第42話 居るかもしれないんだ!!
ここに居るかもしれんってこと!?
でも、探しても居なかったって…………。
「…………そう。ご苦労だったわ。今日はここに泊まっていきなさい」
「いや、私は他に用がございますので。お気遣い、ありがとうございます」
もしかしたら、八子が見つかる可能性があるってことか。
…………探すか?
でも、見つけたところで、どうする?
八子の誘いを断って、舞子に仕えると宣言した。
それなのに、心配する必要はない。
でも…………、
八子が見つかって、一馬帝天の情緒が戻れば、舞子の前で八子と連呼しないかもしれない。
ましてや、八子が鬼女として扱われること自体、腑に落ちない。
…………こんなこと考えていいのだろうか?
俺は舞子の侍司やぞ。
けど、このモヤモヤをほっとけない。
舞子のためって言ったら、許してくれるか?
「…………舞子様」
「雅道、どうしたの?」
「…………八子様を探してみませんか?」
「雅道さん!?」「「雅道!?」」
「…………雅道、私のことを裏切るの?」
「い、いえ、そういうわけじゃ…………。舞子様のためになると——」
「来なさい!!」
俺は舞子に腕を引っ張られて、倉庫らしきところの前まで来た。
何されるん!?
いや、無謀なことを言ったのは俺やけどさ…………。
もしかして、ここで命落とすん!?
「ここに入ってなさい!!」
腕を縛られて、倉庫の中に入れられた。
扉の鍵が閉められる音が聞こえた。
幽閉された!?
◇ ◇ ◇ ◇
…………食べ物も水もない。
このまま、衰弱させられるのかもしれない。
…………余計なこと言わんかったら良かったな。
そもそも、舞子のためってのがおかしかったのかもしれん。
本当は八子のためでしかないのかもしれない。
外から物音すら聞こえない。
中から助けを求めても、舞子を余計に刺激するだけだろう。
そもそも、人がいない。
このまま亡くなったら、現世に帰れるんかな…………。
それとも…………。
…………眠くなってきた。
なんでこんな時に限って…………。
せめて、壁にもたれ掛かかりたい。
背中にひんやりとした感触が当たる。
それでも、眠気は消えない。
意識も朦朧としてきた。
喉はカラカラなはずなのに、いつからかそんなことすら感じなくなった。
目の前が真っ暗になった。
ああ、あの白い世界に連れて行かれるんかな…………。
◇ ◇ ◇ ◇
目を開けても、そこは倉庫だった。
しかも、さっきまでとは違って真っ暗だった。
…………てことは、寝てた?
というか、体を動かせない上に、床に頭が付いていない。
どういうこと…………?
頭を撫でられる感触があった。
「…………ごめんね、雅道」
この泣き声って…………。
「雅道、起きてよ…………」
舞子やん!?
けど、動けない。
もしかして、金縛り…………?
「雅道、雅道…………」
舞子の涙が何度も当たる。
頑張って、足を動かしてみる。
…………ちょっとずつ動いた?
◇ ◇ ◇ ◇
何度も撫でられた。
体を動かそうにも、ちょっとずつしか動かない。
「雅道、お願い。私のことを守ってよ…………」
抱きつかれた。
そこでようやく体が動いた。
「ま、舞子様、申し訳ありませんでした!!」
土下座をした。
許してくれるのだろうか?
「…………頭を上げて、雅道」
頭を恐る恐る上げた。
そこには、おしろいが剥がれている舞子の姿があった。
いつの間にか、腕の紐が解かれていた。
「…………あの時、どうして八子さんを探そうって言ったの?」
言って良いのだろうか…………。
また幽閉されるかもしれない。
いや、幽閉だけでは済まないかもしれない。
「何もしないから、言ってちょうだい」
「…………舞子様のためになるって思ったんです。八子様が一馬帝天様のところへ戻れば、舞子様の前で八子様の名を言うことはなくなるって思ったんです」
「…………それだけじゃないでしょう?」
…………こっちこそ、言って良いのだろうか。
「…………八子様が鬼女と言われていることが腑に落ちないんです」
「…………そうね。私もそう思う」
じゃあ、なんであの時…………。
「私、どうすれば良いか分からないの。ここに来たのも、八子さんがいるかも知れないって思ったからなの」
…………一筋の光を探したかったのか。
「でもね、八子さんが鬼女のまま噂されてれば…………、とも思ったの」
…………思ってもおかしくないよな。
「本当は仲良くしたいのに…………。私、罪な妃よね」
「…………い、いえ、そんなことは——」
「いいのよ。こうやって、幽閉しちゃったんだから。私のことを許す必要は無いわ」
そうやけど…………。
「はい、これ水と食事。本当にごめんなさい」
目の前に、丸いおにぎりと水の入った容器が置かれた。
水を先に飲んだ。
冷えているわけじゃない。
けど、美味しく感じた。
「それと、私も八子さんのことを探すわ」




