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安良子の表と裏-一族の繁栄と政治闘争、その陰で交錯する人々-  作者: 綿ダッコ
第3章〜一大事〜

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第20話 緊急事態、もう一度

 「おぎゃー、おぎゃー!!」


 それから1週間、和子さんと安良子さんで一子の面倒を見る日が続いた。


 一子はよくお腹が空く子だ。


 壁の模様を暗記して書けるぐらいには、壁を見つめている時が多かった。


 どうやら、この時代は産まれてから一週間は乳母の人たち以外は、部屋に入れないらしい。


 一週間が経って、お世話係の人たちや、数人ずつ、女房も来るようになった。


 まぁ、俺は例外なのだろう。


 本来は、産小屋らしいが、産まれた部屋なら何でもいいらしい。


「お待たせ致しました」


 安良子さんが、何冊か本を持って、部屋の中に入ってきた。


 安良子さんは漢詩の講師も並行してするらしい。


 というか、1人で持ってきたのだろうか?


 だとすれば、結構な量だ。


「もしかして、1人で持ってきたの!?」


 舞子もその量に驚いていた。


「は、はい。そうでございますが…………」


 安良子さんは、きょとんとしていた。


 もしかして、その量を運ぶのが普通だと思っているのだろうか?


 正直、十二単を着ながらその量は無理がある。


「言ってくれれば、手伝いを向かわせたのに」


「いえ、このぐらいの量、舞子様のためなら、なんてことございません」


「そ、そう…………」


 困惑した雰囲気が漂ったまま、漢詩の授業はスタートした。


 俺も警備の傍ら、耳を傾けていた。


「ご報告でございます!!」


 遠くから、男の叫ぶ声が聞こえてきた。


 俺は咄嗟に、御簾の前へと駆け寄る。


 安良子さんと舞子は横に逸れ、一子を抱えていた和子さんも、防御体勢に入った。


挿絵(By みてみん)


「お待ちなさい——」


 外で警備していた巳之助さんが倒れる音が響いた。


 俺は鞘と柄に手をかけ、一歩後ろに下がる。


 その男性は、御簾に手をかけた。


「勝手に上げるでない!!」


 言葉での威圧。


 それしか、俺には出来ない。


 ここ一週間で、ある程度筋力は付いたはずやけど、まだまだ実戦に使える程度ではない。


「急ぎの用でございます!!」


「舞子様に近づくな!!」


 巳之助さんが、その男を後ろから抑えつける。


 部屋の前は一瞬で、修羅場になった。


 俺は、その間に舞子に意向を聞きに行った。


「……外で言わせなさい。必要なら部屋の中に入れるわ」


「承知致しました」


「部屋の前で用件を伝えよ」


 阿鼻叫喚の部屋の前に届いたか分からない。


「…………承知致しました」


 届いたのか、取っ組み合いしていたシルエットが、足を組んでいた。


「先程、八子(やし)様の子がお産まれになられたと、ご報告がございました!!」


 …………それだけ?


 たしかに、八子は政敵の物我家(もがけ)の内妃だ。


 けど、そんな慌てて報告するほどか…………?


「それと、それに伴って、一馬帝天様の行幸が八子様からになるそうです…………!!」

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