第23話 青い宴
「皆さんのおかげで、産むことが出来ました。本当にありがとう」
部屋には、基晴や治輔、この内宮に従事している人たちが集まっていた。
安良子さんとか和子さん、料理関係の人たち、侍司は例外だけどね。
「今日からお酒を解禁したから、呑みたい人は呑んでくださいね」
全員が頭を下げる。
ドンちゃん騒ぎが始まった。
ただ、舞子の方から音は一切しない。
一子は、宴中だけ別の部屋でお世話している。
一子が居ないにしても、おかしいぐらい音がしない。
「舞子様、大丈夫でございますか?」
舞子は、肘掛けに身を預けるだけで、目の前にある食事を取ろうとしない。
「大丈夫よ…………。ただ、お腹が空いていないだけなの」
いや、無理をしている。
お腹はたしかに空いていないのかもしれない。
でも、せっかく元に戻った顔色が、悪くなっている。
「せめて、お水だけでも飲まれては?」
「…………取ってちょうだい」
俺は慎重に器を渡した。
舞子はゆっくり器を傾けた。
零さないかヒヤヒヤする。
「…………ありがとう、雅道」
「舞子様のことは、いつでもお守りしますから」
「…………頼もしいわね」
舞子の口角が少し上がった気がした。
◇ ◇ ◇ ◇
宴はいつも通りだった。
けど、酔っ払っている人は少ない気がする。
「舞子様、本当に大丈夫でございますか?」
顔色がまだ元に戻っていない。
深刻なほど顔色が悪いわけじゃない。
けど、流石にヤバい気がする。
「舞子姉さま、もうお開きにしましょう」
治輔の提案に、舞子は頷くだけだった。
「この宴は、終了とする。皆の者は下がるように」
舞子の代わりに治輔が号令をかける。
「舞子様、横になりましょう」
「皆が、帰って、から…………」
「舞子姉さま、そんなこと言っている暇はありません!!」
「でも…………」
「…………じゃあ、仕切りを立てましょう」
治輔が頷いてくれて、仕切りを急いで持ってきた。
その様子を出ていく人たちは誰も見ていなかった。
正直、横になってもいい気がする。
何をそんなに…………。
「舞子姉さま、これで皆には見えませんから」
「…………ありがとう。そういえば、お父様は…………?」
「お父様は、仕事に行きました。それよりも、休んでください」
声もかすれている。
深刻な病気じゃないとええんやけど…………。
「雅道、今晩は一子様はそこでお世話をするように、伝えてきてくれ」
「承知致しました!!」
「待って…………!!そ、れ、だけは…………」
俺は、思わず足を止めてしまった。
「舞子姉さま、お願いです。ご自身のお体も大切にしてください。一子様は我々が責任を持って、お守りしますから」
「…………そう」
廊下とはいえ、景色が目まぐるしく変わる。
けど、脳内には入ってこなかった。
「今晩はここで、一子様をお世話するようにと伝令です…………!!」
少し走っただけ。
けど、息を切らしていた。
「舞子様から?」
「いえ…………治輔様からです」
「じゃあ、戻った方が…………」
「…………命令ですので」
舞子の顔色が悪いことを言おうとした。
けど、混乱をきたすのは良くないと思った。
舞子のためにも。
「伝えてくれたか?」
「…………はい」
口の中が血の味がする。
水が欲しい。
「水、飲むか?」
「ありがとう、ございます…………」
冷たくて、美味しい。
安良子さんに貰った時のことを思い出す。
「…………どうして、そんなに気遣ってくれるの?」




