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安良子の表と裏-一族の繁栄と政治闘争、その陰で交錯する人々-  作者: 綿ダッコ
第1章~タイムスリップ~

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第3話 隠せてないよ……?

 安良子さんが表に行って、体感1時間ぐらいが経った。


 時間的にはそこまで経っていないだろう。


 ドスンと重い音と衝撃が響いた。


 結構、重さのある感じだった。


「(雅道さん、夕飯までにもう少しお勉強してしまいましょう)」 


 漢詩の勉強は、夜まで続いた。


 外はすっかり暗くなっていた。


 その間、この部屋に来る人は誰一人として居なかった。


「(今、お食事を準備しますね)」


「(ありがとうございます…………)」


 罪悪感で押し潰されそうだ。


 半ば不法侵入の身だからしょうがないにしても、手伝えない自分に腹が立つ。


 目の前の庭だろうか。


 火を焚く音が聞こえてきた。


 色々準備している音が聞こえる。


 台所は無いのか?


 それとも、たまたまか?


 体感、1時間ぐらい経っただろうか。次は片付ける音が聞こえてきた。


 机の上に置かれる音が何回かした後、漢詩のときと同じように安良子さんが顔を覗かせた。


 さっきは気づかなかったが、少し笑顔が混じっているように感じた。


「(怪しまれないように、私が先に食べますね。その後にお持ちします)」


「(分かりました)」


 食事をする音が聞こえてきた。


 その音は少し慌ただしく感じた。


 もしかしたら、俺の存在が安良子さんの食事を急がせているのかもしれない。


 もしそうなら、マジで申し訳ない。


「(お待たせしました)」


 安良子さんは何往復かして、食事を持ってきてくれた。


 献立は、多分雑穀のご飯に、何かの汁物、半分に切られた1匹の魚だった。


 もしかして、無理してる?


「(あの、安良子さん…………、本当に俺に分けてくれて大丈夫なんですか?)」


「(え、全然大丈夫ですけど…………)」


「(この量で大丈夫なのかなって…………)」


「(私、少食なんです。それより、雅道さんの方が良くお食べになるでしょうし…………)」


 多分、遠慮している。


 明らかに、痩せ細っている。


「(いやいや、俺もあまり食べれないので、もっと食べてください。元々は、安良子さんの食事なんですから)」


 安良子さんは、首をブンブン振っていたが、その目は食事から離せていなかった。


 やっぱり、無理しているのだろう。


「(…………本当によろしいんですか?)」


「(はい、もちろんです)」


 そう言って、安良子さんは各お皿に乗せられたものを一口ずつ、口に運んだ。


 それ以上は食べないつもりらしい。


 マジマジと俺の方を見つめている。


「(いただきます…………)」


 まず、魚を口に運ぶ。


 現代の食事に慣れている俺には、味気なかった。


 けど、炭火焼きみたいで美味しかった。


「(美味しいです)」


「(本当ですか…………!?良かったです)」


 安良子さんの顔にパーとした笑顔が広がった。


 その笑顔は、アニメなら後光が現れるぐらい、眩しかった。


 食事は現代より薄味だったけど、どれも美味しかった。


 食べ終えた食器をまとめる。


 せめてもの手伝いだ。


「(ありがとうございます。こんなまとめてくださって…………)」


「(いえ、せめてもの手伝いです)」


 安良子さんは目を丸くしていた。


 …………そんなに、驚かれることなのだろうか?


「(安良子さん、どうにかしましたか?)」


「(え、あっ、大丈夫です…………。片付けてきますね)」


「(あっ、はい)」


 安良子さんはそのまま、どこかへ食器を持っていった。


 部屋はおろか、外からは虫の音しか聞こえないほど静かだった。


 しばらくして、安良子さんが戻ってきた。


 御簾が下ろされる音がする。


 これで隠しているのだろう。


「(私は寝支度がございますので、雅道さんは先にこの布団でお眠りください)」


 安良子さんは、逃げた時に踏んだ布団らしき敷物の向きを変え始めた。


 俺は、慌てて腕を掴んで、止める。


「(この布団は安良子さんのじゃないんですか?自分、床でも寝れます)」


「(雅道さんがお使いください。私は大丈夫なので)」


「(本当に大丈夫ですから)」


 いくらなんでも良くしすぎだ。


 俺は不法侵入の身なんだから。


「(…………分かりました。じゃあ、せめて枕だけでも…………)」


 少し体を揺らしながら、安良子さんは枕という名の肘掛けを目の前に差し出してきた。 


挿絵(By みてみん)


 …………そんな顔をされたら、断りずらい。


「(…………ありがとうございます)」


 それから、敷物の方を頭にして寝転がった。


 肘掛けというだけあって、固い。


 けど、文句は言ってられない。


 そもそも、安良子さんに要望を言うだけでも失礼だ。


 布が床に落ちる音が聞こえてきた。


 着替えているのだろう。


 というか、恥ずかしくないんか…………?


 でもまぁ、体験コーナーで十二単の下はラフな格好であると知った。


 寝るときはその格好になるのだろう。


 俺の気にしすぎだろう。


 そうだよね…………?


 それからまもなくして、安良子さんが寝転がる音がした。


「(おやすみなさい、雅道さん)」


 耳元で囁かれた。

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