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安良子の表と裏-一族の繁栄と政治闘争、その陰で交錯する人々-  作者: 綿ダッコ
第5章〜帝天と八子〜

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第41話 伝えたいこと

 「雅道、構えろ!!」


「は、はい!!」


 宿を出て少し歩いたところで、巳之助さんが叫んだ。


 後ろから足音が聞こえてきた。


 …………この早さは、馬か?


 鞘と刀の柄に手を掛ける。


 馬に乗った人が後ろから都の方から来るのが見えた。


「…………雅道、あれは治輔様だ」


 治輔!?


 付いて来たのか…………?


「舞子姉さま、どうしても伝えたいことがあります」


 治輔は馬から降りると、膝をついた。


「…………どうしたの?」


 舞子の声色が少し戻った気がする。


「八子様についてなのですが…………、宮廷では一馬帝天様の前から何も言わず消えたことから、鬼女(きじょ)として噂されています…………」


 鬼女…………。


 つまりは、恨みがあった女性として扱われたってことか…………?


 でも、一馬帝天は愛してただろうし、一馬帝天に恨みがあるようには考えられない。


 じゃあ、舞子…………?


 舞子は、状況的には下に見ていてもおかしくない。


 残るは…………、俺と安良子さん!?


 いや、断っただけでそこまで恨まれるか…………?


 鬼女になる理由が見当たらない。


 …………じゃあ、ただ尾ひれがついただけか?


「…………そう。ご苦労だったわね」


「舞子姉さま、今からでも間に合います。引き返しましょう」


 でも、噂になっている以上、物我家に接触するだけでもリスクがあるよな。


「…………治輔、私は内妃よ。私の意思を否定するの?」


 舞子、そんな口調で言う人やったか…………?


「舞子姉さま、何を…………」


「いいから、あなたは内宮に戻りなさい!!」


◇ ◇ ◇ ◇


 伝令を受けたところから2時間ぐらい歩くと、そこには都と遜色ないほどの栄えた町が見えてきた。


 城楽は、門前町に似たようなところらしく、めちゃくちゃ賑わっている。


「(舞子様、見えてまいりましたよ)」


 周りの参拝客らしき人たちに聞こえないように、牛車に声をかけた。


 しかし、中から返事はない。


 牛車はとある建物に止まった。


 こじんまりとしているものの、奥までありそうだった。


 中に入ると、ふすまで仕切られた部屋が何個かあって、こじんまりとした池付きの庭があった。


 お世話係も含めて、人が居る様子はない。


 都から付いて来た人達だけだ。


「ここはね、城楽にある唯一の己鴨家の建物なの」


 治輔に怒鳴っていた口調とは違って、落ち着いていた。


挿絵(By みてみん)


「舞子様、なぜここに…………」


 清見女房、本当に度胸あるよな…………。


 しかし、本当に分からない。


 人選はまだ分かる。


 けど、桜晴を置いてきたのはなんでや?


 謎が多すぎる…………。


「…………」


 舞子は答えようとしない。


 俺たちにも答えない理由ってなんや…………?


「舞子様!!」


 清見女房が聞こうとしたところで、1人の男性が来た。


 構えたが、伝令ぽい。


「八子様がこの地に向かったところを見た者が居るそうです!!」

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