第28話 2人の夜
儀式が正式に終わり、部屋には帝天側の侍司、巳之助さんと俺の舞子側の侍司、安良子さんと和子さんの乳母が残った。
その他の全員が出てから、静寂が続いた。
安良子さんに抱かれている一子も泣く様子はない。
「一馬様、来てくださり本当にありがとうございます」
舞子は一馬帝天の腕を掴んだ。
どういう意図があるのか分からない。
けど、本当に愛しているんだから、気を向けたいのだろう。
「当たり前のことだ」
本当に読めない。
これだけ無表情で言われれば、どうにでも取れる。
舞子に無関心とも取れるし、そういうものとも取れる。
——カサッ
静かな部屋に、物音が響いた。
俺たち侍司は、全員が鞘と柄に手を掛けた。
辺りを見渡しても、怪しいものはない。
「…………これは、藤物語か」
…………多分、藤物語を渡した音だろう。
良かった…………。
一馬帝天は、藤物語をめくっていた。
舞子は腕を掴んだまま、藤物語を見ていた。
ここだけ切り取れば、新婚夫婦だ。
「ふむ、清見女房は優秀だな」
「続きを書かせているところです」
藤物語で、会話は朝まで続いた。
ただ、一馬帝天の声色が変わることは無かった。
「呼んで参れ」
突如として一馬帝天が向かいの侍司に命令をした。
一馬帝天を掴む強さが強くなった気がする。
しかし、どちらとも喋らない。
「準備が完了いたしました」
さっきの侍司が戻ってきた。
それと同時に一馬帝天が立ち上がる。
舞子が頭を下げるのと同時に、俺たちも頭を下げる。
頭を上げても舞子は一向に喋ろうとしなかった。
いつもだったら、俺たちに何かしらの指示をするはずなのに。
その沈黙は長く続いた。
「雅道も手伝ってちょうだい」
口を開いた舞子が指したのは、儀式で渡された箱の山だった。
俺はそれを何往復かして舞子の目の前へ持っていった。
「(これは、お父様ね)」
そうポツリと呟いて、中にあった少し小さめの豪華な布を出す。
柄的に一子の服だろう。
「(これは——)」
舞子は次々と箱を開けては中身を確認することを繰り返していた。
その際、献上した人の名前を呟きながらそれをしていた。
合っているかは分からない。
けど、呟いている階級と俺が記憶している名前からして間違ったことは言っていなさそうだった。
こんな量を覚えてるのすごすぎんか…………?
友達とかならまだしも…………。
「そろそろ、宮中に戻る準備をしないとね。これだけ物が増えちゃったし」




