)」


 舞子は、笠を被っていた。


 暗い色の布が垂れていて、近づかないと見えない。


 本殿の近くの空に月が出ている。


 …………あんなところに、装飾あったか?


 本殿の屋根にポツリと影があった。


 遠くてよく見えない。


 けど、装飾にしては非対称だ。


「(舞子様、あんなところに装飾ってありましたっけ?)」


「(無いわよ。何かあるの?)」


「(はい、あれです)」


「(え?)」


 今、影動かんかった?


 というか、大きさ変わってね?


「(…………あれ、人影じゃないかしら?)」


 うーん…………、確かに人影かも…………。


 …………じゃなくて、人影!?


「(というか、あれ八子さんっぽいわよ!!雅道、早く!!)」


 舞子は、急に走り出した。


 笠が落ちたけど、拾っている暇はない。


 本殿までは400メートルぐらい。


 着くまでに落ちないでくれ…………。


「八子さん、何をしてるの!!」


「八子様、お止めください!!」


 何とか落ちる前に着いた。

 

 何度呼びかけても、八子は微動だにしない。


 もはや、聞こえてないんじゃないか?


「八子さん…………!!」


 ようやく動いたと思ったら、八子が落ちてきた。


 舞子と俺でどうにか支えられた。


 近くの階段に八子を降ろす。


 宮廷で見た豪華な様子は一切ない。


「八子さん、なんであんなことしたのよ!!」


 八子は舞子の言葉に耳を傾けようとしない。


 まるで、抜け殻みたいだ。


「一馬様も心配されていたのよ!!」


 まだ言葉を発そうとしない。


 その代わり、フラフラと立った。


挿絵(By みてみん)


 何をしようとしてんねんや…………?


「どうして、放置してくれないのよ!!」


 舞子に近づいたと思ったら、舞子にビンタをした。


 その後に、俺もビンタされた。


 左頬がジンジン痛む。


「どうしたのよ、八子さん!!」


「舞子さんは何も分かってない!!雅道も!!」


 分かってないって何が…………。


「お父様のやり方が気に入らないのよ!!」


「八子様、何があったのかお教えください!!」


「うるさい!!…………いずれ、分かるわよ」


 いずれ分かるって…………。


 そういうことじゃなくて…………。


「もう、放っといて」


 八子は本殿の裏側に行こうとした。


 足が動かない。


「八子さん、待って!!」


「うるっさいわね!!」


 舞子は八子の腕を掴んだが、はたかれた。


 なんなら、舞子のことを突き飛ばした。


 ギリギリ、支えることはできた。


「八子さん!!」


 八子は、本殿裏の暗闇に消えていった。

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