第22話 若……!!
「(この後は俺が見ておくから、朝になったら来てくれ。巳之助にも言ってくれ)」
「「(しょ、承知致しました…………)」」
まさかだった。
基晴直々に居るとは…………。
「(巳之助さん、基晴様が直々に居ておくそうで、私たちは下がりましょう)」
「(基晴様が?)」
「(はい)」
「(…………分かった)」
俺たちは3人で廊下を歩いた。
曇っていて、月明かりが一切届かない。
「(舞子様も大変だよな。15の成人の儀の翌日に一馬帝天様とご結婚されて、18で一子様を産んだんだから)」
「(18歳なんですか!?)」
「(そうだぞ。何か変か?)」
「(い、いえ…………)」
18歳か…………。
1個上なだけやん。
それやのに、あんな対応出来るんや…………。
いや、それよりも可哀想すぎんか?
「(私も最初聞いた時は驚きました。まさか、2歳上の舞子様に漢詩をお教えすることになるとは思いませんでしたから)」
…………安良子さん、今16歳なの!?
いやまぁ、同い年ぐらいには見えたけどさ…………。
「(しかも、舞子様って一馬帝天様のことを愛しているんだろ?)」
「(そう聞きますね)」
尚更、辛いやろうな。
本当に好きな人に見捨てられたようなものなんやから。
「(…………まぁ、何とか支えるしかないよな。俺たちは政に関与できんからな。守ることしか出来ん)」
「(…………そうですね)」
◇ ◇ ◇ ◇
「うーん…………はっ!!」
俺は悪夢で目が覚めた。
八子の子が選ばれて、八子が正妻になって、舞子が宮廷を追い出される夢だ。
…………縁起でもない。
そういえば、部屋の隅に像があったっけ。
——どうか、舞子をお助けください。
自分のことなんて、今は考えなくていい。
舞子が大変な時や。
今、自分の帰る方法なんか考えてもしょうがない。
「……雅道さん、起きていますか?」
「はい、今出ます」
朝食を食べて、舞子の元へ行った。
巳之助さんは既に警備を始めていた。
「「基晴様…………」」
「ああ、君たちか。まだ起きてない。交代してくれるか?」
「もちろんでございます」
一子は夜中に1回以上は起きたのだろう。
基晴が抱っこしていた。
「舞子は、宴について何か言っていなかったか?」
「今日すると伺っております」
「それは、この内宮の者たちだけか?」
「そうですよ、お父様」
「「「え?」」」
いつの間にか、舞子は目を覚ましていた。
ゆっくり起き上がって肘掛けに体を預けるのを、慌てて安良子さんが手伝っていた。
「…………他の者にはこっちで伝えておく」
「はい、お父様。でも、ゆっくりしてくださいね。寝ておられないでしょう?」
「…………気付いていたのか?」
…………寝ていたんじゃないの?
起きてる感じは無かったぞ、朝も夜も。
「はい」
「…………いつからだ?」
「お父様が来られた時からですよ」
舞子は笑っていた。
…………素っぽい。
無理している感じはない。
「…………そうか。ごめんな、舞子」
「お父様は、お父様が出来ることをしてください。私のことは大丈夫ですから」
俺は胸が締め付けられた。
ほぼ物理的と言っていいほどに。
◇ ◇ ◇ ◇
「今日は和子が言っていた通り、準備して日が落ちたら宴を始めましょう」
舞子の支度も終わって、部屋に集まった人々に指示を出していた。
元通り…………ではないけど、少し戻った気がする。
そんなすぐに戻るか…………?
宴の準備は慌ただしく進められていた。
この宴は本来、今日じゃなかったのだろう。
とは言っても、部屋に響くのは準備をする音だけで、話し声が聞こえてくることはなかった。
舞子は、その様子と一子を交互に見守っていた。
一子はスヤスヤと眠っている。
その顔は本当に幸せそうだった。
「おぎゃー、おぎゃー」
そんな最中、一子が突然泣き出した。
舞子は必死にあやしている。
…………本当に1つ上なだけやんな?
安良子さんもそうやけど、年齢に見合わないぐらいしっかりしている。
というか、今までスルーしてたけど、乳母に預けんのはなんでや?
この時代は、乳母が主体で育てるはずだ。
「雅道、少し抱いておいてくれる?」
「承知致しました」
舞子は一子を俺に託すと、眉間に手を当てて肘掛けに身を預けていた。
顔色も少し悪い気がする。
体的には、まだまだ回復出来ていないのだろう。
「……ありがとう」
「もう少しお休みなられては?」
俺は、ただの侍司だ。
けど、安良子さんも和子さんも居ない以上、側に居ておけるのは俺だけ。
「…………そうするわ」




