第27話 行幸開始
行幸当日、大広間は豪華な装飾で溢れかえっていた。
安良子さんは舞子の横で一子を抱きかかえ、俺は舞子側の親戚が座っている壁際に待機していた。
向こう側の壁には、帝天側の侍司が待機している。
演奏が始まった。
相変わらずの迫力だが、距離が遠いせいか、就任式ほど圧倒されることは無かった。
演奏が始まって早々、帝天側の人たちが入ってくる。
舞子も含めて、全員が頭を下げた。
見えないけど、ぞろぞろと入ってくる音がする。
演奏が止み、頭を上げた。
一馬帝天は、俺からしたらイケメンに見えた。
この時代の価値観からしたら知らんけど…………。
すると、多分家柄順に、帝天と舞子の前に箱を携えて、何人かの人が出てきた。
「一子様のご出産、まことにおめでとうございます」
基晴を皮切りに、同じようなことを言いながらそれぞれ持っていた箱を置いていく。
そして、もう一人の乳母の人が受け取っていく。
全員が席に戻った。
その後も厳かに儀式は進められた。
儀式が終わったように思えるぐらいの静寂が流れた。
舞子は前を向かず、一馬帝天の方を向いている。
そんな舞子がおもむろに立ち上がって、帝天の前に移動した。
「舞を見てはもらえないでしょうか?」
舞子は、帝天にそう問いかけた。
たしか、予定には無かったよな…………?
その記憶は正しかったらしく、全員が困惑の表情を浮かべていた。
「そなたの舞をちょうど見たかった頃合いじゃ」
帝天はハッキリとした口調で、許可?を出した。
一子は舞子に向かって必死に手を伸ばしていた。
安良子さんはそれを頑張って抑えていた。
舞子がそんな一子に笑顔を向けたあと、演奏が始まり舞子も体勢を整える。
舞子の舞はとても美しかった。
まるで、この場にいる全員を祝福する女神のような感じだった。
それはこの場の全員がそうなようで、一馬帝天を除いて全員が見惚れていた。
一馬帝天の表情は無表情みたいな感じだった。
その意味が、俺にはよく分からなかった。
踊り終えた舞子は、元の場所に戻っていった。
そして退場の合図が出され、俺と向かいにいる侍司と安良子さんなど以外は退場していった。
この大広間にいるのは、ほんの少しの人物だけだった。
「そちが、授倉雅道か?」
一馬帝天に呼ばれ、急いで目の前に行った。
まさか、呼ばれるとは思わなかった。
正直、呼んで欲しくない。
「はい、私が授倉雅道でございます」
「一子の名付け、見事であった」
「ありがたきお言葉でございます」
威厳を保つためだろうか。
表情も声色も無で、怖い。
心の内が見えない。
「これからも精進するように」
「承知致しました」
その後、俺は逃げるように元の場所に戻った。
一馬帝天は、一子を抱っこしていた。
一子を渡す安良子さんの手も震えていた。
その時も、舞子は笑顔だったが、一馬帝天は無表情だった。




