第41話 伝えたいこと
「雅道、構えろ!!」
「は、はい!!」
宿を出て少し歩いたところで、巳之助さんが叫んだ。
後ろから足音が聞こえてきた。
…………この早さは、馬か?
鞘と刀の柄に手を掛ける。
馬に乗った人が後ろから都の方から来るのが見えた。
「…………雅道、あれは治輔様だ」
治輔!?
付いて来たのか…………?
「舞子姉さま、どうしても伝えたいことがあります」
治輔は馬から降りると、膝をついた。
「…………どうしたの?」
舞子の声色が少し戻った気がする。
「八子様についてなのですが…………、宮廷では一馬帝天様の前から何も言わず消えたことから、鬼女として噂されています…………」
鬼女…………。
つまりは、恨みがあった女性として扱われたってことか…………?
でも、一馬帝天は愛してただろうし、一馬帝天に恨みがあるようには考えられない。
じゃあ、舞子…………?
舞子は、状況的には下に見ていてもおかしくない。
残るは…………、俺と安良子さん!?
いや、断っただけでそこまで恨まれるか…………?
鬼女になる理由が見当たらない。
…………じゃあ、ただ尾ひれがついただけか?
「…………そう。ご苦労だったわね」
「舞子姉さま、今からでも間に合います。引き返しましょう」
でも、噂になっている以上、物我家に接触するだけでもリスクがあるよな。
「…………治輔、私は内妃よ。私の意思を否定するの?」
舞子、そんな口調で言う人やったか…………?
「舞子姉さま、何を…………」
「いいから、あなたは内宮に戻りなさい!!」
◇ ◇ ◇ ◇
伝令を受けたところから2時間ぐらい歩くと、そこには都と遜色ないほどの栄えた町が見えてきた。
城楽は、門前町に似たようなところらしく、めちゃくちゃ賑わっている。
「(舞子様、見えてまいりましたよ)」
周りの参拝客らしき人たちに聞こえないように、牛車に声をかけた。
しかし、中から返事はない。
牛車はとある建物に止まった。
こじんまりとしているものの、奥までありそうだった。
中に入ると、ふすまで仕切られた部屋が何個かあって、こじんまりとした池付きの庭があった。
お世話係も含めて、人が居る様子はない。
都から付いて来た人達だけだ。
「ここはね、城楽にある唯一の己鴨家の建物なの」
治輔に怒鳴っていた口調とは違って、落ち着いていた。
「舞子様、なぜここに…………」
清見女房、本当に度胸あるよな…………。
しかし、本当に分からない。
人選はまだ分かる。
けど、桜晴を置いてきたのはなんでや?
謎が多すぎる…………。
「…………」
舞子は答えようとしない。
俺たちにも答えない理由ってなんや…………?
「舞子様!!」
清見女房が聞こうとしたところで、1人の男性が来た。
構えたが、伝令ぽい。
「八子様がこの地に向かったところを見た者が居るそうです!!」




